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ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計篇

2021年4月3日 夜公演
於:日本青年館ホール

原作については、ゲームやアニメの界隈を漂っていたら、一度ならず名前を聞いた・見たことがある、という人が多いのではないでしょうか。そのくらいには有名で、息の長い作品と認識しております。
その原作と同じように息が長く、多くのファンがいるのが、ミュージカル薄桜鬼。通称『薄ミュ』でありましょう。
ちなみに、わたしはプレーヤーではありません。ゲームの公式サイトで、あらすじやらキャラクターやらを「へー」「ほー」「なるほど」と一読したことがあるくらい。
完全に役者目当てで観劇しました。完全なるニワカです。いや、ニワカですらない者による薄ミュ記であります。あしからず。

おどろいたことに、そんなニワカにも親切設計の作品だったのです。
真改で薄ミュ自体も心機一転みたいなとこがある(らしい)からなのか、今までの作品でもそうだったのか、頭から尻までストーリーを余さず舞台上でやってる(と思われる)脚本でしたの。
お陰様でわたしは「ははあ、なるほどねえ、こういうお話でこういう人たちがこのようなことになるのねえ。ほうほう。」といった具合に、置いてきぼりにされることもなく観劇できました。
ここからは小声。ありがたいんだけど、全部盛りすぎてどうにもダイジェスト版のような印象が拭えず。相馬主計篇といいつつ、彼の重要度はそこまで高くないんだな??
もしもわたしがプレイヤーだったらば、自分の思い入れとか解釈で補完しながら観るだろうから、「原作ものは敢えて薄く多く描く」手法もありだろうなあと思っており。そうだとすれば、入れ代わり立ち代わり、全員にぶわーーーーーっとスポットをあてていく、あの方式がむしろいいのかな?とも思いつつ。それにしても駆け足だったなあという観後感でした。

しかし駆け足もただの駆け足じゃなくて心底すごかったの。物量が。物量?
ええと、先にも書いた通り、文字通り入れ代わり立ち代わり。役者さんたちが舞台上を出たり入ったりものすごい移動量だし、セットもかなり立体感のあるタイプだから移動には上下移動も含まれてるし、ミュージカルとは言え歌パート多いな!!って圧倒されたし、隙あらば戦いだす(=殺陣・アクション)し。
あれは、命削れるなあ。

今回、あらたに言語化できたミュージカル観があります。
『ミュージカルは歌で芝居をしなければならない。ミュージカルの歌は、歌を純粋に歌うときの歌とは違うものだ。』
歌詞はセリフだったら組み込めるものを削いであるし、音程・リズム・強弱などの制約があるので、同じことを表現するとしたら、セリフと同じアプローチでは芝居にならない。
また、うまい歌がいい歌の芝居とは限らない。
一番わかりやすいのは歌への入りと抜けかしら。前後の感情とか情景との連絡がなければ、うまい歌なのに浮いてしまうのね。もちろん、「うまい=よくコントロールされている」とすれば、うまいほうが歌への自由度が高く、より芝居に近づきやすくなるのだろうけれど。

閑話休題。

ここからは、印象に残った各役(とその役者)の覚書
山南敬助:もしゲームやることがあったらこのルートから攻略するわ!すき!ビジュアル見た時点で気になる…と思っていたところ、期待を裏切らず魅せてくれた役者さんにありがとう。(すかさずSNSチェックしたら美味しそうな写真満載だった???)
土方歳三:会ったことも話したこともありません、土方歳三。あたりまえです。でもさ、土方さんはこういう口調でこういう喋り方するよね!っていう土方歳三像を持ってる人は多いと思うの。その像にぴたっとハマって感嘆しておりました。立ち姿が美しかったです。
山崎烝:彼の死のシーンで、今観劇中唯一涙しました。『薄ミュ』の出演歴長いせいもあるのかしら。魅せ方をよくわかってるんだなあ!と思わせるお芝居で、役のやりたいことがものすごく伝わってきました。
風間千景:貫禄がある。出演者の中で、ちょっと段違いの歌であった。これは強い。敵役がしっかりしてるのって、いいですよね。
相馬主計:歌って踊る姿は初ではないけど、新鮮でした。歌パートはだいぶ緊張してる?って感じたけど、回を重ねるごとに進化しただろうと予想&期待。しっかりしなよ!と背中を叩きたくなるような役柄は、今まで(わたしは)見たことないタイプかもしれない。

一年越しの桜は、また無念桜になってしまうのかと思ったけれど、上演できて千秋楽で幕をおろせたこと、おめでとうございます。
「それが正解だったのか」という問いはあるのかもしれないけど、正解のないなかで解答を出したことに惜しみない拍手を。
物理的には量れない想いとか魂とか言われるものがたしかにあの場に充溢していたし、受けとりました。