ショートショート「犬のユキ」

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幼い頃の私は、やたらとペットを飼いたがる子供だった。

アパートなのでペットは飼えないと言われてもギャンギャン喚いて親を困らせたものだ。


そんな頃の私がよくやっていた遊びが「犬のユキ」と遊ぶ事だった。

故郷は雪国で冬になるとほとんど毎日雪が降っており、ユキを作る材料には事欠かなかった。

冬になると私は雪だるまではなく、もっぱら犬のユキを作った。

自分のお小遣いで買った犬の首輪をつけた、雪で出来た犬のユキ。

ユキは朝になると溶けてしまっていることもあったけれど、溶けると私はまた新しいユキを作った。

冬の間中、私は毎日毎日ユキを作って遊んだ。


冬の終わりが近づき、雪がたまにしか降らなくなると、私はユキとの別れが近づいていることを感じてたまらなく悲しい気持ちになった。

ある年、もういよいよ雪が降らなくなると思った私は家の冷凍庫に小さなユキをしまった。こうすればユキといつでも一緒にいられると当時の私は自分の思いつきに興奮した。

冷凍庫の中のユキはしばらくは母の目を逃れていたのだが、ある日とうとう見つかって台所のシンクで無残にも溶けていった。


そんな奇行に及ぶほどペットを切望していた私に奇跡が起きたのは小学二年生の時だ。

父がついにマイホームを構える事となり、なんと犬が飼えることになったのである。

私は当然犬を飼うことを希望し、幼い頃からの娘の狂信的な夢を叶えるため、両親は犬を飼う事に同意してくれた。

そしてうちにやってきたのが、犬のユキだった。


ユキは柴犬となにかのミックスで知り合いの家からもらってきた犬だった。

私は「自分で世話をするから」という両親との約束をきちんと守り続け、子犬の頃からユキの面倒をよくみた。ユキはすぐに家族にとってかけがえのない存在になった。


そして、私が大学三年生の頃。

当時就職活動で忙しかった私は毎日家に帰るのが遅くなっていて、ユキの散歩も母に頼んでいた。

そんな頃だ。

ある日、家にいる母から「すぐ帰ってきなさい」と連絡があった。

面接をキャンセルしてすぐに家に戻った私は、犬小屋で冷たくなっているユキを見つけた。

母は犬小屋の前にかがんでユキを撫でてやっていた。

私もユキをたくさん撫でてやった。

「明日、ペット葬の人が来るから」

母が言った。

「冷凍庫に入れておけば、ユキを燃やさないですむかな」

そんな私の軽口に、母は本気で怒った。

「バカ。そんなのユキも嫌がるよ」

「分かってるよ。ユキは狭いところ嫌いだったもん」

そう言ってから、私はようやくわんわんと泣き始めたのだった。


思えば、ユキのことを思い出すのは久しぶりだ。

無事就職活動を終えた私は、故郷から遠く離れた東京の会社に就職し今では会社の中でも中堅と呼ばれるような立場である。

金曜の夜、飲み会帰りに一人暮らしのマンションに向かって歩いている私の頭に、雪が舞い落ちた。

だからユキのことを思い出したのである。

なんだか嬉しくなった私は、スキップしながら家に帰った。

マンションの窓から見ると雪はどんどん降り積もっていて、最終的には雪だるまが作れそうなくらいに積もった。

私は外に出て、マンションの駐車場で久しぶりにユキを作った。

作り方を忘れているかもしれないと思ったけれど、私の手は幼い頃と同じように動いて、すぐにユキが出来上がった。

部屋に戻り、母が「ユキはあんたのことが一番好きだったから」と持たせてくれたユキの首輪を持ってきた。

そして雪のユキに首輪をつけてやると、雪のユキが「ワン」と鳴いた。

「ずいぶん酔っ払っているなぁ」

そう思った私はますます楽しくなって、コンビニに走り追加のお酒と犬の缶詰を買って帰った。

マンションの駐車場で待っていたユキに缶詰を開けてやると、ユキは嬉しそうにそれを頬張った。

そして私たちは、昔と同じ様に雪の中で遊んだ。


翌朝。

目がさめると「雪なんか降りましたっけ」とでも言うように、東京の雪はほとんどが溶けていた。

雪のユキもその姿を消していて、マンションの駐車場には微かに水たまりのような跡が残っているだけだった。

「今度引っ越す時は、やっぱり雪が降るところがいいな」

そんなことを考えながら私は、ユキの首輪と、空になった缶詰を拾い上げた。

(了)

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