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「新モナコウィナー誕生」2022 rd.7 モナコGP F1問わず語り #7(無料)

 モナコGPがF1カレンダーから消えるかもしれないという。契約は今年まで。F1になくてはならない2大要素とは、モナコGP、フェラーリだが、まだモナコGPのないF1というものが想像できないでいる。
 開催者は、開催続行に向けて強気の姿勢を崩していない。でも、その傲慢ともいえる姿勢は、時代についていけず姿を消していくかつての権威の一つの類型にも思え、不安はさらに増していく。

 しかし、わからないことをいつまでも不安がっていても仕様がない。まずは、目の前のテレビ画面に鮮やかに映し出されるコートダジュールに注目しよう。
 私が初めて観たGPがかくいうモナコGPだった。それ以来、何十度観戦しただろうか。しかし、改めてモンテカルロを縫うようにF1マシンが走るさまを眼前にすると、毎年、不思議なことに新鮮な心持と懐かしい感興が渾然一体となり襲い掛かってくる。
 毎年観戦すれば、毎年同じ場所からの映像を楽しめる。どこからの映像がお好みだろうか。プールサイドの高速シケインも良いが、筆者はホームストレートのコントロールライン、今年だと上にタグホイヤーの大きな看板があるところだ。あれを見ると帰ってきたような気持になる。

 はっきり言ってレースとして面白いものはあまりない。退屈ですらある。若手ドライバーのクラッシュがかろうじてわずかなアクセントをつけるものの、大きな変化がなくひたすらラップ数の多いこのレースは、バカンスで訪れたリゾートホテルでの退屈な午後のひと時のように、非日常の中にある退屈を味わえる数少ない、いや唯一のGPと言えるだろう。そう、モナコGPとは、退屈を楽しむものなのだ。
 こんな退屈なGPを残さずしてどうする。マイアミのようなレースばっかりでは、つまらないだろう。

 さて、前段はこのあたりにして、予選とレースを振り返ってみよう。

予選

・渋滞にはまった男

 ディスタンスの短いモンテカルロ市街地コース。20台で争うQ1は当然アレになる。そう、「トラフィックパラダイス」だ。
  残り約3分。名言の主、ユウキツノダがヌービルシケインでクラッシュ。インのバリアにホイールを当ててしまい、赤旗となる。

 余裕のなくなった残り時間、多くのマシンが最終アタックに集中することになる。そしてラスカスで渋滞が発生する。結果、アタックに入れないもの多数。角田を最後に、その後ろを走っていたガスリーはアタックに入れず、Q1敗退となった。好調だっただけに心中察するに余りある。

 ちなみに角田はQ2でノックアウト。速さを見せることはできなかった。

・まさかの幕切れ

 モナコ人ドライバー、ルクレールが最初のアタックで圧倒的なタイムをたたき出す。対してサインツ、ペレスは一歩届かない。フェルスタッペンは二、三歩及ばない。勝負はラストアタック。しかし、まさかの幕切れとなる。

 最終アタックでも快調にコーナーをクリアしていくルクレール。ミラボーを回り込み、地中海ではなく、海の絵でもなく、よくわからん写真と看板を横目にトンネルに向かって加速していく。しかし、何かがあり得ない角度から映り込む。ルクレールの後ろからアタックしていたペレスだ。ミラボーでコントロールを失い、ウォールにヒット。その後ろを走行していたサインツもよけきれず接触。トラックをふさぐ形になる。さりげなくアロンソもミラボーでクラッシュ。赤旗となり、ここでQ3終了となる。
 フェラーリがフロントローを独占。まさかの幕切れではあったが、至極順当な結果となった。

決勝

・雨模様

 決勝レースのスタート時間になっても、雨は弱まらず、スタートが遅れる。トラック上が川になるような降り方の雨。レースはセーフティカー先導で始まった。

・ウォールの似合う男

 彼がやってくれた。セーフティカー先導中に、吸い寄せられるようにウォールに接触。来シーズン、私たちは彼のドライビングを見ることができるのだろうか。

・ガスリー、怒りの追い上げ開始

 ウェットコンディションで始まり、レース前半はだんだんと路面が乾いていく展開になる。そこでギャンブルを仕掛けたのは、予選で悔しい思いをしたガスリー。一足早くインターに履き替え、追い上げを開始する。

 次々に見事なオーバーテイクを披露し、ポジションを上げていく。ガスリーのペースを見た首脳陣は角田にもピットインさせ、インターに履き替えさせる。しかし、これは悪手。角田はペースを上げられず、ポジションをいたずらに落とすだけの結果となってしまった。


・レースを決定付けた判断

 17週目。上位陣から最初にペレスがインターに履き替える。ポジションを5番手に落とすが、ここから驚異的なペースを刻み続ける。結果から言えば、ペレスはここからのレースペースによって優勝を大きく引き寄せた。

 対するフェラーリ。

 トップで順調にギャップを広げていたルクレール。19週目でピットに入る。しかし、これは良くないタイミングだった。確実に乾きつつある路面。ドライへのスイッチも近い。この状況で、ポジションを落としてまでインターに変える必要があったのか。
 そして、3週後。フェラーリ、粘っていたサインツからルクレールのダブルストップ。

 ダブルストップによるロスもあり、ルクレールはここで4番手にポジションを落としてしまう。しかも、この混乱ぶり。

 ライコネンだったら、これでは済まなかっただろう。「こんなことしてたら勝てっこない」。チャンピオンになるチームがすることではない。

・ミックがレースを動かそうとする

 プールサイドでミックが恐ろしいクラッシュに見舞われる。というか、コントロールを失ってクラッシュ。

 「カリオストロの城」の冒頭シーンを思わせるようなマシンの千切れ方。あれだけのダメージを追ってもコックピットは守られるのだから、F1マシンの安全性は相当なものだ。
 マシンが壊れることによって、ミックは守られた。しかし、マシンもパーツもリソースも、数には限りがある。だが、ドライバーの代わりは幾らでもいるのだ。
 ハーフディスタンスにも満たないなか、再び赤旗となり、レース中断。

・3時間レース

 レースは、3時間までのカウントダウンとなった。ここからはいつものモナコ。何かありそうで何も起きないいつものパターンだ。
 しかし、視聴者に笑いを提供してくれたのはアロンソだった。モンテカルロ市街地コースの特性を生かし切り、後ろのハミルトンを引き付けながらタイヤをセーブする。そして、チェッカーに届くと見るや、一気にペースを上げ、ハミルトンを引き離した。世界最高の舞台での高度な嫌がらせは、アロンソにしかできないだろう。

・チェコの涙

 迫るサインツを振り切り、プレスがトップチェッカー。

 表彰台で男泣きにくれたチェコ。彼は、ワールドチャンピオン争いに加わるに足る堂々としたレースをした。今シーズンはフェルスタッペン、ルクレール、ペレスの三つ巴の争いになるかもしれない。

・ちなみに

 モナコGPよりも歴史のあるレース、インディ500の勝者は、「エリクソンにぶつけられた!」でおなじみの、マーカス・エリクソン!良かった。この写真を見ているだけで、筆者はお腹が痛くなりそうだ。

 次戦は、同じ市街地でもモナコGPとはまったく趣の異なるアゼルバイジャンGP。

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