遺品整理の仕事 【4回目】
2022年6月3日(金)
8時半集合。
現場に向かうトラックは爆音でEDMが流れている。
タバコの煙が風で流れて顔にかかる。
今回の現場までは100kmほど離れており、その間、人生について考えた。
<1件目>
特殊清掃と遺品整理を行う現場だった。
亡くなったのは高齢の女の人。
2ヶ月ほど経って発見されたらしい。
玄関のドアを開けると、強い腐乱臭が襲ってきて吐きそうになった。
例えるなら、古い食材のにおいが混ざりあった廃業の食品工場のような、へそのゴマの臭いを何十倍も凝縮したような臭いだった。
亡くなった洗面スペースを見ると、膝を抱えて亡くなった跡がハッキリとついていた。
社長は「もっと時間経ってからの方がええんやけどなあ、乾燥するから」と言っていた。
この現場は10段階のレベルで言うと7に近い6らしい。
漏れ出た体液でドロドロなので長靴を履いて作業する。
コンビニにおつかいを頼まれて、初めて軽トラを運転した。
「今日は軽トラ記念日だー」と思った。
現場は3LDKの家だった。
置いている本や物が、わたしが持っている物と被っていて複雑な気持ちになる。
今回もパッカー車(ゴミ収集車)業者が来ていた。
初めてパッカー車が遺品を飲み込むところを見た。パッカー車にタンスをそのまま入れて、辺りには木くずやガラスの破片が飛散する。プラスチックの容器が明後日の方向に飛んでいく。
社長はとにかく物をまとめるのが早いそうで、この現場は社長が物をまとめてみんなが運び出しをすることになった。
いままで重いものは持ってこなかったが本当に重い。
持ってきた大きなカゴに社長が遺品を詰め、それを階段を使って下ろす。
何往復したら終わるのか先が見えないまま、とにかく遺品を繰り返し下ろした。
ふと階段を見ると木の棒が落ちていて、「なんかチ○コみたいやなー」と拾い上げると、本当にチ○コの木の棒だったのでびっくりして放り投げてしまった。
何往復も荷物を下ろしていると力が入らなくなってきた。
急にこの荷物何kgあるんやろ、と思ってしまい余計しんどくなった。
10kg〜30kgなどのリアルな数字を思い浮かべるとしんどいので、逆にこれは500kgと思いながら持つと「わたし超力持ち☆」と元気が出てきた。
作業が終わり手袋を外すと汗で手がふやけていた。
次の現場は2グループに分かれて移動する。
わたしはバイトリーダーと一緒で、お昼を取る時間もなく次の現場に向かった。
<2件目>
到着したのは17時半ごろだった。
長丁場を覚悟していたが、今回は施設への引っ越しのみで、ありがたいことに荷物をまとめてくれていた。
しかも拍子抜けするほど軽い小さなダンボール7つのみ。
預かった荷物を施設に持っていくと、職員の人から「えーそんな名前の人いたかなー」と言われた。
施設の人が各所に確認を取ってくれている。
バイトリーダーが社長に連絡をすると、社長が伝えていた住所と違ったようで、全く違う施設に来ていたことが判明する。
引き上げて本来の施設へ向かう。
30分ほど走り到着し、荷物はすぐ運び入れた。
領収書を持っていなかったので、社長から請求はしなくていいと指示を受け事務所へ戻る。
高速に乗ったタイミングで社長からバイトリーダーへ電話があり「領収書ないけどやっぱりお金もらっといて」と言われる。
もう一度施設へ戻り、バイトリーダーが請求に行くも、当然、「領収書がないのに請求するのはおかしいんじゃないですか?」と言われたようだ。
社長へ連絡すると「やっぱり今日は請求なしでいいわ」ということになり、事務所へ戻る。
暑いし、飲み物休憩もないし、結局お昼も食べられなかったし、もう気力がない。
バイトリーダーに「友達にこの仕事内容なんて説明してますか?」と聞いてみると、「引っ越しの反対って言ってます」とのことで、なるほどと思った。
20時ごろ業務が終了した。
いつもは家の洗濯機で、通常の洗濯とは分けて作業着を洗っているのだが、今日は会社の洗濯機で洗ってもらえることになった。
家に帰ると、事務所に置いていた自分の荷物にまで腐乱臭が漂っていることに気づき、気の済むまでファブリーズをかけた。
太ももは水玉模様のように点々とアザが出来ていた。
6月4日(土)
休み。
サポートしてもらえたらうれしすぎてヒョーー!!ダンスダンス!!!🕺🕺🏻🕺🏼 そのあとはサポートしてもらった画面をスクショして何回もニヤニヤします。