社費MBAとキャリア形成

はじめに

前回noteを書いてからあっという間に1年近くが経ったことに焦りを覚え、重い腰を上げて今回のテーマを書いています笑
前回、前々回とMBA1年目の修了時に英語力授業について書いたのですが、今回はだいぶ放置していた「キャリア」について思う事を書いていこうと思います。
特にタイトルにある通り"社費MBAのキャリア"という観点から、MBAをどうに位置づけ、どのように時間の使うとよいかについて書いていこうと思います。
ただし以前のnoteにも書いた通りMBAの目的は人それぞれなので、あくまでも私の個人的な考えです。こんな事を考えてる人もいるんだなぁ、くらいに思っていただければ幸いです。

社費MBAのジレンマ

MBAに興味がある人であれば「社費MBAは人生最大の夏休み」とか「社費MBAは結局すぐに会社を辞める」などという話を耳にしたことがあると思います。実際そういうケースも存在するのでこれらの言葉を否定する気はありませんが、なぜそのような事になっていくのかを私なりの理解で説明していきます。
社費MBAは私費の方々から(金銭的な意味&就活しなくていいという意味で)大変羨ましがられることが多いです。確かに金銭的な面では非常に恵まれていると思いますが、正直必ずしも良いことばかりではありません。
まずMBA受験前に当たり前ですが社内選考を突破しなくてはいけません。各社色々と基準・要件があると思いますが、基本的には、一定の勤続年数(日系は7~10年がボリュームゾーン)があり、社内での評価が高いこと、などが前提で、そのうえで社内向けのエッセイや面接を突破しないと社費MBAの権利をもらえません。そのため自分が本当に行きたいタイミングで行くことが難しくなります。実際私も一度社内選考で落とされた経験があります。
そして受験を出来るタイミングは社内選考を突破した直後の1年間のみです(たまに2年まで許してくれる会社があると聞きますが、基本は1年)。そのため、満足いく結果を残せなかったのでもう1年頑張る、という事が出来ず、志望度の高くない学校に進学しなくてはいけない、ということにもなり得ます。個人的にはこの制約はかなりのプレッシャー&ストレスになりました・・・。
そして渡航のタイミング、住居、家族の帯同に関する制約など、本当に色々な制約がある中で渡航準備を進めていきます。
またMBAが始まった後もインターンシップの制約などがあるため、この点で会社と交渉したり色々なストレスを抱える人も少なくありません。
そしてMBA卒業後は会社に戻るわけですが、もともといた部署に必ず戻らなければならない場合、帰国数か月前に会社の人事部から部署を通達される場合などなど、これも会社によって様々です。帰国後の配属についてMBAを全く考慮されないことも少なくないと聞きます。
これらの制約や不確実性があることから、人によっては「この1or2年間は存分に羽を伸ばそう」とか「会社があまりに事務的で幻滅した」などの感情を抱き、最初に書いたような「社費MBAは人生最大の夏休み」とか「社費MBAは結局すぐに会社を辞める」といわれる所以になっていくのだと思います。

社費MBAとの向き合い方

では「社費MBAのジレンマ」をどのように解消していけばいいのでしょうか?私が特に重要だと思うのは以下の2点です。

  • 専門性の確立とその追及

  • 社内における信頼・裁量の確保

この2つを"MBA留学前"に獲得しておくことが非常に重要だと考えます。
先にも記載した通り、社費MBAの場合はそれなりに長い勤続年数が無いと社内選考を突破できないケースが多いです。そのため、そこまでに仕事を通じて自身の専門性を高めておくこと、そして一定の成果を出しておくことで「こいつならある程度自由にやらせておいても問題ないだろう」という社内的な信頼を得ることで、自身の裁量の幅を可能な限り大きくしておくことが重要です。
この2つがそろっていれば、MBA期間中は資金的な心配もせず、就活に時間を取られることもなく、ひたすら自分の専門領域の幅を広げ深みを増すことに没頭できます。この「専門性」は「今後追いかけたいテーマ」に置き換えてもよいと思います。MBAに行くまでにテーマを見定めておきその探求に時間を費やす、というイメージです。
そして2点目は帰国後に効いてきます(現時点では効いてくるはずと思っているというのが正しいですが)。ある程度の年次で実績があれば帰国後も自身の裁量の範囲でこれまでチャレンジできなかったこと、MBAを経てやってみたいと思ったこと、などにチャレンジすることが出来ます。そして何より社費MBAがあるような所謂JTCは社内リソースが潤沢であるため、そのリソースを使って自分のキャリアゴールの実現を目指せることが大きなメリットだと思っています。正直私がMBA期間中も転職をそこまで本気で検討しなかった一番の理由はこの社内リソースです。MBAで得た知識や経験でこの恵まれたリソースをどう使い倒すか、という事を考え続けています。
しかし正直2点目は現在の私の”目論見”でしかないので、今回は1点目についてもう少し深堀りをしたいと思います。

専門性の重要性

MBAはその内容から専門性を磨く場所というよりジェネラリストを志向する場所という認識があると思います。それはもちろん間違いではありません。MBAで学べるアカデミックな内容については前回記載した「授業編」のnoteをご参照ください。
授業を通じて学べることは記載の通りで、日本で生まれ育った身としてはそれだけでも非常に価値のある事でキャリアに十分プラスになるのですが、そこからさらに「自分独自のキャリア」を深堀りしていくという意味においては、授業外でどの様に時間を使うか、どんな経験をするか、が非常に重要です。
特に社費MBAにおいて重要なのは、"没頭する事を決める"ことだと思います。私費の場合は否が応でも次なるキャリアを決めて職を得ることに集中せざるを得ませんが、社費の場合はその必要がありません(社費で来つつそのまま転職する気でいる方を除く)。そうなると、キャリアという意味で何に時間を使うべきか非常にあいまいになってしまいます。MBAはアカデミック、ソーシャルなどなど色々なイベントが盛りだくさんなので、社費だとしても思ったほど時間に余裕はありません。また社費は年齢的に家族がいることが多いので、これも時間の確保を難しくする大きな要素になります。
そのため私費の方は就活をしつつある程度自分の次のキャリアを考える時間がありますが(強制的に考えなくてはならない)、社費はそうではないので意識的にキャリアについて考えていかないといけません。
またMBAの同級生との会話では必然的に今後のキャリアについての話が多くなるので、自分が何者で何を求めにMBAに来たのかを語る上でも”これ”という専門性やテーマを持っておくとコミュニティの中でも認知されやすくなります。常に「○○に興味がある」と言い続けていると色んな同級生が関連する情報やネットワークをシェアしてくれるので、その観点からも非常に有効です。
そのため、MBAに来る前に一定の専門性を持ちそれを徹底的に広げる・深める、もしくは探求するテーマを決めておいてそのテーマでどの様にキャリアを作っていくかを探求する、という時間の使い方が社費MBAのキャリアに対する一つのアプローチであると考えています。実際に私はこのパターンで、キャリアについては徹底的に自身の専門性を追求していくことに時間を使いました
私もインターンシップに関していくつか制約がありましたが、その制約の範囲内で専門分野の企業でインターンを行ったり、関連する色々なカンファレンスに参加したり、その業界で働くアルムナイや関連する大学のリソース(教授や研究機関)にコンタクトをとりCoffee Chatを依頼したりと、授業外ではこの専門性のさらなる探求に時間を費やしてきました。
そのかいあってか、卒業間近の今は帰国後にやりたいこと、チャレンジしたいことが明確になり、卒業がさみしくありつつも次なる挑戦にワクワクしている部分もあります。
もちろん帰国後は自分の好きな事だけやっていればいいというわけにはいかないと思いますが、ここで重要ポイントの2点目が活きてくると思っています。幸い私のいるコンサル業界はある程度の年次になると、やる事さえやっていれば(仕事を満足に作れれば)誰からも何も言われないことが多いので、その自由さを活用して色々とチャレンジしていくつもりです。このあたりは会社や業界によって性質が異なるかと思いますので、社内の力学を理解し可能な限り留学前に一定程度の裁量を持てるポジションを獲得しておくことが大事であると感じます。(正直他の業界や会社でこの様なアクションがどれほど現実的なのかは定かではありません)

最後に

さて、今回は社費MBAがキャリアという視点から、どのような心づもりでMBAに臨むとよいか、どのような時間の使い方が今後のキャリアの形成において役に立つか、について私見をまとめてみました。
専門領域や気になるテーマの探求については、スクールの立地やどの業界に強いのか、なども非常に重要になるので、私はスクール選びの段階からこの軸を重要視していました。今回はこの点にはあまり触れていませんが、需要がありそうならまた別途まとめたいと思います。

さて、冒頭記載の通り今回の内容はあくまでも私の経験や価値観をもとにした1つの可能性に過ぎません。しかし留学前から社費MBAのキャリア的な位置づけについてはしっかりと検討したうえで、社費MBAの選択肢を取ることをお勧めします。多くの方はMBA期間中の金銭的メリットを中心に社費MBAは恵まれていると感じると思いますが、今回記載の通りMBA在学前後まで考えると正直制約が多く自身のコントロール範疇外のことも多いため、本当に社費でいいのか、をしっかりと考える必要があると思っています。

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