夢でメシを食う① ~お金と気持ち編~

自己紹介

初めまして。漫画家の吉谷光平です。
現在サイコミという漫画アプリにて「今どきの若いモンは」という
サラリーマン漫画を描いています。

連載としては4作品目。ドラマ化も経て、おかげさまで今まで描いたマンガは累計30冊を超えました。
まだまだ道半ば、半人前ではありますが、漫画家としてある程度の実績を残せたのではないかと感じています。
読者の皆様、本当にありがとうございます。

この記事の目的、対象者

この記事は漫画家を目指す若者。(夢を追う若者)に向けて私の知見をお伝えして、応援したい。という想いから書いています。

最近、ありがたいことに専門学校での臨時講師や自社のスタッフで20代前半の若い子と関わる機会が増えました。
その中で「どうしたら漫画家になれますか?」「どうしたら食っていけます?」などの質問をしていただくことが多々ありまして。
「一言じゃこたえられない!」「何回も言うの大変!」「考えを整理したい!」と思い、記事を書くことにしました。

というわけで
・漫画家志望、1作品以上書き上げている
・小さい賞を受賞した。担当がついた
(これ以下の人はとりあえず悩む前に描いてください)
・漫画以外の芸事で食べていきたい人

などを対象に、具体例も踏まえながら吉谷流の
「夢でメシを食べる方法」を紹介していこうと思います。

本記事では
①お金の心配の解消法
②夢を目指す気持ちの作り方

について述べます。
それでは早速本題に入ります!!

①お金が心配だ!!!!

一番質問が多いのがお金の問題です。
大学卒業、専門学校卒業、はたまた就職後。そういったタイミングで
「漫画家を目指したいがお金が心配」
「アシスタントって食っていけるの?不安定なのでは」
「家族がほしいけど無理そう・・・・」
「家を買うのも厳しそう」
という悩みがある。とよく聞きます。

ひとつひとつ、心配を具体化して潰していきたいと思います。

・お金が心配、アシスタントって食えるの?


ひとまず漫画家アシスタントになると仮定しましょう。
→アシスタントの現在の相場は1日(8~10時間労働)で
日給1万~1万3000円程度。週刊レギュラーで約4日で
月に16~18万円。

年間換算すると・・・・
・18万円×12カ月=216万円
アシスタントはヘルプで増やそうと思えば割と簡単に増やせるので
一般的な労働の週5で働くと
・22万×12カ月=264万円

どうでしょう。
一般的な職業と比べて新卒の給料と考えても
それなりではないでしょうか。
(勿論社会保障や社会的信用などは無いですが)

ここに家賃、生活費がかかるわけですが現在はリモートがほとんど。
一昔前のように東京で一人暮らしがアシスタントの必須条件ではなくなりました。

私のオススメ(理想)は
・週3~4日、月16万円ほどアシスタントで稼ぐ
(働きすぎると自分の漫画を描く時間が無くなるのでオススメではない)
・週3日自分の漫画を描く。そして年二回30pの読み切りを載せる

これが実現すれば年収300万円達成も可能です。

どうでしょう。

生活、できそうじゃないですか?

一般企業に就職して新卒で300万円ってそれなりだと思います。
もちろん、昇給や安定感はアシスタントの方が下かもしれません。
ですが、300万円あれば暮らせます。生活できます。
年間支出を計算してみてください。
どうしても300万円で無理だ。というのであれば
アシスタント以外の道を考える必要があります。が、そうでないなら
いまあなたの考えている不安は「ただの漠然とした不安」なのです。
考えるだけムダです。

不安は、なるべく具体化して、問題点を洗い出しましょう。

更に、少々キツめの現実をお伝えすると

・マンガ専門学校卒業の人間に新卒年収300万を超える就職は難しい
・漫画を描きながら、本業は定時上がりのホワイト、本業にそこまで本気にならずに年収300万以上は難しい

残念ながら真実だと思います。
みんな、本業に打ち込んでるのです。漫画なんて描いてないのです。
そんな中、「いや、自分は漫画家になりたいんで」で通用するほど甘い企業はほぼ無いでしょう。

つまり、逆を言えば、漫画専門学校を出たり、学生の時期に漫画に打ち込んでしまったそこのあなた。
漫画家を目指すのが一番安定への近道なのです。なんなら楽な道なのです。
他のみんなはあなたが漫画の努力をしてる間、サラリーマンとしての努力をしているのです。サラリーマン、甘くないです。ほんとに。

※サラリーマン経験が漫画に生きることは大いにあります。無駄ではありません。しかし、それは全ての経験にいえることでもあります。もしサラリーマンを経験してから漫画家を目指すのであれば、かなりハードだと覚悟してください。就業時間後に漫画を描くのは大変です。いつしか漫画を諦めたくなるかもしれません。相応の覚悟をもっていきましょう!!!


・家族が欲しい 家が欲しい

結論、家族は大丈夫。持ち家はアシスタントだとやや難しい

家族は大丈夫です。自分が漫画家アシスタント年収300万円、パートナーが何かしらで200万以上。であれば世帯年収500万円を超えます。
地方で贅沢しなければ十分暮らせていけるでしょう。
二人の合算収入なので税金も低く抑えることが可能です。
(税金のことは知れば知るほど、お得に暮らせるので時間のある時に少しづつ勉強するのをオススメします)

持ち家に関してはローンが組めない可能性が高いので、アシスタントだとキャッシュで貯めるしかない可能性があります。
しかし、法人化して3年以上経っていて頭金を物件価格の半分以上いれたり、預金を堅実にしていたり、他にローンがなかったり、、、、などで
銀行からの信用を高めれば可能性はあります。
こればかりは銀行次第です。そして物件価格次第です。

私は、漫画家を目指す際に
「家族と家はあきらめよう」
そう思って目指しました。それは極端だったと今なら分かります。

一般的な「幸せ」と呼ばれるモノをつかみながらも夢は追えます。
決して、「幸せを捨てなければ夢は得られない」という二者択一ではありません。

・夢のある話

さて。現実的なお金の話をしてきましたが、夢のある話もしておきます!
結論から言うと、漫画家、儲かります。夢、あります。

みなさん、ワンピースの作者尾田栄一郎先生がお金持ちなのは当然ご存じでしょう。ジャンプ作家、アニメ化作家がお金持ちなのもなんとなくわかっているでしょう。そこに憧れて、漫画家になりた~い!なんていうと

「そんなのは一握りだ」「ほとんどが食っていけない」「夢を見るな」

なんて親に言われたりするんじゃないでしょうか。
私もこう思ってました。よっぽど売れないときついんじゃないかな。と。
勘違いでした。
まぁ、冷静に考えて親、漫画家の知り合いなんていませんし。
懐事情なんて知る由もありません。
もっと言えば、漫画家同士ですらあんまりそんな話しませんし。
暗い話とかキツい話の方がインパクトあって、話題になりますし。

儲かってる人、「儲かってる~!!!うはうは~!」なんて
わざわざ言いませんし。

ということでここでは、超有名作家ではなく
そこそこの漫画家の例をいくつか出して考えていきたいと思います。

<週刊連載作家(コメディ)30歳 A先生のお金事情>

・収入
☆原稿料1万円 週20P カラーや特典など含めて
年間約1000p生産。
☆単行本年間4冊 部数は1万部。電子も含め、年間約5万部(単価600円の印税10%)
・費用
☆スタッフ、2名レギュラー。(月18万×2)

・年間収入→原稿料1000万円+印税約300万円
・年間費用 36万×12=432万円

年間利益=868万円

どうでしょう。
多くないですか。普通に。
一般的な週刊連載をして、即打ち切りではなく、そこそこの人気を取った人の例になるかと思います。雑誌の中堅~下の方くらいのレベル。
・・・単行本が年間安定して5万部売れるって
かなりすごい気もするので、ここを半分にしたとしても700万円くらいは
稼げちゃうんですよね。

そして今はアプリの先読み課金、電子のセール、広告収入などなど・・・
稼ぎどころがたくさんあってですね。
え!?あの作品ってそんなに売れてんの!?え?
年収1億円余裕でこえてる!?
  
なんてこともたくさんあったりするのです。

本屋さんに並んでいる、100万部突破!とか
電子書店の100万ダウンロード突破!!とかみると
ついつい、「ああ~~~めっちゃ稼いでらっしゃる~~~」
なんて思うわけです。
※ちなみに100万部で約6000万円です。

もちろん、これが毎年続くかの保証なんてありませんし、
「来月打ち切りね~」とかいって急に無職になったりする
リスクはありますし。
ここまでくるのに、連載を取るだけでもとんでもない壁を乗り越え、
みなさん血のにじむ努力をしてたどり着いているのですが

ジャンプ作品、アニメ化作品だけではない

ということだけは強く言いたいです。

週刊連載!!年収1000万円!!!
売れたらもっと儲かる!!!それが漫画!!!!
そういう人結構います!!!

どんどん言っていきたいですね!
しかも、電子書籍のおかげで、絶版はほぼありません。
永遠にお金が入り続けます。
私の連載終了した漫画でもツイッターで宣伝したり、
一巻無料セールがあると
半年に一回50万円はいってきてたりします。

つまり、描けば描くほど働かなくてもお金が入ってくるわけです。

権利収入万歳!!!!これは漫画の本当にいいところ。
サラリーマンには無い点です。

・漫画家のお金の階段まとめ
①漫画家アシスタント→年収250~300万円
②駆け出し漫画家→年収300~500万円
③週刊連載漫画家(新人~中堅以下)→年収700~1500万円
④中堅漫画家(年10万部以上の利益)→年収2000万円~3000万円
⑤売れっ子漫画家(アニメ化など)→年収3000万円~数億円
(100万部で約6000万円です。書店でいろんな漫画の帯に書いてある部数を見てみよう!すごい作品ばっかりだよ・・・!!!)

大体こんな感じだと思います。もちろん、細かい違いや電子印税、広告、
アプリ課金、グッズ、など内訳は違うと思いますが利益ベースで考えて
このくらいじゃないかな~という予想です。
昔は雑誌に載って、単行本を売る。以外なかったので
①か⑤しかなかったのが、いろんな収益構造が産まれた結果
③と④の人がめちゃくちゃ増えたんじゃないかなと思っています。
(正確なデータはありませんが)

夢、ありますよね!!

漫画の仕事というやりたいことがやれて、最低でも250万円くらいで生活はできて、スポーツ選手のように年齢制限は厳しくありません。
雑誌やアプリが増えて漫画家は常に不足していて、漫画家になるチャンスは
昔と比べて大幅に増えました。ラノベのコミカライズなどもたくさん増えています。
更にSNSを使ったアフィリエイトやkindleインディーズなどで、出版社を通さずとも個人で稼ぐこともできるようになりました。 

昔よりギャンブルではなくなってきている・・・?
アレ・・・?意外とできそう?

と思ってきませんか?

お金の話まとめ。
・まずは年間いくらで自分が生活できるのか具体化しよう!!!
・不安は具体化して何が問題なのかハッキリさせよう!!
・アシスタントは生活できる!!!
・漫画家、結構夢あるぞ


②夢を目指す気持ちの作り方

さて。お金の問題はある程度解決できたでしょうか。
次はそもそもの夢を目指す気持ちについて考えます。

「漫画家になりたいけど、本当になれるのだろうか」
「なれなかったら・・・・考えたくもない」
「不安だ・・・・サラリーマンになった方が良いんじゃないか」

みたいな悩みが多いのではないでしょうか。

ここでもなるべく問題から目をそらさず、
直視して、具体化していきましょう。

まず、本当になれるかどうか、ですが、それは分かりません。
努力次第、運次第としか言えませんよね。

こういった場合は「最悪の場合」を考えるようにします。

つまり今回は
「漫画家を目指したが、なれなかった」という前提が最悪の場合です。
そして比較対象は
「漫画家を目指さなかった」です。

どっちが良いでしょうか?

ここは真剣に、ゆっくり考えてください。

僕は極端に考えて、
「家と家族をあきらめても漫画家目指したい」
「人はいつかどうせ死ぬ。だったらやりたいことやって死のう」
「親には?親に止められたら絶縁しよう」
「なれなかったら・・・まぁそれはそれだな」
「漫画は年齢関係ないし、ず~っとやってればいつかなれる気もする」
「目指さなかったら一生後悔しそう」
そう考えて、「目指す」に振り切りました。

ここで「友達からどう思われるかな?」「親になんて言えば・・・」
という周りの目が気になったり、責任感のある人は
振りきる努力をするか、1度あきらめてみましょう。
きっとくすぶる気持ちがあれば、戻ってきます。

ちなみにアシスタントになって漫画家を目指した約3年間、たくさんの同じ立場の人に会いました。たくさんの先生にお世話になりました。
第一線で活躍する漫画家さんの原稿に直接触れて感動しました。
先生方の漫画に対する姿勢を見て、心の底から目指したいと思いました。
他のアシスタント仲間が増えて、同じ気持ちを持つ人がたくさん
いることに喜びました。

子供のころ、夢中で読んだ色んな漫画。その先生方にも
会えました。お話できました。
涙が出るほどうれしかったです。
「漫画の世界に僕は今いるぞ。はしっこだけど確かにいるぞ。」と。

そして漫画家としてもがいている今もずっと
漫画家を目指したことを後悔したことは一度もありません。
辛いことがあっても、基本は超楽しいです。
好きなことを仕事にするの、最高です!

ここまで考えるのは極端ですが、極端ゆえに本質だとも思っています。
自分で決めた道を自分で歩くことは気持ちいいですよ!

こういうことを書くと、「生存者バイアスだ!」と言われたりもします。
(つまり、吉谷がそこそこ上手くいったから言えるだけ。大半はうまくいかないということを言われる)

まぁ、それはその通りなんです。

そんなこと言ったら何も挑戦できませんよね。
確率で生きて楽しいですかって話です。

責任とれんのか!と言われたりもしますが
人の人生の責任なんか取れるわけないです。
知りません。それは先生も、親も、友達も、みんなそうです。
自分の人生の責任は全て自分にあります。
(そもそも人生の責任ってなんだよって話です。)

やりたいことがある。それは幸せなことです。尊いことです。

殆どの人間はそこまでやりたいことなんてありません。
やりたいことがあるなら、やって死ねばいいんです。
暗い話でもなく、事実として、なにをやっても
どうせ人はいつか死ぬんですから。

あなたが今、
・漫画を一本描き切る根性があって
・担当編集者がついていたり、小さくても受賞できたりしている。
のであれば、十分、「賭け」に出て良い才能があると私は思います。
そして上記の通り、もし漫画家になれなくても、アシスタントとして食っていけます。
大好きな漫画に携わり、生きていけます。


まとめ
・何か迷いがあれば具体化する
・最悪の状況を考えて比較する
・やりたいことがあるのは珍しいこと。その気持ち大切に。


さて。漫画家を目指す覚悟はできたでしょうか。
気持ちが決まれば、覚悟ができればあとはやるだけです。

「・・・で、何をやったらいいの?」
「精神論ばっかりじゃん!」
「漫画を描けばいいのはわかるけど・・・」
「どんな漫画を描けばいいの?」
「描いても描いてもうまくいかない」

という悩みも次の記事で具体化して潰そうと思います。
お楽しみに!!!

※何か質問、相談があればツイッターのDMやメールに
ご連絡下さればと思います!!
また、作家さんで「こういう例もあるよ!」「これはこうじゃない!?」
などあればコメントやDMで是非よろしくお願いします・・・!
きっと嬉しい志望者の人多いと思いますので!

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