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著作権契約書作成支援システム を使ってみた

今年の4月1日に著作権契約書作成支援システムがリニューアルされていたようです。

どんなもんか触ってみました。

システムの前提

まずこのシステムが吐き出してくれるドキュメントの立ち位置を確認しましょう。注意事項として記述されています。

契約主体

契約主体としては「職業として創作・演技・演奏などする人」および「職業として表現を取り扱う人」が除かれています。

これは「個人事業主」や「メディア・企業」などは自前で弁護士なり法務部なり抱えてるでしょうからそちらを使いなさい、ということでしょう。あくまで個人間で制作依頼を行う際のサポートとしてのシステムであるということでしょう。

アウトプット

このシステムはあくまで「契約書の作成を支援する」ものであり、したがって、必要に応じて手直しの上で契約書を完成させ利用するようにとされます。

つかってみる

作成を始めると「クリエイター」か「クリエイターと契約したい人」かの選択肢が出ます。今回は「クリエイター」を選んでみます。

今回はクリエイターを選択してみる

次にどんな種類の作品を作るかの選択肢が出ます。この分類は「著作権法における著作物の分類」に従っています。

著作物の類型による分類。2つ目のイラストを選んで見る

ゲームソフトも動画と同じ分類(映画の著作物)であるため、同じ選択肢に入っています。ここで注意が必要なのですが、この選択肢で出てくる契約書は「動画制作」を想定されたものになるので「ゲームのシステム部分やUI部分などの実装」のプログラムの発注には対応してません。

今回は「イラスト、絵画、〜」を選んでみましょう。

次に出てくるのは依頼内容の選択肢です。

制作委託を選んでみる

今回は制作委託を選択します。

イラスト制作では以上の項目を選ぶと契約書の雛形が決定するようで、制作される契約書の前提が提示されます。

これを了承すると具体的な項目を埋めるステップです。画像の(6)のようにトグル内で必要事項を記入する形式です。

例として次のような内容で記入してみました

  1. 1920*1080pxのイラスト

  2. クリエイターに著作権は帰属(転移しない)

  3. Webサイトでの掲載

  4. 氏名表示はなし

その結果は次の通りでした。

第5条の改変の範囲がかなり甘いですが、これは私がテストとして契約書を吐き出させるためにとりあえずで書いたのがそのまま出てるからです。

自由記述のフォームでしたのでここでしっかりかけるでしょうし、文字制限(確認できてませんが)に引っかかったりしたときには契約書をDLした後で自分で加筆修正すればよいです。

基になる点としては

  1. 著作権が絡む条項しかない

    1. 秘密保持や損害賠償、反社会的勢力排除などの「一般条項」がない

  2. 追記すべき内容を示す注が「印紙貼り付け」と「税務周り」で、「一般条項」の追記などには触れていない

であり、「必要最低限の項目はいい感じにあるけれど、ちょっとシンプルすぎる」という印象です。このまま使うのは避けたほうが良さそうです。「この値段でこれを頼んだ」という証拠だけあれば十分というならこのままでもいいのかな?

とはいえ、よくわからないサイトからひな形をDLしてくるよりは良いでしょう。

特に、同じ内容の英訳版もDLできますから。

まとめ

今回は「イラスト制作」を例にしてシステムを使ってみました。

例で得られる契約書はちょっとシンプルすぎるけれど必要最低限の項目はいい感じ、というものでした。

他のパターンもいくつか触ったのですが、このシステムを取り扱うときの注意としては以下のような内容があります。

  • 取り扱う制作物のパターンは意外と少ない

    • 例えばイラスト制作ではLive2Dのような動くものは想定されていませんから、「改変範囲」の自由記入欄で「モデリング」や「アバターとしての実演利用」に触れる必要があります。

    • また、映画・動画などのパターンには著作物の例の中にゲームが含まれているものの、実装依頼は想定されていません。はじめの一覧になかったようにプログラムは本システムの範疇の外です。

  • 一般条項は抜けているっぽい

    • 全部のパターンは見れてないですが、数パターンだけ一般条項がないということはないと思うので多分全部のパターンでないのでしょう

    • 損害賠償や契約不適合など、契約書に記載がない場合は民法に従うので大きな問題にはならないかもしれませんが、秘密保持など書いてなければ相手方に何も求められないものもあるので注意が必要です。

著作権が絡む部分では(特に人格権のとことか)かなりいい感じの記述になっている印象で、(一般条項がないためではありますが)構造もシンプルなため案件固有の事項、より詳細な制作物の仕様や制作物の利用範囲、もどこに追記すればいいかわかりやすく、取り回しはしやすいと思います。

とはいえ、一般条項がないなどそのまま使うのには抵抗があるものになっているのも事実です。

サイトでも書かれていますが、文化庁の出したものだからと言って鵜呑みにせず、自分で内容を理解してから利用しましょう。

ちなみに、現在このシステムで提供される契約書の中身に合わせた解約書の各条の解説PDFが準備中とのこと。楽しみですね。

現在はリニューアルされる前のシステムに準じた内容のマニュアルが提供されています。(サイトトップの「契約書マニュアル」のリンクからアクセスできる)

「契約書マニュアル」がPDFへのリンクになっている。
マニュアルの目次
見出しのフォントが崩れてる(私の環境だと常に再現されました)
現在マニュアルもリニューアル準備中とのこと!

本稿で利用した画像は以下のサイトののスクリーンショットによる引用です。
・文化庁「トップページ:著作権契約書作成支援システム」(https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/c-template/index.php
およびその配下にあるページ
・文化庁「誰でもできる著作権契約マニュアル」(https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/keiyaku_intro/chosakukenkeiyaku_manual.pdf



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