Misskey を含むリアクション絵文字が持つ『リスク』とその緩和策について

本日、Misskeyなどが持つリアクション絵文字に対し、懸念点を指摘していた記事を朝から閲覧していました(現在は記事が取り下げられています)。

取り下げられた元リンク: https://note.com/kmycode/n/n9a2ecc2cf944
取り下げられた理由: https://note.com/kmycode/n/ne778ae570484

この記事を書いている途中で言及先が取り下げられてしまったので、内容については確認しようが無くなってしまったのですが、この方の懸念点の本質を上げると(誤読が無ければ)恐らく次のようになると思います:

  1. リアクション絵文字の悪意ある転用が容易であること

  2. リアクションを付けるのが容易で不適切に利用され得ること

  3. 悪意を容易に可視化でき『炎上』などの攻撃に利用できること

その上で、この三つに対し、現実的な対応策として、何が行なえるか。今回はそう言った事を考えてみたいと思います。


絵文字に対する『意味の簒奪』は防ぎようがない

まず最初に、

1. リアクション絵文字の悪意ある転用が容易であること

については原則として防ぎようがありません。

非常に気分の悪い話ですが、例えばトランスフォビックな連中が、女性のシンボルカラーや恐竜の絵文字、チェッカーフラグの絵文字から意味を簒奪してトランスフォビアの象徴として利用しているケースがあります。

しかし、女性のシンボルカラー本来の意味でも同じことが言えますが、特定の色の組合わせ、特定の絵文字に別の意味を持たせる、と言う行為は、肯定的な意味でも否定的な意味でも、誰もが行なえてしまう行為です。

そのため、こう言った悪意ある『意味の簒奪』を防ごうとなると、そもそも一切の絵文字の利用を許可しない等の行動が必要となりますが、それでも文字列を使った絵文字※も存在するため、正直キリが無い話です。

※ 例えば(−_−)みたいなやつです

よって、こう言った絵文字から意味を簒奪する行為については、各インスタンスに強烈な言論統制を敷くか、連合の許可リスト制、もしくは登録も招待制にする、と言う辺りしか対応しようが無い、と思います。

リアクションの不適切利用は規制しづらい

次に、

2. リアクションを付けるのが容易で不適切に利用され得ること

についてですが、これは連合においてはソフトウェア側である程度の制限が可能だと思います。

なぜかと言えば、常に不適切・不謹慎な意味合いを持つリアクション絵文字は連合へ出さない、もしくは連合においてリアクション絵文字を含む Like は原則として拒むと言う機能は実装可能であるからです。

またこれらの機能を実装する際に、 nodeinfo などから連合ソフトウェア名を抜き出して、特定のソフトウェアから ActivityPub の Like を受けつけない。そう言った事もできるでしょう。

しかし、これは連合によるインスタンス外に対して行える行為であり、インスタンス内では防ぎようがありません。

例えば Misskey.io で使われる、『おやすみすきー』と言うライトグリーンの絵文字は、通常の挨拶であれば無害です。

しかし、誰から亡くなった、あるいはペットを亡くした。そう言う場面で利用するのは不適切である事は明白です。そしてこう言った事への対処は、モデレーターに一任するほかありません。

その他、Mastodon などで行われる通常の Like においても、他者の逝去に Like を付けることは、文脈によっては不適切になり得ます。そしてこれもまた各インスタンスのモデレーションに頼ることになるでしょう。

そのため、リアクション絵文字の不適切利用について、連合外ではある程度の対応は可能だが、インスタンス内での行為についてはモデレーションに頼る以外のすべはない。

その様に考えた方が良い、と私は思います。

リアクションを使った『炎上』対策は上記と同じ

最後の、

悪意を容易に可視化でき『炎上』などの攻撃に利用できること

については、完全に上記(2)と同じことが言えます。

炎上と言う現象は、『真っ当な批判』から始まって『誹謗中傷・罵詈雑言』が不特定多数からたった一人に向けて行われる外道の行いですが、この現象については、リアクションの不適切利用の延長上にある話でもあります。

なぜかと言えば、炎上を更に燃やすために絵文字が利用される、と言う事は、リアクション絵文字の悪意ある利用であり、リアクション絵文字の不適切な利用に他ならないからです。

よってこの場合で取れる対策も、(2)と同じようにリアクション絵文字を含む Like を受けつけないか、インスタンス内ではモデレーションに頼らざるを得ない。そう言う事になると思います。

『楽しい機能』は『性善説』で回っている

正直 Misskey に限らずだとは思いますが、Misskey などが対応しているリアクション絵文字や、例えば商業サービスであるはてな社のはてなスターなども、基本的には性善説で回っています。

なぜかと言えば、これらの機能は『コミュニケーションを楽しむ』ために提供されているためで、『コミュニケーションを楽しむ』と言うことは『コミュニケーションを円滑にする』と言う意味でもあります。

とは言え、そもそもの人が『コミュニケーション』自体に悪意を含めることも出来る以上、『コミュニケーションを円滑にする』と言う機能は『悪意あるコミュニケーション』も『円滑』にします。

よってリアクション絵文字のような、『コミュニケーションを円滑』にする機能を人々の悪意ある利用から守ろうとするならば、最終的には人々のコミュニケーションを破壊する。そうするしか他にすべはありません。

しかし最終的な解法として『コミュニケーションの破壊』を選ぶことは、SNS としての存在意義を根底から破壊する行為でしかなく、この選択は単なる自己矛盾の実行です。

そのため、Misskey を含む Fediverse の利用者・開発者が、こう言った『リアクション絵文字』の不適切利用に対して取れる対策は、なんらかの『緩和処置』のみです。そして、これは根本的に防ぎようがない話でもあります。

よって、リアクション絵文字の不適切な利用に対しては、開発者・利用者・モデレーターも含め、リアクション絵文字機能の撤廃・排除以外に原則として対応する手段はない。

そう言う話であると覚悟を決めるしかない、と私は考えています。

(なんと言うか、渋い話ですね)


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