イタリア版鋼鉄ジーグは変身しないしロボットや怪獣も出ないしポロリもあるけど...

漫画家生活50周年を迎えて、次々と映画化される永井豪作品。アニメは結構評判はいいみたいだけど、その一方でおととしの「キューティハニー」なんかはもう、だれも覚えていないんじゃないかってくらいの流れ星状態。まあ、「シン・ゴジラ」に「この世界の片隅に」「君の名は。」なんて話題作が目白押しだったし、同じ実写化モノにしても「ちはやふる」や「三月のライオン」や「おまグン」があったわけでしょうがないとはいえ、身のまわりでもTLでも何の感想も聞かないのはどうしいたことか。

といって、あの映画がどん底に最悪だったというわけでもないのかもしれないし、何と言っても「シン・ゴジラ」総監督で名をさらに上げた庵野監督にしたって、その昔「キューティハニー」実写化やらかしてたわけだしね。まあ、サトエリ主演でそこそこ話題になったと思うし、ドタバタコメディとしては見れば見られなくはないし、なんたってミッチー王子があんなことやっちゃったしというのはある。それでも永井豪作品の実写化としてはどうよという批判はあるんじゃないか、サトエリ+ハニーであれっぽっちかよ!という怒りはもっともっとあるに違いないのだけど、庵野監督がラッキーだったのはやっぱりほぼ同じ時期に実写版「デビルマン」が公開されてたことではなかろうか。あやもうあれはその、なんだ……とは思う。ただ、庵野版「キューティハニー」はサトエリにとっての代表作とはならないと思うのだけど、実写版「デビルマン」は冨永愛にとっての代表作であることは間違いない!と、これだけは言える。

で、何が言いたいかといえば、永井豪の実写版はマジで鬼門だってこと。たぶん、70年代の「ハレンチ学園」は奇跡だったのかもしれない……のだけけれど、昨年日本でも公開されたされたイタリア版鋼鉄ジーグの「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」はむちゃくちゃ面白かったっす。おいらが見たのはおととしの映画祭でだったけど。

ま、イタリア版ジーグといっても変身するわけではなく、永井豪にリスペクトを込めた作品なんだけど。

主人公はローマ郊外の貧困層ばかりが暮らすエリアで育ったヤサグレ兄ちゃん。職業はかっぱらいとか半グレ組織のつかいっ走り。趣味はAV鑑賞。で、ひょんなことから「神にも悪魔にもなれる力を手に入れてしまった(ここが永井豪作品ぽいところ)ので、とりあえずやってみたのが銀行ATMをぶっ壊してお金を盗むこと。なんか悪魔方面に行きかけてるんだけど、ちょっとしょぼい。ま、そうこうするうちに、地元の半グレ組織からも目をつけられるわけで……。

で、そんな主人公の前に現れるのが、同じ団地に住むチンピラおやじの娘で、「身体は大人、心と頭は子ども」の逆コナンみたいな女の子。彼女から見ると、すごい力を手に入れた主人公は、幼いころからあこがれてきた「鋼鉄ジーグ」の主人公、宙そのものだったわけですね。あ、もちろん永井豪作品と同様、ポロリもあるよ。

ただここで、永井豪作品と違って、いかにもイタリア映画らしいのは、主人公もその彼女も、それから主人公と敵対する半グレも、みんなかつては明るい日の下に出ていこうと思ったのに、抜け出したくても抜け出せない社会のド底辺でもがくことしかできずに荒み切った大人になってしまったというあたり。そんな彼らにとって「神にお悪魔にもなれる力」は、このどん底から抜け出すための手段になるわけで、それをどう使っていくのか……。

というわけで、変身なし、ロボットも怪獣も登場なし、大掛かりなCGもなし、ポロリはあるよの鋼鉄ジーグ。まあ、とっくに公開は終わっちゃったんだが、おもろいでっせ。

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