孤想

 貴方の座右の銘は何ですか。

 私は"孤想"です。"こそう"と読みます。
「初めて聞いた」と思われるでしょう。それもそのはず、辞書に載っている言葉ではありません。いわゆる造語です。

 この言葉は、高校時代の国語の先生が教えてくれました。
 正直言って変わった先生でした。高校で教鞭を執る傍ら、書の個展を開くほどの腕前の持ち主でもあり、普通の先生では聞けないような芸術の世界を熱く語ってくれたりもしました。

 また、私の高校は自由闊達な校風であった代わりに学校全体があまり勉強をする雰囲気ではなかったため、先生自ら"勉強部"という部活を創設し部員を募集していました。
 勉強部といっても、先生が授業をするわけではありません。ちょっと大きめな部室で各々が黙々と自学自習に励むだけです。
 私もその部に属し勉強に励んだのは良い経験になりました。

 受験勉強というのは長くてプレッシャーがかかるものです。それもあってか、勉強部の部員の中には勉強から逃げてしまう生徒も少なくありませんでした。

 そんな時、先生は言うのです。

「精神論だけで受験は乗り越えられない。今一度これからの人生を考えてごらん。勉強しない手だってある」

 この言葉は、私を含め勉強が辛く感じていた受験生をはっとさせるものでした。
 先生の言葉をきっかけにもう一度将来設計をしてみると、"僕は""私は"あの大学に行く必要がある、またはあの大学で学びたいことがある、と改めて思い知らされるのです。

 これがまさに孤想でもありました。
 周りの空気に流されたまま受験期を迎えてしまうのか、はたまた自己を振り返り自らの夢のため人生のために努力するのか。
 将来を受け入れるのは自分であり、責任も自分で負わなければなりません。
 先生は"あの時頑張っていれば……"という後悔をしないよう、私たちに勉強ができる場所を与えてくれていたのだと思います。

 孤独に想う。
 はたして何を想うのか。
 それはきっと、最も大切なことを、でしょう。
 

 勉強部の繋がりは今もなお続いています。
 会社員や公務員としてやりたい仕事をして働いている者、大学院に進学し好きな研究に邁進する者、貴重な青春を割いて勉強に打ち込んだ者たちはそれぞれのフィールドで活躍しています。
 私も勉強部のおかげで第1志望の大学に合格し、充実した大学生活を送ることができました。

 今ある人生は、あの時から繋がっています。


 孤独から生まれるのは、決してネガティブなものばかりではありません。
 日常から自己を切り離し、心の声に耳を澄ます。それはきっと、未来の自分をより良い方向に導いてくれる道しるべになると、私は強く信じています。

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進藤 海

Essay Collection

心で考えたエッセイ集。
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