南夕子退場まで残り1回と関係なくウルトラの父登場/『ウルトラマンA』覚え書き(27)

前回紹介した「番組延長に関する強化案メモ」には、こんな記述があった。

星司と夕子の空中での、ウルトラ・タッチという変身パターンは、当初は斬新な変身の形として、注目されながらも、ともすれば、子供達の間での反応は余りかんばしくありませんでした。
何故? それは。子供達の遊びの世界に溶け込む事の出来ない変身パターンであるからにほかなりませんでした。
そこで、今後は、抽象的なタッチ、パターンの処理をさけて、子供達が気軽に真似ができ、親しめる形を刻明に視覚化したいと思います。
そして、二人の合体により登場したウルトラマンAに、より星司と夕子の心情が表れ、生きたドラマ作りを、心がけたいと思います。

この、誰が書いたか不明なメモが、どこまで真相を吐露しているかは分からないが、いずれにせよ、「男女の変身合体」というメイン脚本家の市川森一の構想は、子供がウルトラマンごっこの中で真似しにくい(確かに、南夕子役の女の子を見つけるだけで一苦労だったろう)という理由で、再検討されていたのは確かだ。そして、結果的に南夕子の途中降板という事態を招いた最大の理由が、子供が真似しにくい、という表層的な問題でなかった事は、これまで縷々述べてきた、『ウルトラマンA』が始まった時からずっと続いてきた、南夕子の存在理由の希薄さ、女性キャラクターとしての描きこみの浅さから見ても、明らかだ。

『ウルトラマンA』第27回/奇跡!ウルトラの父

脚本=田口成光/監督=筧正典

ウルトラ5兄弟を銅像にしたヒッポリト星人、地球を引き渡せ、と要求をSカレートさせる。民衆はパニックに陥り、TAC一同を取り囲んだ。「星人を攻撃するのはやめろ!」「俺たちの街を焼かれるのは、もう嫌だ!」「ウルトラ5兄弟さえやられた相手に、勝てるはずないじゃないか!」。だが、竜隊長(瑳川哲朗)はきっぱりと言う。「たとえ、5つの魂(ウルトラ5兄弟)を失っても、地球にすむ36億の魂を星人に渡さなければ、それはTACの勝利です」。さすがは瑳川哲朗、どう星人に勝つのか具体策は語られないが、とにかく演説のかっこよさ、声のよさは、説得力がある。

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