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<旅日記⑫ Sep.1995>(バンコク・マレー鉄道の旅へ②)


 ベトナムから、タイのバンコックに入ってしておきたいことは、いくつかあった。

タイでは、まず、郵便局へ

 まずは郵便局に行くことだった。マレーシアのペナンで知り合ったフィリピン系のアメリカ人の友人から、タイの郵便局は信頼が置けると聞いていたので、旅のあいだ撮影した写真のフィルムを日本に送ることを考えた。読売新聞記者として赴任していた愛知県春日井市で親しくなった写真屋さんに送ると、現像を済ませ、預かってもらえる段取りだ。

 もちろん、紙焼き(プリント)はしない。ネガやポジのフィルムの現像処理と保管だけだ。

200本のフィルムを持っての旅

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 海外での撮影経験豊富な写真店の店主は出発前、「外国では、欲しいフィルムは売っていないと考えたほうがよい。売っているところを探すだけで大変だ。日本から持って行っていけ。1日1本として半年だったら200本。撮影済みフィルムが30本たまったら、航空便で店に送れ」と言っていた。船便ではなく、航空便でという指定は、塩害対策だとか。そこまで必要かどうかはわからなかったが、プロの助言に従った。

 しかし、それにしても、200本のフィルムを旅のあいだ持っているのは大変だ。ずっしりと来る。第一、かさばる。


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 キャノンの愛用の一眼レフカメラ「EOS 1」も他のカメラと比べて大きく重いうえに、大量のフィルム。

  十分に 税関には怪しまれる。だから、“開国”したばかりのベトナムに行くに当たっては必要最小限の量とし、シンガポールの知人に預けた。

 それに、少しでも荷を軽くしたい。そのことを思えば、30本ずつでも日本に送ればうんと楽になる。

 荷を軽くするというのもだが、もっと重要なのは、撮影済みフィルムの盗難や紛失防止対策としても好都合だということ。

タイの郵便局は、「ほほ笑みの国」らしい親切な対応

 いくつかの国で郵便局に行ったが、「ほほえみの国・タイランド」の王立郵便局は親切な対応だった。逆にまことに不愉快だったのは、旧・社会主義国の東ヨーロッパだった。鉄道駅や郵便局など国家直営会社の対応に、その国のお役人度を見ることができる。

 数年前ベトナムに行ったときは、ベトナム戦争後、四半世紀ぶりに米国領事館を開いた1995年当時の態度とはうって代わって、税関がほほ笑んで日本語で話し掛けてきた。

 東ヨーロッパの今は知らないが、昔も今も感じが良いのがタイという国の人々なのだろう。

 近世、近代の歴史において一度も他民族に征服されたことのない国の民族性なのかどうかは知らない。

 ともあれ、この国ですることは、バンコック発、シンガポール行きのマレー鉄道のチケットを予約することだ。

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 出発日までしばらく日を空けておき、一泊600円の安宿に滞在し、大きなこの街の主要部を歩き回って都市の輪郭を体感しておくとしよう。

                     (1995年9月23日)

                    「てらこや新聞」95号より

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