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一票の格差って何???

 つい先日、参議院議員選挙が実施されました。そこで今回は、国政選挙のたびにニュースで目にする「一票の格差」とはどんな問題なのかについて考えてみようと思います!

1 一票の格差

 一票の格差の議論は、本来同じであるべき一票が持つ一人の議員を当選させるパワーに格差が生じている場合、それは憲法の定める平等主義に反するんじゃない?という議論です。
 この格差は、各選挙区における選挙人の数と選挙される議員の数との比率が異なることによって生じます。
 例えば、有権者数が100人の選挙区(選挙区A)と有権者数が300人の選挙区(選挙区(B))とで当選するのが両方共一人だった場合、選挙区(A)の有権者の1票の持つ議員を当選させるパワーは選挙区(B)の有権者のそれの3倍になっています。同じ一票に、3倍の格差が生じています。

2 選挙権平等の歴史

 日本においても、かつては国民が政治的価値において平等視されることがなく、選挙権についても、種々の制限や差別がありました。それが多年にわたる民主政治の発展過程において次第に撤廃され、今日における平等化の実現をみるに至ったのです。
 その中で一貫して追求されていた理念は、国民は原則として完全に同一視すべきという理念でした。

3 憲法の規定内容

 憲法は、14条1項において、すべて国民は法の下に平等であると定め、一般的な平等原理を明らかにしています。そして、この平等原理の政治領域における適用として、憲法44条但し書が、選挙人資格における差別を禁止しています。
 例えば、一定額以上の納税をしている人だけに選挙人資格を与える選挙制度や、選挙人資格を男性のみに与えて女性に与えないという選挙制度が憲法の平等主義に反することは明らかです。
 もっとも、憲法がその文言上選挙権について規定しているのは選挙人資格における差別の禁止だけです。
 
 しかし、現行憲法の規定が上記2で示した選挙権の平等の原則の歴史的発展の成果の反映であることを考えると、憲法14条1項は、単に選挙人資格に対する制限の撤廃を通して選挙権の拡大を要求するにとどまらず、更に進んで、選挙権の内容の平等、言い換えると、各選挙人の投票の平等、すなわち「各投票が選挙の結果に及ぼす影響力」においても平等であることを要求していると考えざるを得ません。
 そのため、具体的な選挙制度において各選挙人の投票価値に実質的な差異が生じる場合にも、この選挙権の平等の原則との関係で問題が生じることになります。
 例えば、各選挙区における選挙人の数と選挙される議員の数との比率上、各選挙人が自己の選ぶ候補者に投じた一票がそのものを議員として当選させるために寄与する効果に大小が生じる場合もまた、憲法14条1項との関係で問題が生じる場面であるということになります。
 これがいわゆる「一方の格差」と呼ばれる問題です。

4 一票の格差の問題に関連する憲法の規定

憲法14条1項 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
憲法15条1項 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
憲法15条3項 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
憲法44条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。

★憲法の規定は、インターネットで「憲法全文」と検索するとすぐに見つけることができます。

5 一票の格差はどうやって争う???

 次回は、少し視点を変え、一票の格差を是正するためには具体的にはどうしたら良いのかについて深掘りしてみたいと思います。


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