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本物素材を操る

建築空間やインテリア空間をデザインしていく場合、様々なマテリアルがあります。取扱の中で、難易度の高いものの一つとては「天然素材」・「自然素材」・「本物素材」…あれ?これらの呼び方の違いは何でしょうか?どれも、感覚的には「人工的ではないもの」ということは伝わってきます。建築業界的には、「天然素材」と「自然素材」はほぼ同等のイメージで、木や石はできるだけそのまま、化学物質や化学建材ではない天然素材。材料はそうでも化学薬品で加工や混入されていたり、合成接着剤が使われたり、化学薬品をしみ込ませての防腐や防蟻処理をした無垢材などは、厳密には自然素材ではないともいえます。(現実的には、例えば100%全てを自然素材の空間ができたとしても、実生活においてのアレコレ全てを自然素材に転換していくのは、なかなかむずかしい昨今でもありますよね)

そして「本物素材」。その元々は「天然素材」でありつつも、その素材の特性を活かしながら、更に進化させていく。それはお料理に例えるなら、【出汁(だし)】に近いように私は感じてもいます。なぜならば、【出汁】は料理の最終系では目には見えてこない場合が多いのだけれど、その影響力は大きくて、むしろその全体を司っているとも考えられるからです。そして、その素材が良くてもそこから更にその良さを引き出すのは料理の腕次第。同じ素材でも、同じ味や料理のクオリティを均一化させるのは、これもまた一流の料理人ならではの領域になっていきますよね。

では、空間構成での「本物素材」の扱いはどうでしょうか?取り入れ方としては、大きく二通りにと私は考えています(私の独自的な仮名と分類です)。

1)ありのまま主役タイプ(自然体パターン):素材そのものの自然界での存在状態に近しい状況にする。パッと見てその素材が「何なのか?」が明解でその素材ならではの世界観が伝わる。

2)出汁的助演女優タイプ(素材進化パターン):素材そものの特性を保ちつつ別の形状やデザインを経ることで、素材ならではの表情を超えた世界の演出を醸し出す。

どちらの場合も、そもそもどちらも「本物」という前提があるからこそ、そのクオリティも保持され成り立てる。1)ありのまま主役(自然体パターン)はイメージしてしやすいと思いますので、今回は2)出汁的助演女優タイプ(素材進化パターン)に注目してみましょう。つまりどのように空間に構成されていくのでしょうか?と…今一度、TOP画像から説明します。

ここでは、天然素材として大きく3つの素材があります。正面のレリーフは「ライムストーン」・両サイドのグレーの石材は「ヒタム(オリジナル天然石)」・照明のシェルランプは「貝殻」。それぞれの素材は、本物なので「そのまま」取り入れても独特でいい感じになりますが、やはり各特性をプラス要素にすることで、磨きをかけることにも、やりがいを感じてしまうのです。なぜ?これらの素材が、このように構成されているのか?と言えば、素材ごとの特性から説明をしていくと、

正面:ライムストーンは柔らかい石材なのでレリーフなどの加工がしやすい、細やかな模様を施すことで、平面でのマットに奥行きあるぽってりさを演出。→アクセント壁として見せ場を作る。

両サイド:ヒタムストーンは堅くてグレー色の色むらの幅が広い。向かって左壁面は色としてのグラデーションを見せるなら平貼りで表現しながら平面で光としては「明」。右壁面はリブ貼りにすることでストーンのハードと重厚感を伝えつつ、直線的な陰も生み出すことで、光としては「陰」。→同素材の面を立体的に構成。

中央のシェルランプ:照明器具としての「明るさ」を放ちながら、貝殻の「透過性」を受けた光の透け感と光の細やかな陰影の拡散。→ベースの陰影に更なるメリハリをつける。このシェルランプは通常的な空間(壁面がフラットで壁紙などの単色)の場合でも、キラキラします↓。

このように、素材そのものの特性も加味しながら本物素材を操ることで、空間そのものにも大きな変化を創り出せるところが、空間デザインの醍醐味でもあります。

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