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歌姫2024 ⑩ HYPER GAL

角矢胡桃さんから「7月21日に名古屋でライブをしたい」と連絡があったのは2018年5月だった。

自主制作のファースト・アルバムを聴いていた私が「HYPER GALですか?」と訊くと「HYPER GALです!」と返信があった。当時私が推していた地元の女子大生バンド=ハポン。とのツーマン・ライブを企画し、集客はあまり良くなかったが、ストレンジでエッジの効いた最高のイベントになった。打ち上げは会場近くのサイゼリヤで、HYPER GALは500mlの赤デカンタを二本飲んだ。

ノイズ・パフォーマーの角矢さんと美術家の石田小榛さん。それぞれ最前線で高い評価を受けている二人のデュオ。

角矢さんはドラムセットの中にシンセを持ち込み、フレーズをループさせながら爆音でドラムを叩く。足を上げてスネアをミュートする姿は大胆で色っぽい。ボーカルの石田さんは小柄で声質もキュート。角矢さんから溢れ出るギャル感が石田さんのロリータ性でハイパーになる。

シンセのシークエンスに生ドラム+ボーカルという編成はDAFだ。しかし、石田さんのボーカルはガビ・デルガドのヒステリックなアジテーションとは真逆。ラップともポエトリーリーディングとも違う新しいボーカリゼーションの形。

ミニマムな音数で生まれる爆発的なグルーヴはThis Heatを、ヒリヒリするようなミニマルな展開はにせんねんもんだいを想起させるが、想起するだけでやっぱり全然違う。とにかく新しくてかっこいい。

Melt-Bananaのライブを初めて観たときに感じた「なんだかわからんけどめちゃかっこいい」という衝撃がいちばん近い、と思っていたら、Melt-BananaやZENI GEVAのリリースで知られるシカゴのレーベル=SKiN GRAFTがHYPER GALと契約した。DIYでリリースしていたセカンド・アルバム『pure』も世界に展開され、新作もSKiN GRAFTが制作しディストリビュートするようだ。

「フェスとか出たいですね」「アメリカ行ってみたい」と話していた彼女たちが、世界を驚かせる日が来る。海外のプレスは一斉に「HYPER GALこそ真のオルタネイティブだ」と書くに違いない。


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