ショートショート「赤いネクタイと社員たち」


 あるところに、ネクタイが大嫌いな社長がいました。

 社長は、「あんな首輪のようなものは即刻廃止すべし」として社員に向けてネクタイ廃止を通達をしましたが、社員からは「取引先に行くと相手はネクタイをしているので、完全に廃止するのは難しい」という声が上がりました。

 社長は腕を組み、考え、ネクタイを完全に廃止できないのであれば、そのネクタイを今のような飾りではなく、有意義な機能を持ったものにしようと考えました。


 社長は様々な機能を持ったネクタイを独自に開発し、社員に配布しました。そして、皆、仕事をする時には必ずこのネクタイをするようにと通達しました。ちなみに、女性社員には同様の機能を持った、首から下げるタイプの社員証入れが配布されました。

 社長の作ったネクタイに搭載された機能の一つに、GPSがあります。そのネクタイをしていれば、社員がどこにいようとすぐに把握できるのです。

 一歩間違えばブラック企業が採用しそうな機能ですが、社長が考えた用途はそれとはまったく逆にものでした。

 社長のネクタイ、その最たる機能は、「社員の安否確認」でした。

 社員が今、どのような仕事を抱えて、どれほどの心理的負荷が掛かっているか。それがネクタイを通じて把握できるようになっていたのです。

 社員が今抱えている仕事は全て社内データベースで管理され、その情報に、社員自身から受け取る情報(脈拍や体温など)を加えたものがネクタイに反映され、「忙しさ」がネクタイの色に現れます。

 緑は「通常」黄色は「多忙」、そして赤色は「業務中止」を現します。つまり、社員がなにも言わなくても、どの社員が仕事を抱え込みすぎていて、大変な思いをしているのかが一目で分かるようになっているのです。

 これによって、どの社員が仕事を抱え込みすぎているのか一目で分かるようになりました。ネクタイが赤く点灯している社員は即刻仕事を手放させ、長期の休暇を与えました。そして、社内全体で「なぜ赤点灯が出てしまったか」を話し合い、業務改善が行われるようになりました

 また、社員が外出先で取引先の無理難題を受け、その精神的苦痛からネクタイを赤点灯させると、すぐに社長が出向き、その場で社員をサポートしました。

 この社長考案のネクタイにより、社内の業務は劇的に改善され、社員満足度も上昇、会社の業績もグングン伸びていきました。


 そしてある日、社員たちは社長へのお礼をかねて、全社をあげての飲み会を企画し、社長を呼び出しました。社長は大変喜び、他企業の社長との会食を終えてから飲み会に参加しました。

 社長と社員たちは楽しくお酒を呑み交わしましたが、飲み会が終盤に差し掛かったところで、社長は眠りこけてしまいました。

 社員たちはそれを待っていたかのように特注のネクタイを取り出しました。そしてそれを社長の首にかけました。なぜ、こんな回りくどいことをしたかというと、ネクタイ嫌いな社長は、起きている時には決してネクタイをさせてくれなかったからです。

 社長の首にかけられたネクタイは、案の定真っ赤に染まりました。

 それを見た社員たちは すぐさま社長秘書を呼び、明日以降の社長の予定を全てキャンセルさせました。

 そして、「社長業務の改善」を肴に、宴は続けられるのでした。



(了)

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会社やめたろー

30歳で会社を辞めて「ブログ×小説」と好きなことだけして稼いでいます。会社を辞めたい人の味方🔰会社員→会社を辞めてライターで独立→好きなこと(小説)で生計を立てる→ブログで月収100万円を目指す(今ココ)http://kaishayameruzo.com

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コメント2件

社長もお疲れだったのですね(ToT)
社長も頑張っておられたようです!泣
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