見出し画像

407 81歳の暮らしから

(44)露呈される老い

 朝から気の重い電話がかかる。案の定、自分の思いのみ、大声で。いつものことで慣れっこだが、受話器を耳から離して、けたたましい訴えを、努めて冷静に受け答えする。
身内の殆どが、それなりに和やかに暮らしている中で、唯一、とんでもなく重苦しい雰囲気で、様々にマイナス要因で満ちた話題を突きつけてくる。
50の女の、幸せ感薄い話は、いくら元気印のおばさんでも、ごめん、正直、気がめいる。

歌う会

 予報道理の酷暑、2ヶ月お休みした、歌の広場に、午後から出かける。暑いからとやめるのでなく、もうガマンできない、声を出して、みんなと歌いたいの、気持ちが勝る。
バス停で立っている人二人だけ、暑いですねえなんて、陳腐な言葉、言いたくもない。似た年頃の御婦人が、案の定、私は、ええ!とにべもない。一宮駅につくと、それでも吹き流しは風に揺れていた。午後1時。
駅コンコースは、若者カップルとファミリーの姿、少年少女のグループが大方。ひょろひょろと、おじさんおばさんも交じる。
2年休止後の3年目の縮小夏祭り。このバカ暑さの中では屋台とて、1軒か2軒?カンカン照りの中では、誰も
食べる気も起こらないわな!
小さな店のかき氷だけが、盛況。
私、コルセットつけて、日傘差して、乗り換えのバスまで
この混雑のなか、待つ気になれず、ノロノロ、歩き出す。
アッツいのに、浴衣?団扇バタバタ額から汗出して!
女の子は元気に、はしゃいでいる割に、男の子は耐えてる風情。げんなりしているように見える。
あかちゃんだっこのパパは、元気あるなあ。ママも暑さに負けてない。活き活きしている。
帽子を被り首にタオル巻き、小さな扇風機を顔に吹き付けながら、男の子も女の子も冷たいものを舐めている。誰も暑さに負けていないなあ!

もうすぐセンター

 あと少しで歌う会場、まっすぐ歩いてすぐそこなんだけど、もう、だめ。
喫茶手に潜り込む。アイスコーヒー下さい!
ひと息ついて、いや、ふた息ついて、やっと、センターに辿り着いた。
集まりはコロナのせいで、以前の半分来るか来ないか、根っから歌うのが好きな10数名のみ。
歌曲、歌謡曲、昭和の懐メロ、片端からリクエスト曲をうたう。私は一人、その人の声が大好きな男性がいて、自分が歌わず、じっと聞くだけのときもある。
声量も、声質も、艶があり、情感こもり、ウットリする。
先生のソプラノと、彼のバリトンボイスを聴けば、出掛けた甲斐があると、言うもの。

信じられない思い

 歌うことも聞くことも好きだが、自分の声が出ないとき、人の声を聴くだけで、こんなに、深く満足できるなんて。
歌わずには、おれない自分だったが、良い声で思う存分表現できる他の人の歌声を、この頃はしみじみ心から受け止められる。
最近、サラリとシャッポを脱いだ思いがしている。
実にあっさり、拘りなく身軽になった気分がする。

いつ、おばあちゃんになるの?

 孫たちが家に遊びに来た帰り、娘に聞く言葉。
楽しく会食したりした後の、帰宅途中の車の中。
久美子って、おばあちゃんなんだよね!何時になったら、本物のお婆ちゃんになるの?!
跳ね返りのお転婆婆さん、忙しく動いて笑ってばかりの私を不思議がったそう。
お待たせしました!
もうねえ、正真正銘、おばあちゃんになってきたよ。
暑いの我慢できない、お肉好きだけどたくさん食べられない、外出しても混雑や喧騒は嫌いになった、重いもの持てない、文句ばかり言う人嫌い、優しい人が断然好き、まだまだいくらでもは証拠はあるんだけど。
変わらないことが一つあるのが自分ながらに嬉しいことなんだよ。
いやな人、きらいな人も、居るんだけど、基本的には人間が好きだということ!
弱さもごまかせないし、できないことも多くなったと認めるが。隠しきれない老というのも表面に出てきて、ある意味、、ホッとしている。
情熱的な恋は、出来なくても、老若男女を愛しく思う気持ちは、歳を重ねるほどに増してくる。老いの露呈は随所に顕著でも、愛が溢れてくるのも事実。
ありのままに生きようと思う。
#暑さに負けた
#若さも 、誤魔化しきかない


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?