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質を落としたらしんどくなった話


絵の質を落とせばやっていける。

そう思っていた時期があった。

作品の掲載枠を争う激戦の世界に心折し、自分の実力を信じきれずにいた僕は、レベルを落とせばやっていけると考えて、そういう生き方に切り替えた。

SNSへ緩めの絵柄で漫画を投稿したり、

お仕事も緩い絵柄で描かせてもらえる案件を受けたり、

絵の質を落とせば早く描けるし、その分たくさん描けるし、楽だし、

そう考えていたのだと思う。

まぁ、それは、それまで苦悩しながらも続けてきた、ある種の反動であったと思うのだが、

けれど人間不思議なもので、そんな惰性じみた思考で描けば描くほど、心はしんどくなっていった。

3年ほど経って、そういう生き方にまた心折し、


久方ぶりに存分に絵を描いた時間は、なんとも懐かしく、楽しく、心地よかった。

「これが自分だ」と強く認識できる感覚があり、それがなんとも新鮮だった。

新鮮と感じたのは、今まで他の何かのために描いてきた何よりの証拠であった。

だから競争に疲れたり、思い通りに描けないことに疲れたりしてきたのだ。

心の奥では最初から、自分を満たすために描きたかったのである。

そのことに氣がついたのは、漫画を描き始めてから10年経った頃。

振り返ると、10年の創作人生のうち、自分のために描いてきた時間はほどんどなかった。

自分を信じることができなかったから。

少しばかり遠回りが過ぎたらしい。


私は自分の作品を描きたいのである。

レベルを落としてまで描き続けたいとか、こんな自分でも描いて生きれる道を探したいとか、そんなことをしたいのではなく、自分らしい作品を作り続けたいのである。

ここまで強く思えるようになったのは、私が存分に描いた作品を受け入れてくださった方々のおかげである。

今まで描き続けてきた自分と、関わってくださった全ての方々に感謝しながら今、思う存分に漫画を描いている。

今年で創作人生13年目、まだまだ遮二無二描いていく。




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