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かなり泥臭い美術史勉強法

はじめに


こんにちは。学芸員志望ヅモです。

恥ずかしながら、高校生まではルネサンスとか印象派の展覧会に半年に1回行く程度でした。しかし大学で2年間美術史を専門に勉強してきて、美術史の勉強の仕方が多少わかってきたような気が。せっかくなので、手探りで色々とやってみたり、先生や先輩にお聞きしたりした中から、初学者向けとして、やってよかった勉強法をご紹介したいです〜

タイトルからお察しな感じですが、学習スタイルとしては、楽しみながらというよりかは勉強勉強な感じなので、あらかじめご承知おきください。

なお、以下に挙げる勉強法①〜⑤は、書いた順に優先順位が高いです。優先順位を気にしつつ、勉強法をいくつか併用しながら学習を進めてみてください。
※勉強法①は大学生向けなので、そうでない方は勉強法②の項目からお読みください。

ではドン!

勉強法① 講義をちゃんと受ける


いきなり正論じゃねえかって感じですね。とはいえ、大学に美術史の講義がある場合に限られてしまいますが。まあやっぱり、深い知識がある人から口頭で教えてもらうことほど、理解が進むことはないような気がしています。

まずは、初っ端の講義5回分くらいは必死に食らいついて、先生の言うことは全部吸収してやるぞという根性で、腱鞘炎になりそうレベルに、ノートをとりましょう。そうすると、意外と先生は基本的な事柄を繰り返し言ってくださっていることに気が付くと思います。その基本的な事柄を覚えることで、結局は早く知識が身につきます。美術史以外でもそうだと思います。地道ながら王道なり。

あと、腱鞘炎になりそうレベルにノートをとっていると、先生にも(なんか泥臭いやつとしてかもしれないが)覚えてもらいやすいです。
(例え泥臭いやつとしてでも)先生に自分の存在を認知してもらえると、疑問点を質問する心理的ハードルがかなり下がり良循環が起きるので、iPad でノートとるのは楽だけど出来ればやめましょう〜

もちろんだけど、ノートは折にふれ見直すのが大切です!わたしはこれが苦手で大抵書きっぱなしですが、そういえば受験勉強を振り返ってみれば、復習こそ命だったじゃないですか…

勉強法② "すぐわかるシリーズ"を読む

"すぐわかるシリーズ"は、東京美術から出版されている美術をやさしく解説してくれるシリーズです。これ、超わかりやすいです。

昔々、わたしには"すぐわかるシリーズ"みたいな、"ほんとは簡単に理解したいよー"っていう読者の心理を見透かしたようなタイトルの本を読みたくない時期がありました。カッコつけなので…

ですがしかし、つべこべ言わず早く読んでおけばよかったと今では後悔しています。フルカラーで語彙もわかりやすい親切な本から読む方が、結果的に理解が早いんです。難しい本は簡単な本を理解してから読みましょう(自分への戒め)

東京美術社が出版している"すぐわかるシリーズ"は多くあるので、パッと目に入って気になったものから、1冊、2冊…と読み進めてみてください。特に興味がある個別のテーマだけでも詳しくなっておくと、「概説書を読もう!」となったときの取っ掛かりになったり、展覧会を見に行ったときに楽しく深く鑑賞できるエリアが増えたりします。

わたしのおすすめは「すぐわかる キリスト教絵画の見かた」です。西洋絵画がかなりキリスト教を前提にして成り立っているからこそ、知っておいて損はないと思います。


勉強法③ 概説書を読む


概説書を読んでいると、時代の流れのなかに作品を位置付けることが徐々に出来ていくと思います。例えば、適当に作品を観ても、「アッこれは室町っぽい」とか「たぶん盛期ルネサンスのころの作品や…!」とかなる感じ。

そもそも論、わたしらが勉強したいのは美術"史"だから、作品を個別に見るだけでは絶対不十分なんですよね。作品は否応なくその時代の流行を反映しています。概説書を読むことで、その厳然たる事実に気付けます。

概説書は、1回読むだけじゃなく、擦り切れるほど読むのが良いと思います。飽きたとかそういう邪心を通り越して、繰り返し繰り返し読む。もはや内容を全部暗記する勢いで。だから概説書に関しては、借りるんじゃなく買った方が良いと思います。

これはもうまったくの自論ですが、作品の美しさを愛でることが美術作品鑑賞の醍醐味で、作品どうしの相互の関係をわかろうとすることが美術史学習の醍醐味と思っています。そのような美術史学習の醍醐味を味わうための第一歩として、概説書は欠かせないと思います。網羅性があるから。

わたしのおすすめの概説書は、美術出版ライブラリーが出している『日本美術史』と『西洋美術史』です。解説を書かれている先生方がお若いのもあって、平易な言葉で書かれています。それに、紙面が洗練されていて開きたくなります。お安くはないけど、盤石な基礎固めやっぱ大事だからと思っていただけたら!

わたしは何度も読んでいたら段々バイブル化してきて、持ち歩かないと落ち着かないから、旅行にも重い辛い言いながら持ち歩いてます。「アレ、あの作品の詳細なんだっけ〜」って思ったらすぐ、辞書的にひいてどんどん汚して使ってます。ガサツも相まってだいぶボロい。でも全部暗記なんてわたしにはまだまだ程遠いので、精進精進。


勉強法④ 常設展を観に行く


大前提として、企画展にも勿論行くのがおすすめです。でも、美術"史"を勉強しようと思ったときには、常設展はかなりおすすめです、ということをお伝えしたくて。

というのも、企画展→全作品に通底しているあるテーマがあり、そのテーマに沿って展示が構成されている、常設展→ある地域の美術"史"を概観できるよう展示が構成されている、という傾向が強いようにわたしが思っているからです。あくまで体感ですが。

それに、常設展って割と空いてますよね。常設展だけを観に行く人は少ないし、企画展は行くんだけど、それプラス常設展を観る気力体力はなくて諦める人がいるから。あと謎に、「企画展は良い作品来てるけど、常設展は多分しょぼいんかな?いつもあるんだし」なんて思われているフシもあるから。コレ、恥ずかしながらわたし自身思ってたことあります…(そもそも常設展も作品の入れ替えが結構ありますよね、ど反省)。

まあそんな昔のわたしみたいな人がいるおかげで(?)常設展は空いており、作品をじっくり観られ、解説をじっくり読めるという訳でございます。だからこそ本当に勉強になります。座学は欠かせないと思いますが、実物を観たときの衝撃は、勉強意欲を加速させてくれるなあとわたしは実感しております…頻繁に行きたいものです…

そんな以上のような事情があり、どこの館の常設展でも学びは多いと思います。しかし敢えておすすめの、国内のかつ美術"史"を広く概観できる館を挙げるのなら、

古代〜前近代の日本美術→東京国立博物館の本館
近代〜現代の日本美術→東京国立近代美術館
広く中国、朝鮮美術→東京国立博物館の東洋館
ルネサンス期〜第二次世界大戦前の西洋美術→国立西洋美術館
現代アート→東京国立近代美術館(系統立っている)、東京都現代美術館(同時代性が強い)

かなとわたしは思っています。超王道の美術館ズはモノをひたすら持っているからです。

分野が細かくなりますが、仏像だったら奈良国立博物館が、仏画や絵巻だったら京都国立博物館が強いと思います。あと、いわゆるホンモノではないけれども、大塚国際美術館は西洋美術史全般の流れを掴むのにかなり効果的な展示がされていると思います。

ご参考までに!しかし本当に、東京って文化大集結地ですよね…

勉強法⑤ 研究書を読んでみる
(まずは図版付きのものから)


まずは図版付きっていうのが割とミソで、初学者に毛が生えた程度で無愛想な研究書を読むと、すぐ挫折するんですよね(経験談)。

だから、少し親切な、母国語で書かれ、図版付きで(カラーだと尚良し)、旧字体じゃなく、そしてフォントも個性的じゃなく、語彙にびっくりもしない、新しめの研究書から読み始めることをおすすめしたいです。

研究書はもちろん初学者向けのものではないから、解説や注意書きなしにいきなり「ナントカって作者のナントカとかいう作品のナントカの場面が〜」って書かれていたりしますが、図版があれば一応「そのことね了解した…」とはなるので。

研究書はまじで高いので借りましょう。"CiNii Research"を使って探します。

まず"CiNii Research"のページを開きます。フリーワードのところに任意の気になるワード(例えば尾形光琳とか)を入れて、"本"を選択してから、検索にかけるといろいろと出てきます。その本の所蔵館などもわかります。送料や手数料がかかるかもしれませんが、図書館によっては本の取り寄せができます。

手に入れた本が難しすぎると思ったら、最低限読みたいところだけを頑張って読んで、すぐに返却するのが良いと思います。「読まなきゃな〜〜でも読みたくないな〜正直意味わかんないからな〜」を脳内でひたすら繰り返すのはすごく不毛なので。そして、今の自分でもギリ読めそうな研究書を探しましょう。わたしはそうしてます。難読研究書は自分の理解度が上がったらまだ読みやすいはずなので、機が熟すのを待つのがきっと吉です。

そうやって自分の無知になんとか耐えながら研究書を読むことで、その研究に対する最新の知識と「自分研究書読めちゃったじゃ〜ん」という自信とを手に入れられ、その後は無愛想な研究書とも多少付き合えるようになります。ホントです。

おわりに

しがない学部生による、泥臭い初学者向け美術史勉強法レクチャーは以上になります。多少面倒くさくはあるし、勉強勉強しているけれど、「難解!ムリ…」とはなりにくいルートなんではと思っています。まあ何にせよ、難易度は徐々に上げていくのが理解への近道なのだと思います。

なお、イコノグラフィー/イコノロジーとか、シニフィアン/シニフィアンとかの概念、わたしは適当にすっ飛ばしてしまいましたが、もし西洋近現代美術を専門にするなら②③④と並行するイメージで、あのあたりも勉強しておいたほうが良いとは思います。

⑤の次は、おそらく一次資料と先行研究の読み込みです。そのような研究>勉強の領域は、わたしが今よりステップアップしたのちに再度詳しく書き記します〜

同志の方、お互い勉強頑張りましょう。

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