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438 81歳の暮らしから

(75)作家に聞く

 今年一年は、何かと体の故障続きで、コロナのこともあり、家にいて物書きなどしていた。
そろりと元に戻りつつ、重い腰を上げ、軽いお茶会からでもと、申込みにでかけた。

お道具屋さん

 お付き合いは30年になるが、本業の、お道具の顧客ではない。0が並ぶ茶碗の一つも全く縁なし。
専ら、茶会の参加と講演を聞くこと、記念の展覧会を見ること。
先月も、祥瑞窯6代の古希記念、作陶展があったようだが、これは見たかった。
なにもしらないまま、おずおず、お茶会に顔を出し始めた頃、拝見した、形良く美しい青色に、惹き付けられ、(しょんずい)という、音に、特別感を持った。
日本の茶人が注文で、景徳鎮の民窯で焼いた染付磁器であると知った。
浅見五郎助作陶展のチラシには、ガッチリした体格のいい男と、継承者の甘いフェイスの息子。
うん、これは行きたかったな。

犬も歩けば

 茶花教室、懐石料理教室、中級灰型講習など、勉強会も色々。これは縁なし。
私は、久しぶりに、クリスマス茶会と雛祭り茶会の申し込み。
4階で、呈茶をうけ、渋いお茶碗と、お菓子は?銘を聞き逃した。それより、広い展示場の奥に端然と一人の男性が。
お客らしき人も少なくて、ちょうどお昼時だからか、会場は静か。
行動の早い私、美味しくお茶をいただき、すぐ、奥に向かう。
あの、作家さんでいらっしゃいますね!(はい)と、声は静かだが、私の問に、目は優しく笑っている。
(別件で来て、このような展示のこと、知らなかったのですが)
貴女が飲んでいたお茶碗が、[
馬蝗絆]というのですよ。
其れから誘われて、初めてのお話ばかり。私、茶道のこと、深く知りませんが、お茶会愛好家なんです!
例により疑問はすぐ口に出し、迫るのを、ゆったり受け止め、ゆるりと答えてくれる。
1938年生まれとあったから、円熟の人、頂いた名刺には、(現代の名工)受賞、(黄綬褒章)受賞とある。
道一筋を貫いた方なのだろう。
[石山人]所一郎氏は美濃の人。工房、ギャラリーは、羽島とある、一宮からは、橋一つ渡れば羽島、グルメの店が色々あるので、ちょくちょく出かけるところ。
石山人の作る器は、自然界磁気岩を成形、特殊高温焼成する独自の技法の創作。
勧められて器を手にすると、(重い!)
富士山の岩を剤ったもので焼成を繰り返す。石に含む釉成分により景色を出す。
話をされるときは、声に力が入り情熱的、何より目が艶を帯び生き生き。
(待ってください、メモします)
あれ、ペンがない?!左のやり取りを聞いていた、お店の人が、ボールペンを差し出してくれた。
何時も時やチャンスを逃さず、ルポしている私を知っているから、対応のいいこと!

 変な客

 商品買わずに、取材は熱心。お茶の周辺記事を記録して、一人悦に入る。
石山人の履歴を見ると、世界各地を渡り歩き、素材石を収集、実験に没頭し、焼成融解成功。
工房設立後は石椀製作に取り組む。
石器について、2万年も3万年
も遡り
話をしながら、差し出された名刺の隅にはQRコード。凄いですよね、先生。何万年も昔から、未来に向けて目が開かれている!
一つの道を極めてなお進もうとしている人と、同じ程の年月生きてきて、知らないことばかりに、驚いてばかりの人と。それでも
二人の気持ちは、一期一会が、嬉しかったと、微笑みあったことです。濃密な時間は、意図的に、切り上げました。
やわな私は、頭くらくら、もう、知識に押しつぶされそうでした!でも、対座したあの方は、ふくよかな人柄で、物好きな私を幸せにしてくれました。

#やはり 、外界の刺激
#人間好きは 、いいと思う


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