「大丈夫?」と声をかけること

 ケガや病気をしたり、重い物を持っていたり、山道を登っていたりするとき、「大丈夫?」と聞かれることがある。聞く方は、心配しているのだろう。でも答えるほうは、そう聞かれると、本当は大丈夫でなくても「大丈夫」と答えてしまうことがある。
 迷惑をかけたくない、というのもある。「このくらいで弱音を吐くなんて、情けない」とも思う。弱みをさらしたくない気持ちもある。
 そして、後から「せっかく声をかけてくれたのに」と後悔する。強がらなければよかった、と思う。でも、一度断ったのに、今さら助けは求められないと思い、ますます苦しくなる。

 ときには、「こんなこと、とてもできない」と思っていても、やってみるとできてしまうこともあるから、無理をするのが必ずしも悪い結果になるわけではない。
 でも、「大丈夫?」と聞く側は、もしかしたら、相手が「大丈夫」と答えても、本当はしんどいかもしれない、ということを考えに入れておいてほしい。
 「大丈夫」かどうかは、見ればわかるのではないか。
 意地悪な見方をすれば、「大丈夫?」と聞くことで、アリバイを作っているとも言える。本当に相手のことが気になるのなら、「大丈夫?」と聞くより、もっとできることがあるのではないか。
 
 そう言いつつ、自分も、つい、誰かに「大丈夫?」と声をかけてしまうこともあるけど。そういうときは、相手のことを心配したり、気遣ったりはしているが、けっこう、あまり深く考えずに声をかけている気がする。

 苦しくなっている側も、もっと気軽に言えたらいいのに、と思う。
 苦しいことを「苦しい」と言えないのは、一番苦しいことだ。
 それなのに、「このぐらいがまんしないと」とか「迷惑をかけてはいけない」とか「他人に頼ってはいけない」と思ってしまう。
 そのあげく、耐えきれなくなって、かえって迷惑をかけたりする。あるいは、もうやるものか、と思い、一緒にやりたいと思っている人を悲しませることになる。

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