見出し画像

へ、変なゲーム!『恐怖の世界』(記録 2023/10/25)

うん……好きなんだ、伊藤潤二……。

インターネットで伊藤潤二好き好き言ってたら友達から伊藤潤二リスペクトのRPGをもらったので軽くプレイしてみた。

な、なんだこれ……伊藤潤二の変なところを忠実に再現したら出来のいいローグライクになっちゃったRPG……?

えーっと……まず前提として、伊藤潤二ってすっげー漫画家がいるんですよ。私と界隈が近い人だとギャマジで知ってると思う。

このノーンの人 私は持ってない

ものすごく繊細な筆致で美しい女とグロテスクな怪異を描く日本最高峰のホラー漫画家……なんだけど、この人の漫画ってなんか……なんだよ……。

セリフ回しに変にすっとぼけてるところがあるとか登場人物がみんな変に呑気とか怪異が本当に「怪現象」すぎて怖い通り越してシュールになってるとか双一とか双一とか淵さんとかいろいろあるんだけど、最たるところとしてこの人の漫画って人間が妙に強いんだよ。

一応4枚持ってるけどもっぱらUGCの方を使うし、最近はReライフでいいよもう

有名な「うずまき」を例に挙げると、「美しい女の髪の毛が渦を巻き人の心を惹きつける」怪異が発生すれば「相手の美しさを妬んだ女が髪の毛を操ってバトルを始める」だの、「竜巻が町中に発生して人が巻き込まれる」怪異が発生すれば「竜巻を乗りこなした不良グループが街を飛び回る」だの、なんか妙にたくましい人間がやたらと出てくる漫画家。

他の作品にも「首を吊らせようとしてくる人面気球」の攻撃をこう腕をグッとやって防いで会社に行こうとするパパ、糸に絡みつかれる異変に巻き込まれたかと思ったらその糸をスパイダーマンみたいに操って気に入らない女を巻き込もうとした高校生、人のあばら骨を欲しがる怪異が襲ってきたと思ったら突然カットインしてきてそいつをぶちのめして勝って終わる主人公の兄など、妙に強い人間には事欠かない作家となっている。

で、伊藤潤二漫画の妙に強いキャラクターになって妙な怪異から妙に生き残ろう! がコンセプトのゲームがこれ。なんだそれ!?

システムとしてはADVとローグライクを足した、ロジックは簡単だが結構斬新な作りのもの。

5つの事件が発生している街を舞台とし、事件1つを1ステージとして、全ての事件を解決あるいは見なかったことにして街に平和を取り戻すのが目的となっている。何か変なことが発生しても当面の安全を確保できたら「ふうやれやれあれはいったいなんだったのだろう」で話が終わるのも伊藤潤二名物だぞ。

事件の調査のために街を探索していると事件の原因である怪異や全然関係ない怪異が急に襲ってくるので、それらを物理攻撃でぶちのめすのがこのゲームの肝。どんな時でもステーキナイフを信じろ。

レトロゲームリスペクトの部分もあるので演出は非常にしょぼい(だから怖くなくてなんとかプレイできている)んだけど、それでもスコップやバールで怪異を撃退するのには極めて誤った爽快感がある。これは……ホラーゲームじゃないな!?

ローグライクとして見ても骨太で相当良くできてるんだけど、結構運ゲー感が強いかな? 武器の強さがすぐ頭打ちになったりレベルアップの成長曲線があまりになだらかだったりでこちらの強化速度より難易度の上昇速度の方が速いので、ジリ貧にならないようにリソースをマネジメントしていくゲーム。

探索時のランダムイベントに被害を避けられないものが多く、被害を避ける選択肢を通すのも運次第になるので、最後まで通すにはかなり引きに左右される部分がある。「一番マシな選択肢を選ぶのにPSが必要で、それも運で無に帰す可能性がある」と一番ストレスが溜まるタイプの運ゲーを仕掛けてくる。土ウィッチか?

つまり死ぬ時は理不尽に死ぬが、その理不尽さを「そうそう! 伊藤潤二のキャラってこれくらい変な死に方するよ!」とゲラゲラ笑える人なら楽しいゲームに仕上がっている。ファンメイドのゲームかくありきという感じで大変面白い。

だってこのゲーム、ホラーゲームのくせに「このままだと死ぬ戦闘で悪あがきして相打ちに持ってけるモード」があるんだよ? もう怖がらせる文脈じゃなくて伊藤潤二名物・やたら大怪我してるのにやたら強い人をやらせるためのやつだって。

やり込み要素も多く価格もお手頃なのでコスパも良好。人は少し選ぶけどハマれば無限に遊べるスルメゲーム。伊藤潤二が好きだったり、知らなくても変なホラー作品が好きならおすすめ。

あの……あれ、FNaFみたいな世界観なんだけど一人アホ強い男が混ざってるせいで全然怖くない映画あったじゃん。ああいう台無し感が好きな人ならめちゃくちゃ楽しめると思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?