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【絶望三部作】『Evermore』第1章:まつりばやし ①(第2部:ガッタ・メイク・イット(ライフ))

 
 サトシとは、オンラインの掲示板で知り合った。

 当時、ゲイの出会いと言えば、新宿二丁目のような街へ出向くか、同性愛者向け雑誌の文通コーナーを通じて、ピンとくる ” 相手 ” とコンタクトを取る、そういったやりとりが主流だった。
 インターネットが市民権を得る遥か昔から ” オンラインで相手を見つける ” というスタイルをたしなんでいた二人は、ちょっと先を行く、未来人っぽい感覚を身につけていたと言えるのかもしれない。
 限られた人間が閉鎖された特殊な空間でコミュニケーションに興じる…。黎明期れいめいきのサイバースペースなんて、そんな変わり者たちの ” サロン ” だった。
 俺がそこにいて、サトシもそこにいたっていうことは、きっと、そういうことなのだ。

 二人は最初からやけに会話が弾んだ。無論、オンラインで…、だけれども。
 文字だけのやりとりとはいえ、ある程度、相手との相性はチャットでも計測できる。
 会話のテンポやタイミング、物事の関心度、興味の濃淡、気遣い…、俺と彼のその組み合わせはいつも良好だった。
 寝る前にちょっとだけチャットしよう…、が、気付くとすっかり夜が明けていた。そんなこともサトシとのコミュニケーションではザラだった。

 しばらく、そんな関係が続いた数ヶ月後、サトシから、

「今度の金曜の夜、会えませんか?」

 というメッセージがメールボックスに届いた。
 俺も「会いたい」という思いが募りに募っていたこともあって、その気持ちを素直に、正確に、彼へと伝えた。

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