ネットワークの蓄積

公務員には「定期異動」という言葉がある。3〜5年ごとに定期的に人事異動が行われる、という意味だ。

一部民間の人たちからすると実に不思議な慣習であったりするようだ。宮崎県は3年周期の「定期異動」をかなり真面目に運用しており(例外はある)、3年という短い期間(!)でスタッフが入れ替わらねばならない(?)ことには疑問の声もよく聞く。

「せっかくプロジェクトが進んできたこのタイミングでなぜ!」と問われると、「それが慣習だから・・・」という答えしか持ち合わせておらず、毎回申し訳ない気分になる。

無論、自治体によっては「不定期異動」をやっているところもあるのだが、それはそれで「組織が活性化しない」「急に異動になっては職員の負担が大きい」という課題もあり、定期・不定期それぞれ一長一短があると思う。

なんにせよ人事は「全体最適化」であるから、全体を知る立場にない部外の人間には窺い知れない事情もあるのだろう。ただ、個人的には各業務が専門化していかざるを得ない今の時代、もう少し流動的な運用があってもいいと思ったりもする。

さて、前フリが長くなったが、定期異動の話であった。異動内示を受けると、職員にとっては業務内容が変わるのはもちろんのこと、(特に事務職であれば)相手となる業界自体が変わってしまう。例えばぼくの異動経歴を業界別に書いていくと、建設→福祉→交通→学生(採用)→防災→医療→広告→労働→介護・・・である。このように、定期異動と同時に、まったく違う業務・業界と対峙していかねばならない。

ちょっと不思議なのは、そういう異動のたびに、前の業務・業界とのご縁を清算していく同僚がいることだ。そしてその「バッサリ縁切り系」は、圧倒的な多数派だと思う。

ぼくは「ご縁はつづくよどこまでも派」。異動をしてもその業界の人たちとは何らか繋がっていることが多い。特にweb環境、SNS環境が整ってきたこの10数年は、その傾向が顕著だ。まるで地層を重ねていくように、人のネットワークが蓄積していく。

この人口急減時代において、地域課題は業界・ジャンルを越えて、重層的になっている。ぼくの担当業務である認知症ひとつとっても、医療・介護だけで支えるものではない。人権問題もあるし、地域の助け合いも必要だし、ひとたび自動車免許の返納になれば、交通問題、買い物問題にも繋がる。発症時期が若ければ、継続雇用と収入の問題もある。このような幾重にも折り重なった課題に対応するとき、どれほど「武器」を持っているかが、公務員にとって重要なスキルとなる。

福祉の世界にビジネスの考え方を当てはめてみると見えてくることがある。民間企業とのコラボレーションで解決できる社会課題もある。課題解決のための武器は、自分が経験して来たネットワークから与えられるのだ。

一方で、公務員には「公平性」という視点が求められる。「不正防止のために、同じ所属には長く置かない」ということが定期異動の大きな理由の一つでもある。

かたや「不正リスクの回避」。

かたや「行政効率の最適化」。

どちらを優先するのか。組織として、また個人としてのあり様が問われているのだろうなあと思うんこ。

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kaishin

明日の公務員たちへ

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