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妖怪「ひょうろく」と芸人「白澤直樹」#ひょうろくが出た

あなたは「ひょうろく」を見た事があるだろうか。

「ひょうろく」とは、鹿児島産まれの男である。かつてはコンビで活動していた芸人であるが、現在は解散しピンで活動している。といえるほどのライブ活動も正直しておらず、現在の主な活動はSNSでの発信だ。TikTok、YouTube、Twitterに生息し、いわゆる「歌ってみた」を投稿している。

ただ投稿される動画の奇妙さとクオリティの高さからか徐々にファンが増えていき、ひょうろくは今や「バズり」を見せるコンテンツとなっている。コンビ時代に1000人前後だったTwitterフォロワーは優に11000人を突破した。

また、人気コンビ「さらば青春の光」のYouTubeチャンネルにも何度か出演し、さらばファンの間でも人気キャラクターとなっている。さらば森田氏の紹介もあり、TBSの名物TV番組「水曜日のダウンタウン」にも出演を果たした。

また、事務所の先輩でもあるドドんが主宰するバンド「THE南無ズ」のバックダンサー:小坊主軍団の一員でもある。

私のひょうろくとの出会いは2016年にまで遡る。

当時、ひょうろくは「ジュウジマル」というコンビのボケ、芸名は本名の「白澤直樹」だった。所属していた浅井企画の先輩「流れ星」の全国ツアーやファンクラブイベントでお手伝い・前説をしていた事がきっかけで、ジュウジマルの存在を知った。

初めて話したのは、「新世界」の三重公演で物販をしていたときだったと思う。当時はまた黒いハットを被り、カッコイイ兄ちゃんという印象だった。その1年後に当時のフォロワーさんから教えて頂き、インターネットラジオ「にっぽりぽり×2」(元相方の橋口ひとし、元ジャイアントジャイアンかーしゃ、元オーストラリア杉渕がメンバー)やインターネットラジオ局練馬放送で放送していた「ジュウジマルのきんごきんごラジオ」を聴き始める。かれこれあり2018年頃からはお互いにいわゆる”認知”がある状態になり、2020年にジュウジマルが解散し、色々あり現在に至る。

2017年「星屑伝説」大宮公演。初めてひょうろくとツーショットを撮ってもらっていたらしい
2019年「浅井企画ダイナマイトショー」@高円寺2。この頃は流れ星だけでなくジュウジマル見たさで遠征もたまにするようになっていた。
2020年2月浅井企画事務所ライブ「55NEXT」。つい最近までLINEのアイコンにもしていて頂いていたようである。コロナ禍直前に見られた最後のジュウジマル。

決して古参を名乗れるほど彼らを追いかけていた歴がある訳ではないが、思い入れがとてもあるコンビだった。二人ともとても真面目ででも人間として抜けているところもあり、先輩にもファンにも愛される二人だった。

ここまで軽くではあるが過去のコンビについても触れているのは、私が「ジュウジマル・白澤直樹」から「ジュウジマル・ひょうろく」になり、「ひょうろく」となった過程を知っている人間だったからこそ、今回見てきたライブに対しての思いもひとしおだったからだ。

「ひょうろくが出た!」について

「ひょうろくが出た!」は、作家かーしゃさん主催のお笑いライブ。フライヤーを見れば一目瞭然、東京ライブシーンでは渋くも豪華なメンバーが揃っている。
ライブの内容としては、ネタの合間のどこかでひょうろくが紛れこんでしまう、現れてしまうといった趣旨の企画ライブとなっている。このメンバーを集めてここまで「ひょうろく」ありきなライブが行われるだなんて。発表された時からドキドキが止まらなかった。

集客にも正直驚かされた。会場であるとしま区民センター小ホールの定員は160人らしいが、本当に空席のぞけばほぼ満員といっても過言ではない満員の会場。開場前から30~40人は廊下で待機していたのではないか。開場前に客前を通りすがった虹の黄昏のふたりも「こんなにひょうろくファンが!」ろ驚かれていた。

※ここからはがっつりとネタバレを含みます。アーカイブ配信もあるので見てから読み進めて頂ければ幸いです

各コンビのネタとひょうろくのコラボが凄まじかった件

前置きはここまでにして本編を振り返っていく。ひょうろくが出てくるタイミングは事前にくじ引きで決められており、中々にハードモードなタイミングも中にはあった。

  • ドドん石田さんのMC

ひょうろくからしたら元々浅井企画の先輩でもあり、お坊さんでもある石田さん。妖怪の扱いには熟知している、そんなMCには安心感と安定感があった。「ひょうろくは心優しき妖怪です」と生態の説明もあり良かった。

●や団ー1分後に出てくる

半年前までパワーオブフリーで無料で見れたが今や売れっ子になっているや団。初っ端から完成度の高いコントにひょうろくが紛れ込んでしまって贅沢だった。「余命半年」を宣告された友人(本間さん)のお見舞いにきた男(伊藤さん)に、医者(中嶋さん)が「あと3か月でハゲますね」と宣告するコント。1分後に友人のひとりとして登場したひょうろく。ハゲ宣告に対して激昂する伊藤さんに、本間さんが放った「それひょうろくにも言えるのか!?!?!」のツッコミが最高だった。

●おべんとばこー毎分ひょうろくが出てくる

「鳥肌」というユニットライブでもいっしょだったおべんとばこさん。「マツケンサンバさんのフアンなんです~」と愛を語り続ける漫談の間に1分間に1度出てこないといけないひょうろく。流れに関係なく出てこないといけないので「すみません…絶対いまじゃないですよね…」と言いながらも出てきてしまったひょうろくも良かった。最後のおべんとばこさんの歌に合いの手を入れるひょうろくがおかしくて良かった。

●ロビンソンズー最初からいる

ライブシーンでもよく拝見する機会が多い、いつ見ても面白いベテランコント師。夫婦がマイホームでの生活を妄想するコントに、何故か最初からひょうろくがいるカオスな状況。途中までひょうろくがいるのにまるで見えていないかのように振る舞うロビンソンズ。板付きで困ってるひょうろくが面白かった。コントの最後、実は旦那はもう死んでいて……な空気になったときに心優しき妖怪・ひょうろくが妻(北澤さん)をおどおどしながらも励ます、そこからのオチが素晴らしかった。

もりせいじゅー2分後にでる

浅井企画の中でもひょうろくと仲がいいせいじゅさん。配信だとカットされているが、暗転中にプチトラブルがあったもののそれを全てぶっ飛ばす音ネタ。ひょうろくが出てくるまでかなり時間があったのでそれまで「もりせいじゅワールド」を堪能しまくれた。テキトーすぎるクラブノリひょうろくが面白すぎた。

元祖いちごちゃんー呼んだら出てくる

浅井企画仲間でもあり、ハイパーペロちゃんとひょうろくはキャラクターも似ているのでどうするのか楽しみにしていた元いち。名作コント「景色」、盲目の患者(植村さん)が外の景色を初めて見て感動するシーン、植村さんの一人芝居なんだけど見る度毎回泣いてしまう。感動的シーンから妖怪が現れたギャップが最高なのだが、今回はもう一体妖怪が現れる。「ひょうろくは、ひょうろくだよ。」という謎名言。

ムラムラタムラー2分半後に出てくる

あのりーもこちゃんとひょうろくがコラボする超・貴重な機会。タムラさんの地肩が強いのでひょうろくの謎発言にも対応力があった。ひょうろくをマッサージしてあげながらちょっかいをかけるタムラさん。
ひ「お客様の前でこんなこといいんですか…」
タ「何が!?!?」
ひ「エッチじゃないんですか??」
タ「エッチじゃないわ!!!」
のやりとりが余りにも面白すぎたし、数年ぶりにキスされて「得した気分でした」と言っちゃうひょうろくも面白すぎた。

●スーパーニュウニュウー客席にいる

客席のひょうろくをもっと観察できれば楽しかったと思うが、コントが面白すぎてそちらに見入ってしまった。でも客席からケラケラ笑っている様子が伝わった。スーパーニュウニュウの真骨頂「死オチ」withひょうろくがあまりにも美しく、完璧だった。心優しき妖怪が人を殺めるシーンを生で見られた衝撃が忘れられない。このコントはお笑いライブ史に残してもいいんじゃないかと思ってしまう名シーン。

●村田大樹ーシークレット

出てくるタイミングはひょうろく次第とかいう「シークレット」。村田さんはいつも通り大迫力漫談を披露し、それに怯えて出てこないひょうろく。ただ、出てきたら出てきたで、彼の怖いもの知らずな天然が顔を出し「ネタの最初、何言ってるか分からなかったです」とカウンターを食らわせていた。ひょうろく、というか白澤さんには普段からおっとりとしているくせにたまにど正論をかます節があるのだが、その悪癖がお笑いに昇華されたのは一種の感動だった。

●都トムー音響きっかけで出てくる

無声コント?というのだろうか。中国映画のイメージなんだろうけど雰囲気はトムジェリみたいな。ショートコント~BGM(ひょうろくと都トムでダンス)~ショートコント、の構造。だが、中盤頃から都トムふたりがダンスの時にいなくなってしまい、ひょうろくが取り残されてしまう。どんなときでもひょうろくはシステム上必ず出てこないといけない。「恥ずかしい…」といいながらセクシーダンスを踊り続けるひょうろくが面白かった。

●うちまつげー4分後に出てくる

「赤ん坊を泣きやませる」というテーマの漫才。4分間はシンプルにうちまつげの漫才。ここだけはシンプルにひょうろくのことを忘れ、楽しめる時間だった。最後に丁度良く赤ちゃんとしてひょうろくで現れるが、ひょうろくの特技ボイパも炸裂。あとからこのボイパもアドリブだったと知り驚いた。完成された流れだった……。

●ハンジロウー暗転したら出てくる

暗転する部分をコント中に作り、ひょうろくを「出さないといけない」シチュエーション。コント自体がめちゃくちゃ面白かったが、オチにひょうろくが登場したとき若干空気がふわっとしている。後のかーしゃさんによるアフタートークで真相が聞けてスッキリしたが。

虹の黄昏ー小道具の中にいる

説明不要、地下ライブの帝王・虹の黄昏。とんでもない大御所とひょうろくのコラボ、嬉しかったな。虹の黄昏の世界にも見事に紛れ込んでしまったひょうろく。小道具ってそういうことか!ひょうろくの爆風スランプが面白かったし、途中でマジで「止まってくれ!」と言われてた気がするけど止まらないひょうろくが、ひょうろくなんだよな。「ひょうろくかよ!!!!!」ってツッコミ、余りにもMAXよいしょーだった。大トリにふさわしい完璧なネタでした。

妖怪「ひょうろく」と芸人「白澤直樹」

こんなにも多くの人がひょうろくの挙動・発言のひとつひとつで笑っているライブに来られるなんて、ジュウジマルが解散したときには全く浮かぶことのなかった未来だった。この日のひょうろくは合計で12本ものネタに現れた。もしかしたらコンビで芸人していたときも「芸人」していた一日だったかもしれない、と思うし何よりもこの日のひょうろくは輝いていた。

白澤さんが芸人でいたいと思ってくれている限りは、またどこかで妖怪「ひょうろく」としてライブシーンにも現れてくれるのではないかと信じている。EDにて来月からタイに行くらしいとも言っていた。本当に奇妙で不思議な人間。この奇妙な人間・白澤直樹もといひょうろくの動向に今後も目が離せない。

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