海底二万里感想ログ

上巻第1章2章(海に怪物が出てるぞ!)

🦀固有名詞がいっぱい出てる!!
 船を破壊して回る謎の物体(果たして本当に海の怪物なのか?)の正体を巡って、実在の博物学者や科学雑誌、著作の名前がたくさん出てきてる。
 本作はSFなので、あくまでも架空の出来事なんだけど、それに対して(50年くらい前の)実在の人物のリアクションを捏造するのって現代だとなかなか書けなさそう。
 現代でこそネットで検索すれば論文も科学雑誌も民間伝承もヒットするけど、海底二万マイルが書かれた1870年だと「〇〇っていう博物誌があるんだってさ」と固有名詞を知ること自体もハードルが高そう。味があるなぁ
🦀2万里(2万マイル)(2万マイルとは言っていない)
 原作では2万リユーで、語感と長さが似ていることから日本語の里を用いて2万里と翻訳されたが、そこから更に里と哩(マイル)が混同されて、距離感がめちゃくちゃにされているらしい。滅茶苦茶すぎる……。
 1リユーは一般的には5.55kmだが、ヴェルヌは1リユー=4kmとして用いたらしい(この時点で少々滅茶苦茶だが)。日本語の1里は3.927kmなので、「2万里」自体は非常に良い翻訳だと思う。
 ちなみにメートル法が生まれたのは本作(1870年)より80年前の1790年。1840年以降はフランス国内で公文書にメートル法以外の表記を用いると罰金が科せられ、1875年には国際的にメートル法を普及させるためのメートル条約が結ばれている。ちょっとヴェルヌさん???
🦀潜水艇について
 この作品が世に出たのは、1864年に非人力潜水艦「プロンジュール」が、1967年に非大気依存推進(潜水艦内で酸素などを供給できる)潜水艦「イクティネオII」が生まれたばかりの時代だ。その割には作中の世論は「どこかの国が秘密裏に潜水艇を建造したのか!?」と話題にするくらいには潜水艇の存在を認知している。これが当時自然なことだったのか、それとも作者が科学マニアだから世論の常識水準を高く見積もりすぎたからなのかは不明だが……
🦀海底12から15海里(2万2000から2万7000メートル)
 作中ではあるとされる水深。
 2022年現在だと、世界で一番深い場所はマリアナ海溝にあるチャレンジャー海淵(1万メートル)なので、当時は世界一深い海がどのくらいまで深いのか皆目見当もつかなかったんだなぁと感じた。ちなみにズワイガニが生息しているのは最深でも1200メートルだそうです。タカアシガニでもせいぜい800メートルまで。(ズワイの方が深かったのは意外だった!)

第3章と第4章(フリゲート艦に乗って怪物退治に行くぞ!)

🦀主人公アロナックスからカナダ人漁師ネッド・ランドへの愛情がデカい
 漁村出身の勇ましい男で、さまざまな英雄譚を語ってくれる(フランス出身の主人公にとっては、ネッドが元フランス領のカナダ出身であることも一因だったらしいが)だけの、ついさっき登場したばかりの男に対して「ああ、ネッド! あと百年は長生きして、あんたのことをいつまでも考えていたいものだ!」とまで言ってのける主人公、愛が重くないか……?
🦀水圧の話を得意げにするアロナックス
 もし深海に怪物がいるとしたら、そいつはきっと丈夫な皮膚を持っているに違いない。なぜならふつうの生物なら水圧でぺしゃんこにされてしまうからだ……という旨の話を、割と得意げにするアロナックス教授。21世紀の読者にとっては、中学生向けくらいの知識を自信満々に解説してる描写に見えるけど、当時の読者にとっては「へぇ~!! 水圧、そんなものがあるんだ~!!」ってなるポイントだったんだろうか?
 怪物の存在を疑っていた漁師ネッドも「ふうん、そんなことがあるのか……」と少し説得されかけてる。現代人目線だと、ちょっと異世界転生モノの主人公を持ち上げる描写っぽく見えて面白い。
 ちなみに作中の説明は少しだけミスがあって、海中の生物にかかる圧力は、海水の水圧だけじゃなくて空気の1気圧ぶんも含むことが見落とされている。やっぱりなろう小説じゃないか!!
🦀導入部分のクトゥルフっぽさ
 海に未確認生命体が出ていて、たくさんの船がやられてるんだ!という導入部分、おおまかな話としてはかなりクトゥルフ・ダゴンっぽい……!
(もちろん歴史的には順序が逆で、H.P.ラブクラフトの方が海底二万里を参考にしたのが正しいんだと思うけど)
 H.P.ラブクラフトのダゴンは第一次世界大戦中の出来事とのことなので、たぶん船舶の技術力も大きく違ってると思う。今度読もうかな……。
🦀海里≠マイル(厳密には)
 作中では長さの単位として海里も登場するが、これはリユー、マイル、メートル、里とは独立した単位らしい。無法地帯すぎんか???
🦀ピエ(長さの単位)
 およそ1フィートに相当する(がイコールではない)長さの単位で、作中でよく用いられる単位のひとつ。
 月世界旅行でさまざまな計算していたらしい作者が、SI単位系でも米英のヤードポンドですらないローカル単位系で話を書くのか……。
 この単位チョイスが当時の人の目にどう映っていたのか、専門家とエンカウントする機会があったらぜひ聞いてみたいものだ
🦀鏈、トワズ(それぞれwikipediaより)
鏈の元々の定義では1鏈は100ファゾム(600フィート)であり、正確に182.88メートルとなる。現在では、10分の1海里が1鏈とされている。国際海里を元にすれば185.2メートルとなり、ヤード・ポンド法の海里を元にすれば608フィート、すなわち正確に185.3184メートルとなる。
アメリカ海軍では120ファゾム(219.456メートル)と定義している。イギリス海軍ではヤード・ポンド法の海里の10分の1(185.3184メートル)としている。

1トワーズ = 6ピエ(約1.949メートル) - フランスでの定義
1トワーズ = 2メートル - フランスでの1812年から1840年1月1日までの定義(習慣的度量衡(英語版))
1トワーズ = 1.8メートル - スイスでの定義
1トゥエザ = 6ペ(約1.98メートル) - ポルトガルの定義

第5章から第9章(怪物からの襲撃で海に投げ出された主人公アロナックス、助手コンセイユ、そして銛打ちのネッドの3人は、"怪物"――その正体は鋼鉄の潜水艦だった!――の中に監禁される)

🦀程よい情報量
 海底二万里は読みやすい本だな、と改めて思った。気になる単語を深堀りするのでなければ、大して複雑な内容や劇的な展開があるわけでもなく、各章の長さは13ページ程度しかない。ここまで全体の1/5くらいの分量を読み進めたのに、それほど物語も進んでないし……!
🦀あっこれネタバレだ!
 ノーチラス号とネモ船長が有名すぎて、読みながら軽めのネタバレを悟ってしまう。あるんだなぁ、こういうことって……
🦀ネモ船長の異常者っぷり
 現時点では彼の目的や経緯は明かされていないんだけど、それほど聞かれてもいないのに「ここでは食事だけでなく衣服も家具も海産物から作っているんですよ。素晴らしいでしょう?(要約)」と語りだすネモ船長はだいぶ異常者っぽい。地の文では誠実そうとか安心感があるとか言われてるのに……

10章から12章(ノーチラス号の中身紹介)

🦀固有名詞の陳列棚だ!!
 ノーチラス号内の蔵書や芸術品、嗜好品、天然の骨董品……巻末の注釈だけで15ページぶんにもわたる(新潮文庫)ほどの固有名詞の列挙!
 空気を読まずに具体名を書き連ねる衒学趣味なセンスが、"ある種のSFっぽさ"をとても感じさせてくれる。
🦀すべては電気で
 章のタイトルがこれ。そうだよな、パリ万博前後の時代だから、「電気はすごい!!」な時代だよな!!
 1785年にクーロンの法則、1791年にガルヴァニ電気、1800年にボルタ電池、1820年にアンペールの法則、ファラデー、ヘンリー、マクスウェル! オームにキルヒホッフ、ヘルムホルツ! 単位や法則に名を残す物理学者・化学者たちが論文を残した後、テスラとエジソンが競争する少し前の時代(1870年)に出版されたSFだもんな!!!
🦀ノーチラス号
 注釈にはラテン語でオウムガイを意味することしか触れられてなかったけど、ギリシャ語で水夫を意味する(宇宙飛行士astronautの由来になったnautの部分だ)ことにも絶対に言及するべきだと思った。この本けっこう注釈が丁寧でウミユリとかキヒトデ、イトマキヒトデには詳しいのに、wikipediaでも読めるギリシャ語には詳しくないなんてことあるのか 

番外編(読んでないけど月世界旅行に関してなど)

🦀世初初のSF小説
 プロセスが具体的で、具体的に「ここの計算が違う」「実際にはここで負荷に耐え切れなくなる」が指摘できる点が画期的だった(そしてそれゆえ当時は紛れもなく奇書だった)らしい。今でこそSFのギミックやデバイスが荒唐無稽でも、それが生み出す社会やドラマが丁寧ならSFとして受け入れられてる(例えばドラえもんはひみつ道具が非科学的でも、ひみつ道具がもたらす結果やひみつ道具のある未来社会が描かれているからSF作品として扱える)
 ……そう考えると、Dr.STONEの丁寧さもSFへの原点回帰なのかもしれない。
🦀蒼穹のファフナー
 自分の好きなロボットアニメ、蒼穹のファフナーに登場する人工島も、とある事情から秘密裏に建造されて人類から隠れて航行していて、乗組員(人類から隠れ住んでいるだけの民間人でもある)は海中・海底の資源を採って自給自足の生活をしている。もしかしてこれが元ネタだったのかも……!
🦀3つの時代
 海底二万里を読みながらベルサイユのばらを見て、それとは別に週1で明日のナージャも見進めているので、自分にとっては1870年のフランス人と1770年のフランス、1910年のヨーロッパが同時進行になっていて、とても良い体験になってる。

 ベルサイユの時代では貴族もろうそくの炎で灯りを取っているし移動は馬車だけど、海底二万里の時代ではガス灯や蒸気機関が広まりつつある。エジソンとテスラより前なので、電気は実用化されていない。明日のナージャの時代になると電気も普及しているようだ。

13章から16章(海底散歩)

🦀あっ、これかぁ!
 ディズニーシーで辛うじて見たような気が少ししてきた! あんまりストーリーの進展はなくて、潜水服と水中銃で狩りをするだけだ。現代人にはなまじ想像できてしまうぶん、刺激が少ない
🦀カニが死ぬシーンだ!!!!!!!!
 銃の台底で殴られて死んだ!!!!!! 読んだ甲斐があった!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 水中で勢いよく鈍器を振り回すのって結構むずかしそう……
🦀三八三万二五五八平方ミリアメートルの海
 SI単位系に直すと、3億8325万5800平方キロメートル。これが海の全面積だと作中では語られている。
 実際には現在では3億6100万平方キロメートルだとされている。海の深さでは実際と大きくずれていたのに、海の面積ではほとんど正確な数値が導き出せている! 凄い! 

17章から19章(東南アジア観光)

🦀ソロモン諸島へ聖地巡礼
 どうやら「かの有名な〇〇船長が発見した〇〇島! 感動!!」のノリだ。1870年というとまだまだ植民地主義がありふれていた時代だし、どちらかといえば征服される側だったアジア人には彼らの興奮がわかりづらい。

ツッコミ不在の恐怖! 〜登場人物紹介〜

🦀アロナクス教授
 この本の主人公で、フランスの博物学者。どうやら人懐こくて、ネッド、コンセイユ、ネモ船長の全員に地の文で好感を表明している。
 ネモ船長の狂った知識の披露にも「ご存じですとも」な態度で全部受け止められる、最強のキャッチャーでもある。
🦀助手のコンセイユ
 礼儀正しすぎる若者。分類学マニアで、海洋生物の固有名詞の5分の1くらいは彼(の視点で代弁するアロナクス教授)が挙げている。
 どんな状況でも常に礼儀正しいというのはそれ自体結構なキャラ付けな気もするが、この本では一番のまとも枠だ。
🦀漁師ネッド・ランド
 「あんたの話を百年でも生きていたいものだ!」と地の文でアロナクス教授に告白された男。
 力が強くて経験豊富な頼れる銛打ちとのことだが、アロナクス教授フィルターを外してみると割と単なるちょっと粗暴な大男だ!
🦀ネモ船長
 海の狂人。たくさんの芸術品や学術書を船内に集めるような知的な人物で、ドイツ語やラテン語を含む多国語を流暢に話せる。彼の姿や声音は信頼感があるらしい。海中の資源でなんでもDIYするし、自費で造船部品を発注して人類に見つからないように自力でノーチラス号を完成させるし。この本は俺TUEEEならぬ彼TUEEEの本なのだ! 
🦀クモガニの一種
 ネモ船長一行と遭遇したばかりに、水中銃で殴り殺されてしまった哀れな十脚目。彼に非はない。
🦀巨大な鯨
 ノーチラス号が人類に与えてきた損害と脅威を全て擦りつけられている哀れな生きもの。彼に非はない。
🦀サメ
 沈没船に寄ってきた恐ろしいサメ。こいつは退治されない。いや、退治されないのかよ!
🦀イカ
 太平洋で乱獲されるイカの群れ。

20章から22章(パプアに一時上陸)

🦀船が座礁したので、アロナクス、コンセイユ、ネッドの3人は久しぶりに陸を歩くことに。
 ネッドは「鳥の肉だ! パンノキだ! カンガルーも食べたいな!」そんなノリだ。
🦀いろいろあって原住民を怒らせてしまう
 パーティメンバーが全員西洋人なので、「こいつら人食い人種かもしれねぇぜ?」みたいな観光の態度でいやがる。
 西洋社会さえ賑わせる鋼鉄の潜水艇でやってきたんだから、「警戒されるのも道理だ」くらいの申し訳なさを見せてくれ~~~~~!!
🦀左巻きの貝殻を破壊されてキレるコンセイユがめちゃくちゃ面白い
「こんな発見のためなら、指一本くらい犠牲にしてもいいくらいだ」、「左巻貝!」と感動する博物学者2人も面白いし(ドラえもんみたいだ)、
原住民の投石でそれを破壊されたあとの"礼儀正しい若者"コンセイユが、銃に飛びついて即座に発砲してから「あの人食い人種が攻撃を開始したのが、旦那様にはおわかりじゃないんですか?」「ああ! このろくでなしめ!」「わたしの肩の骨が折れたのならまだよかったのに!」と叫ぶのも面白い(発砲と発言の順序が逆なのもじわじわくる)(ドラえもんみたいだ)

とにかく連想されたのはドラえもんで、ドラえもんとのび太くんも絶対何度かこういうことしてるに違いないよ。
抱き合って涙を流して感動したり、「やろう、ぶっころしてやる!」って叫んだり。
🦀そこそこ長いページ数を割いてパプアの地上を探検した割に、左巻貝から宣戦布告までがたった2ページで急展開してる。
面白すぎる……ニコニコ動画に3,4分のハイライトが投稿されて、アニメを視聴してない人でもその動画だけ見れば勢いという面白さが伝わってきてしまうタイプの面白さ。開戦への沸点がポプテピピック。
🦀電気ショックは文明の証
 「野蛮人どもが船のデッキに乗り込もうとしている!」「心配はご無用ですよ」からの電気ショック!
序盤で「そうだよな~電気の時代だよな~」と思いながら読んでいたので、ちょっとした伏線回収のようでとても納得感があった。

船は満ち潮を待ってふつうに出発できました。

23章と24章(船員の死)

🦀なんらかのトラブルが起こって(その詳細はアロナクスたちには一切明かされない)、船員の一人が外傷によって死亡した。
一行は珊瑚礁の中の共同墓地へ彼の遺体を埋める

ここから下巻1章2章(インド洋で真珠を採ろう!)

🦀「ここからこの海底旅行記の第二部がはじまる。」
 下巻第1章の冒頭の一文である。どうやら原典が書かれた時から、この二部構成は意識されていたらしい。
🦀「軟体動物門、無頭亜美、有殻目」
 コンセイユが魚芸人になってしまった……前々からアロナクス教授の視点で「この光景をあの礼儀正しい若者に見せたら、きっと夢中で生物の分類を始めることだろう」などとは語られていたけれど、いよいよこいつはこういう人物ということらしい。
🦀貝の中の150サメ、上等真珠の200万サメ
 サメが怖すぎて、真珠をサメに、フランをサメに言い間違える教授。ギャグの飛ばし方がヤバい。使用人コンセイユを言い訳にサメから逃げようとするも、「旦那様がサメに立ち向かわれるなら」「忠実な使用人としては、いっしょに立ち向かわないわけにはいきません!」と背中を押されてしまう。ギャグ回だ
🦀アロナクス教授のカニ評
「ちょっと丸みの付いた三角形の甲羅をもつアサヒガニ、この海域(インド近海)固有のヤシガニの仲間、見た目がぞっとするほど醜いカルイシガニ」

3章から7章(紅海から地中海へ)

🦀スエズ運河未開通(作中)
 正式に開通したのが1869年11月17日とのことで、原著が出版年(1870年)には完成していたけれど、執筆中には未完成だったようだ。
🦀アラビアン・トンネル
 スエズ運河が未開通なら、一体どうやって紅海から地中海へ抜けるのか。まさかアフリカ南端を通るのか? その答えがこのアラビアン・トンネルだ。原理は至極単純で、水中に紅海と地中海をつなぐ未知のトンネルがあるというもの。ネモ船長曰く、二つの海に共通の種類の魚がいることから仮説を立て、実際に片側の魚にマーキングして放流したものがもう片側でも発見されたことからその存在を確信したという。
 紅海から地中海へ移動するという、物語にとって枝葉末節ではない部分をどうするかという問題への答えとして、とてもとてもシンプルかつネモ船長らしい仮説と実験に基づいたアプローチの演出にもなっていてとても巧いなぁ。
🦀アラビア及びギリシャ・ローマのうんちく
 ここにきて著者ヴェルヌの博識っぷりがラッシュをかけてきた! 太平洋やポリネシアなんていう未開の地とは違って、紅海と地中海に関しては古くから無数の言い伝えがある!
 〇〇という為政者がなにかしただとか、〇〇の伝説に登場するだとかは(為政者や伝説の側が有名人なので)まだ調べれば出てきそうな気もするけど、「古代ギリシャ人はこの魚を神聖なものとみなした」みたいな風習・俗説に関するものは、逆に現代人には知ることが難しいのかも?と思った。客観的・科学的な情報は集まりやすくても、初代ポケモン図鑑の「地元では宇宙生物だと疑われている」みたいな博物っぽさは、案外古い時代の人の方に分があるのかも?
🦀登場カニ物たち
 ハリツノガニ(目は引っ込められない)
 スコーピオン・スパイダークラブ(古代ギリシャでは叡智の象徴)
 ヒシガニ
 ツノダシヒシガニ(ヒシガニの中では珍しく赤いが、かなりとんがった顔つき)
 オウギガニ(丸っこい)
 ケブカガニ(毛深い)
 エンコウガニ(カタナとジェットを装備して回転斬りする個体がsteam、switch、スマホの3冠を制した)
 ヤマトカラッパ(かつてはマンジュウガニと呼ばれていた)
 ヒゲガニ(触角をひげに見立てている)
 コブシガニ(甲にもハサミにも膨らみがある)
 イトアシガニ(一番後ろの足が糸みたいに細い)
 ヘイケガニ
 ホモラ

地中海に行った際にはこれらのカニたちに出会えるそうなので、たのしみにしていよう。
 これらの情報はほとんど訳者の脚注によるもので(スコーピオンとエンコウ以外)、ネモ船長も凄いしヴェルヌも凄い、アロナクスとコンセイユも凄いし、訳者も凄い。凄くないのは銛打ちのネッド・ランドと読者だけということらしい。取り残された気分だ……
くやしいのでまた今度図鑑を借りてきて、上記の説明と見比べて「なるほどな~」します。

8章と9章(ネモ船長の資金源と思想、海底に沈んだアトランティスの都市、それからバカでかい海老と蟹)

🦀アトランティス大陸だ!!
 急に冒険譚らしくなってきた! うろ覚えのディズニーシー知識でも、そういえばアトランティスが出ていたような気がしてきた……! 挿絵で見るに、ハサミだけで1mはありそうな海老と蟹。彼らがカニノケンカに参戦したら、きっと頼もしい戦士になることだろう……

10章から13章(火山、サルガッソー海、クジラノケンカ、南極)

🦀自分自身にあまり火山やサルガッソー、クジラに関する知識がないので、自ずと疑問も感想も出てこない……悔しい。全編読み終わったら、ネタバレ感想を読み漁ってやる、
🦀南極探検の歴史
 これもまた後で改めて調べたいトピックではある。今のところwikipediaで仕入れた情報は、1897年から1922年は「南極探検の英雄時代」と呼ばれ、それがwikipedia記事のタイトルにもなっているほど重要な時代だったということくらいだ。裏を返せば1897年以前は南極への興味があまりなかった時代であり、この本に登場する電気や潜水艦のように執筆時点で過去数年に新しい発見や発明のあったタイムリーなネタではなかっただろう。

14章と15章(南極上陸&水中で座礁)

🦀人類初の南極点到達
 南極の動物、植物、地面、詳らかだ……。自分の素養がないので、北極と南極の違いすらよくわかってないし、文字情報がイメージに浮かんでこないが……。宇宙よりも遠い場所っていうアニメが南極に女子高生が行く話らしいので、見るべきかもしれない。
 それにしても、庶民には手が届かないところにある情報をたくさん披露することの価値は言いようもないな。海洋の面積はおよそわかってるのに、海保深さや南極という大地は未知であるような世界観も、2022年の自分には計り知れないものだ。
🦀水中で座礁
 大きな氷塊が転覆して、それに打ち付けられる形で潜水艇ノーチラス号が事故に遭う。船の外を照らすための光が、周囲の氷塊に反射して宝石のような縞模様を呈する描写や、船が勢いをつけて氷を砕いて進みだしたことで周囲の反射物が氷塊から氷の破片になって、無数の煌めくダイヤモンドのように眩しく光る描写! 誰も見たことがないような美しい光景を、科学的に想像して描写する能力よ……!
 そもそも大きな氷塊に上下左右前後をを囲まれて動けなくなるというトラブル自体が、考えうるけど考えられない出来事だ。サイエンス・フィクションすごい……!

16章から20章(水中での座礁から回復、大ダコ、復讐号)

 このあたりから結末へ急ぐ心と、ネタバレを避けるための配慮で感想がほとんどなくなる。

🦀窒息死かけたけど九死に一生
🦀大ダコに船員が殺される。フランス語を話す同士がいたことに気づく教授
🦀海底ケーブル
🦀復讐号
🦀大虐殺
🦀雑な脱出

(アマゾンやメキシコでも地学・生態学的な描写はあったけど、自分はコンセイユ助手じゃないので「ふーん」って感じだった。)

読み終えた!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 自分の中でのネモ船長の予備知識がFGOの紳士的でシャイな人物像だったので、イギリス船を見かけると必ず沈没させるニンジャスレイヤーみたいな男だったのは最後までビックリした状態のままだった。海中で採れる資源で衣服も食事もすべて賄う、過激派のアクア団幹部みたいな海マニアでもあるし。
 アーサー王の女体化はすんなり受け入れられたけど、怪人のショタ化はそうやすやすとは受け入れられないだろ……!

 彼の正体については海底二万里では明かされることなく、同作者の『神秘の島』で語られるらしいので、しばらくしたらそっちも読もうと思う。おわり!

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