見出し画像

PMFの「その後」ーSaaS企業に必要な成長戦略を考察してみた

こんにちは。
トライバルメディアハウスでマーケティング担当をしている亀井(@kame1da1k1)です。

現在、私はトライバルメディアハウスの教育プログラムの一貫である「Tribal Professional Academy」のチューターをしています。

私たちの代表の池田(@ikedanoriyuki)が通年で講師を努め、経営戦略や競争戦略、財務会計、組織行動論、マーケティング、行動経済学や社会学などの「理論」を学ぶ。課題図書を読み、事前にnote上に「感じたこと」や「学び」に関するアウトプットを行って、当日単語テストを実施し、その後社長を含む場で主に自社を題材に議論を行う。それを隔週で行うといったカリキュラム。

今回は事前課題として、以下の課題図書を読んだ上で、私なりにSaaS企業におけるPMFを迎えたあとにとるべき「成長戦略」とはなにか、を考察してみます。

本書で示されている成長企業のフレームワーク「LEAP」とは

本書では、グローバルで成長している企業が保有している特長を「LEAP」の頭文字で表しています。それぞれの頭文字に2つずつ意味が持たされており、前者は静的な特長、後者は動的な特長であると筆者は述べています。

L:「リーン(Lean)」と「レバレッジ(Leverage)」
→「筋肉質」や「低コスト体質」「無駄のない」といった意味の「リーン」
→「テコの原理」で周りをうまく活用する「レバレッジ」
E:「尖り(Edge)」と「ずらし(Extension)」
→他より圧倒して得意な強みを示す「尖り(Edge)」
→強みという軸を保ちつつそれを他へ応用、変化へ機敏に対応する「ずらし(Extension)」
A:「こだわり(Addictive)」と「適応力(Adaptive)」
→偏執狂のように自身の事業や業種に「こだわる」
→こだわりながらも、世の中の変化に「適応する」
P:「大義(Purpose)と「一歩踏み出す(Pivot)」
→会社として、なぜその事業を行うのかという「大義」
→「大義」を抱きながらも、それを中核に新しい道を探し続け「一歩踏み出す」ということ

とてもざっくりとまとめてしまいましたが、グローバルで成長中の企業を分析した結果、上記LEAPの要素すべてを兼ね備えた企業こそが成長している、というのが本書における筆者の主張です。

成長を続けるSaaS企業

セールスフォースを筆頭に、SmartHR、クラウドサイン、ベルフェイス、カオナビ、freee、ユーザベースなどなど、SaaS企業の成長が著しいです。

私が新卒でIIJに入社した2010年ころから、クラウドコンピューティングやSaaSという言葉が流行しはじめました。上記記事でも示されている通り、この近年になってSaaSの力で爆発的に成長した企業はかなり増えている印象があります。

※2010年ころ、クラウドコンピューティングという言葉ができた頃は、セキュリティの観点で自社のデータを文字通り社外に置くのはどうなんだ、といったことを情報システム部門の方から言われることも多かったのになぁ。Gmailも当時は障害多かったですしね。

また、CRM、SFA、MA、そしてABMやカスタマーサクセス、インサイドセールスなどの概念やそれを支えるマーケティングテクノロジーの普及(そのマーケティングテクノロジーそのものがSaaSであるケースが多いと思います)がSaaS企業の成長を支えています。

テレアポで市場を自身で開拓するのではなく、BtoBでもマーケティングが進化し、効率的に顧客を獲得するためのノウハウが広がりました。

しかし、一度PMFを迎えて爆発的に成長した会社の中で、複数のプロダクトを抱えながら成長曲線を描いている企業はまだまだ少ないと感じています。

これから爆発的にそういった企業も増えていくでしょう。
今回は、「課題図書をもとにして、何が1プロダクトのPMFに成功させたSaaS企業の、『これからの成長戦略』に必要なのか」を考察します。

SaaSのビジネスモデルゆえの強み

SaaSの強みは大きく3つあります。
1つ目は安定した収益と利益基盤があること。
2つ目はオンプレミス(企業毎の個別システム)と異なり、利用者の集合知(利用者が持っている課題や要望、アイディア、ときにはコミュニティでの共創)を活かした機能改善やサポートができること。
そして3つ目にユーザーはその集合知が詰まった最新・高品質のシステムを、自社で作るよりも安価に使用できることなどが挙げられます。

課題図書で述べられている「リーン(筋肉質)」と「レバレッジ(てこの原理)」を両立した姿である「スマートリーン」、すなわち安価で高品質なものを、他社(他者)を巻き込みながら提供する、ということが自ずと実現できると言えます。

成長の方向性

アンゾフの成長マトリクスをもとにすると、SaaS企業の成長の方向性は大きく2つあると思います。

もちろん、どちらか片方しか選べないというわけではありませんが、リソースの限られるベンチャー企業だと、どちらかに研ぎ澄ましたほうがよさそうな気もします。

1)「新市場開拓戦略」
 →既存の製品の改善とアップデートを繰り返しながら、海外も見据えつつ、市場を広げていく
2)「新製品開発戦略」
 →既存のクライアントに、成長中のプロダクトのキャッシュを投下し、ノウハウシナジー、営業シナジーをつぎ込む戦略

(市場浸透は代替サービスの登場や競合の台頭リスク。多角化は1プロダクトで成長した企業のリソース総量を踏まえると、いきなり取るべき戦略ではないと考慮し外しました)

新市場開拓戦略を選んだ際に必要なことはなにか

いかに「エコシステム」を構築できるかということだと思います。

事業の仕入れから販売までの一連の流れにおける各段階で、SaaSプロダクトは価値を発揮します。

その機能ごとに、異なる段階のSaaSプロダクト同士が結合することで生まれるメリットは大きいと考えます。

・営業シナジーが働く
 →お互いの顧客が、お互いの見込み客になる
 →製品選定時に競合排除につながる
・ノウハウシナジーが働く
 →技術的な価値交換や、別市場の土地勘が生まれる

利用者とベンダともに、どちらかを選べば、どちらかのメリットも享受できる状態を生み出すことが1つの成長の鍵ではないでしょうか。

事例を2つご紹介します。

新製品開発戦略を選んだ際に必要なこと

今回の課題図書では、企業が成長企業へと成るためには2つのルートがあると説いています。

1)「品質」にこだわった先に、「変容性」を身につける
2)「機会に飛びつく」ことを繰り返しながら、「品質」を身につける

新製品開発戦略では、既存顧客を営業対象とすることを前提とします。それを踏まえると、新製品を開発する時においては、特に(2)が必要になるのではないかと考えています。

新製品開発戦略をとるときは、営業シナジーを働かせることができます。既存顧客がそのまま新規顧客へと変容し、マーケティング活動で収集したリードは、そのまま新製品の営業対象となります。

そこで質を求めて製品を開発するのではなく、スピード重視でまずはMVP(=Minimum Viable Product)としてどんどん市場に出して開発→検証→改善のサイクルを回すことが望ましいのではないかと思います。

どの戦略を選ぶにおいても重要なこと

私はこれは3つあると思います。

・大義
 →全員に自分たちの存在意義と目的地が浸透していること。新しい市場を拓く。製品を作る。どちらの選択肢でも、「なぜそれを選んだのか」は大義に通じている必要がある。

・シナジーの有無
 →新しい航路に出たとき、これまでの経験や技術を何らかの形で活かすことができるのか。

・組織力
 →組織は戦略に準じます。その戦略を実行できる力はあるのか。推進力はあるのか。

まとめると、上記のようになるのではないかと思っています。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が参加している募集

推薦図書

BtoBマーケティングのプロを目指すため、日々精進しています! ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます! スキくれる方はみんな大スキです(*´ω`*)