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「普及版センサ技術」から考える介護イノベーション(4 赤外線センサ)


はじめに

25年前の分厚い専門書「普及版センサ技術」
この本を一通り読んで、様々なセンサーについて、介護に使えそうかどうか、考えてみたいと思います。シリーズで投稿しています。1〜25まで行く予定です♪
今回は赤外線センサを扱います。赤外線センサでは、プランクの法則が重要な考え方になります。勉強を始めたら、遠い昔の事を思い出しました。
大学時代、プランク定数の測定が卒論テーマだった事を思い出しました。ゼミの先生が卒論の候補をいくつか提案して下さって、自分でテーマを決めても良いし、この中から選んでも良いと。私は勉強しない愚かな学生だったので、卒論のアイデアなんて皆無で先生のテーマから選びました。先生の考えて下さった実験からプランク定数を求めたのですが。おおよそ合ってれば良いや、くらいに軽く考えていたら、そこそこ良い値が得られました。先生は、さらに計算の精度を上げるために改善を提案して下さって、その通りにしたら、計算結果はさらにプランク定数に近づきました。その卒業論文は捨てたかもしれないし、家のどこかにあるかも知れないけど、恵まれた学生時代だったのだと、しみじみと思い出しました。
Special thanks to my teacher.

4 赤外線センサ

黒体放射は赤外線計測の基本となる概念である。すべての物体は絶対温度0Kでない限り、黒体放射をして熱エネルギーを外部に放出している。

「普及版センサ技術」より

絶対0度(0K、ゼロケルビン)は-273℃で、これよりも低い温度は存在しないとされます。全ての物は絶対零度よりも高い温度だと、黒体放射により熱エネルギーを放出しますが、波長は温度により変化します。

「普及版センサ技術」より

300Kはおよそ27℃ですから、常温の室内は黒体放射による遠赤外線で満ちていると言えそうですね。
ところで、黒体って何なのでしょう?完全な黒体だと、反射する事なく光などの電磁波を吸収して、プランクの法則の通りに電磁波を放出するとのこと。しかしながら、完全な黒体は存在しないそうです。完全な黒体は存在しないのに、なんでプランクの法則が存在して、プランク定数が決まっているのか、ただただ謎です。ググったりChatGPTに聞いても、難し過ぎて理解できませんでした。
相対性理論もそうなのですが、物理法則でしばしばある事で、理論が先、実験による検証が後になり、その理論の正しさが立証される事があります。その類なのだろうと思います。一応、プランクの法則の公式を貼っておきます。

「普及版センサ技術」より

それでは、理論はこれ位にして、具体的な赤外線センサについて見ていきたいと思います。
赤外線センサには、熱センサと量子センサがあります。熱センサには、導電型、起電型、焦電型があります。

1️⃣熱センサ導電型

電気の基本的な法則である、
   オームの法則:電圧=電流×抵抗
この抵抗は、通常は温度特性の小さい部品を使い、回路を安定して動作させますが。あえて温度特性の大きい抵抗を使い、温度を測定するのがサーミスタです。サーミスタを利用して、赤外線による温度変化を測定することが出来ます。
サーミスタを2次元に多数配置した撮像素子(サーミスタボロメータ)が、赤外線サーモグラフィに利用されています。

2️⃣熱センサ起電型

熱電対を直列に結合したサーモパイルが耳式体温計に利用されている、との情報がありました。

日セラのサーモパイル型赤外線センサ(以下、サーモパイルセンサ)は、今日までに世界各国の市場において、人体温度検出を始めとした体温測定機器及び室内の温度測定を行う冷暖房機器を中心に数多く採用されてきました。

日本セラミック様ホームページより

異なる2本の金属材料を接続して1つの回路(熱電対)をつくり、2つの接点に温度差を与えると、回路に電圧が発生します。 この現象は、1821年にドイツの物理学者トーマス・ゼーベックによって発見され、ゼーベック効果と呼ばれています。(中略) 熱起電力は、組み合わせる金属の種類と両接点の温度差には依存するものの、構成する2つの金属の形状と大きさには関係しません。この現象を利用した多くの温度検出端が開発されました。 一般にこの現象を利用した温度検出端を熱電対といいます。

日本セラミック様ホームページより

3️⃣熱センサ焦電型

セラミックスの焦電効果を利用したセンサで、赤外線の変化に反応するので、人感センサーとして利用されています。体温の測定はできません。

● 焦電型赤外線センサでできること(利点)
センサ自身からLEDなどの光を発光するのではなく、周囲と温度差のある人(物)が動く際におこる赤外線の変化量を検出するセンサです。温度差を検出するため、体温を持つ人体の検出に適します。
受動部品…人の動き(温度変化)があって、動作するので、消費電流(待機電流)が少ないのが大きな特長・強みになります。
村田の強みとしては、ムラタが長年培ったセラミック技術による焦電体セラミックスを技術応用し、バラつきが少ないことが利点として挙げられます。
● 焦電型赤外線センサでできないこと(欠点)
温度変化を検知するものですので、静止した人の検出はできません。人体以外ものでも(動物など)赤外線を発しているため、温度変化があると検知してしまうことがあります。ロボットなど動くものに取り付けると、その動きによる温度変化を検知して、何を検知しているかわからなくなります。
ガラスやアクリル板ごしの検知はできません。(ガラスやアクリル板は遠赤外線を通しません)

村田製作所様ホームページより

4️⃣量子センサ

赤外線に感度を持つフォトダイオードを1次元または2次元に配置して撮像素子として利用されています。熱センサよりも高速、高感度ですが、周波数特性と熱雑音を持ちます。冷却して感度を高めることが出来ます。

赤外線LEDと、赤外線に感度を持つフォトダイオードを組み合わせて、リモコンなどに利用できます。

水が赤外線を吸収するので、水分計としても利用されています。


⚫︎人感センサ
⚫︎非接触体温計
⚫︎赤外線サーモグラフィー
⚫︎様々なリモコンの受信側
⚫︎発光器と組み合わせて人やドアが通過したかを判断できる
⚫︎水分計でオムツを開けずに交換時期を判断できるかも知れません
⚫︎赤外線カメラでオムツの中を透視できるかも知れません



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