カイ書林 Webマガ Vol 15 No1

このたびの震災で被災された方々へお見舞いを申し上げます。
2024年もどうぞよろしくお願いします。
このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。

【好評発売中】

  1. 澤村匡史著:循環器救急・集中治療の高価値医療 日本の高価値医療⑧

  2. 和足孝之・坂口公太編集:医療現場に必要なリーダーシップ・スキル ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.19

  3. 筒井孝子・東光久・長谷川友美編集:看護必要度を使って多職種協働にチャレンジしよう ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.18

  4. 杉本俊郎編集:内科専門医が教えるジェネラリスト診療ツールキット

  5. 医療者のためのリーダーシップ30 の極意 Sanjay Saint&Vineet Chopra,翻訳:和足孝之

  6. 長瀬眞彦著:東洋医学診療に自信がつく本

  7. 梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動― 臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか? ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17

  8. 筒井孝子著:必携 入門看護必要度

  9. 筒井孝子著:ポケット版 看護必要度

  10. 鎌田一宏・東 光久編集:再生地域医療in Fukushima (ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16)


■2024年度の第6回Choosing Wisely Japanオンライン・レクチャー
次のように開催されます。ご参加をお願いします。

『ビッグデータから見えてくるわが国の医療ー持続可能性の観点から』
康永秀生先生(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻疫学保健学講座))
2月3日(土)14:00 ~ 15:30


■全国ジェネラリストリポート

秋田の総合診療医を増やす卒前教育の方略を日々考えています

渡部 健
秋田大学医学部 男鹿なまはげ地域医療・総合診療連携講座/秋田大学医学部附属病院 総合診療医センター/あきたGP NET専門研修プログラム

私のふるさとである秋田県は皆さんご存知のように全国一の高齢化率(2023/7/1現在39.3%)を誇り,日本全体の状況を10年先取りしている最先端地域です.「秋田県の医療グランドデザイン2040」(秋田県医師会発行)では,今後入院医療から外来診療へのシフト,そして慢性疾患や複数の疾患を抱える高齢者への医療のニーズに応える体制整備が必要とされていますが,まさに総合診療医の存在感が高まっているといえます.
私は現在大学を中心として,臨床,教育,(まれに)研究を行っていますが,特に卒前教育でいかに総合診療に興味を持ち続けてもらえるかという課題に,試行錯誤しながら立ち向かっています.
入学時は比較的多くの学生が「総合診療に興味がある」と考えているようですが,卒業時には残念な状況になります.学年が上がるにつれて様々な専門領域を学び,それに興味を持っていくのは理解できますが,それでもなお「やっぱり総合診療医になりたい!」と思ってもらえる方略を日々考えています.
2020年度に厚労省事業で総合診療医センターが誕生し,県のサポートもあり,追い風であることは間違いありません.この追い風にいかに乗っていけるか,たくさんの学生・医師に乗ってもらえるかを日々考えながら,私自身もメンターとして信頼される総合診療医になれるよう日々精進しています.「秋田 総合診療 ブログ」でGP NETのHPや成長記録もぜひご覧ください!

■マンスリー・ジャーナルクラブ

乳化剤の摂取は心血管リスク増加と関連

片山 皓太
聖マリアンナ医科大学 総合診療内科
福島県立医科大学 大学院医学研究科 臨床疫学分野

Sellem L, Srour B, Javaux G, et al.Food additive emulsifiers and risk of cardiovascular disease in the NutriNet-
Sante cohort: prospective cohort study. BMJ. 2023 Sep 6;382:e076058.

欧米では、摂取する総エネルギー量の30-60%を超加工食品(複数の食材を組み合わせて工業的に製造された、加工の程度が非常に高い食品)が占めると言われている。先行研究では、超加工食品の摂取と肥満、死亡、悪性腫瘍、心血管疾患、2型糖尿病などのリスク増加が関連していると報告されている。この関連の原因が超加工食品に多く含まれる食品添加物(特に乳化剤)ではないかと言われてきた。

内容の要旨
目的:食品添加物の乳化剤の摂取量と心血管リスクとの関連の検討。
方法:2009年から2021年にNutriNet-Santeコホート研究に参加した18歳以上の心血管疾患をもたない95,442人が対象となった。対象者は、平日2日と週末1日についての24時間の食事記録を参加後2年の間に3回以上回答した人に限定された。対象者は、毎食及び間食全ての食事と飲料の内容をweb上の回答フォームに入力した。研究者は、これらの詳細な報告から乳化剤または乳化塩に分類される61種類の食品添加物を同定し、摂取量の合計と?乳化剤の総摂取量を計算した。加えて、対象者は発生した健康イベントを1年ごとに送られる健康状態質問票を使って回答するか、研究用webサイトを通じて報告した。上記を用いて乳化剤の摂取量と心血管疾患(心筋梗塞、急性冠症候群、血管形成術、狭心症、脳卒中、一過性脳虚血発作)のリスクとの関連をCox比例ハザードモデルで解析した,

結果:対象者の平均年齢は43.1歳で79%が女性であった。中央値7.4年間の追跡期間中に1995件の心血管疾患が確認された。乳化剤の摂取が多い群は、若年、BMIが高い、非喫煙者、学歴が高い、身体活動レベルが高い、エネルギー摂取量と飽和脂肪酸・ナトリウム・砂糖・食物繊維、赤身肉、加工肉、超加工食品の摂取が多いという特徴がみられた。一方で、飲酒量、野菜果物、全粒穀物の摂取は少なかった。セルロースの摂取はケーキやビスケット(43.4%)、加工したジャガイモやイモ類(20.1%)に由来するものが多く、モノ-及びジグリセリン脂肪酸エステルの摂取源は、脂質とソース(22.5%)、ケーキとビスケット(22.0%)に由来するものが多かった。セルロースの多量摂取は、心血管リスク (摂取量が1SD増加あたりのハザード比1.05、95%信頼区間1.02-1.09)、および心疾患リスク(ハザード比1.07、95%信頼区間1.02-1.12)と関連していた。モノ-及びジグリセリン脂肪酸エステルの多量摂取も全てのアウトカムとの関連がみられた。

コメント:超加工食品にはポテトチップスや菓子パン、カップ麺などが含まれ、日常生活で馴染みの深いものばかりである。本邦では、1日の総エネルギー摂取量のうち平均3-4割程度を超加工食品が占めると言われている。先行研究でも超加工食品と死亡、悪性腫瘍との関連が報告されているが、本研究は食品添加物という側面から検討した興味深い研究と言える。本研究のハザード比は小さいものの、超加工食品や食品添加物は広く使用され、私たちも多く摂取している。糖尿病や高血圧など慢性疾患を広く診療するプライマリ・ケアの現場では、超加工食品や食品添加物の視点からも栄養指導を考えた方がよいのではないだろうか。


■カイ書林図書館

2024年度診療報酬改定のポイント

厚労省から公表された改定の内容のポイントは以下の通りです。
・「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」の評価票(A項目およびC項目の一部)、基準の見直し
・「特定集中治療室用の重症度、医療看護必要度」、「ハイケアユニット用の重症度、医療看護必要度」評価項目、配点の見直し
◎重症患者割合の定義からB項目の得点に係る条件が削除(一般病棟用、ハイケアユニット用);患者の状況(ADL)等が重症患者の定義から外れるという大きな変更
・「ハイケアユニット用の評価票重症度、医療・看護必要度Ⅱ(以下必要度Ⅱ)」の導入(レセプト電算処理システム用コードを用いた評価方法)
今後この改定について医療者の皆様から広くご意見をいただけると幸いです。

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