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平成ゲーム業界 哀酷物語 魑魅魍魎編

第1話『誘われて、罠』


平成のある年、なかなかゲームの仕事が無く、探しながらweb関係の仕事をしていた。
そこへ知人が「某メジャーRPGを作ってる会社が企画できてシナリオを書ける人を探してるから、よければ紹介するよ」と声をかけてくれた。
それまでカッチカチに激硬な企業HPのテキストとかを書いていたので、すぐに飛びついた。
「アランゾーン株式会社」
独特な世界観と素晴らしいグラフィック、ハラハラドキドキなシナリオがウケてシリーズ化され、様々なゲームハードで展開し、多くのファンがいる。
メイングラフィッカーは独特なデザイン大人気で、プロデューサーの高田はカリスマプロデューサーと称され多くのファンがいた。
ここで、プロデューサーの名前を書いたのは、お察し通りです。
個人的に独特な世界観なので、果たして自分で出来るかな?と不安だった。
が、実は、他のタイトルだった。
というのも、このメジャータイトル、制作にすごく時間と金がかかる。
制作スタッフも100人以上規模だ。
このメジャータイトルの制作費を稼ぐため、もうひとつの部署があった。
そこは、内部開発ではなく外注を使い、小、中規模タイトルを年間に数タイトル出し、メジャータイトルを支える部署「2B開発部」だった。
なぜ、2Bなのか?野球で言うと2軍の意味だ。
個人的には何軍であろうが、ゲーム製作で金が貰えるなら、
どうでも良かった。

私は、小規模1本、中規模1本のシナリオ制作だった。
2B部部長・咲坂さんは私より一回り上ぐらい、50代前半ぐらいで、
実は、彼が以前いたゲーム会社には私の知り合いがいたり、
外注のソフトハウスも知っているところが多く、気が合った。
咲坂さんは、私がシナリオだけではもったいないということで、
企画修正とディレクションもやってくれないか?と言って来たので、
ギャラが増えるならということでOKした。
が、これが罠だった。
実は2本共、年度内にリリースしなければならないため、企画途中で強引に決めたものだった。
しかも、企画制作するソフトハウスが頭金を貰うと同時に社長が逃げてしまったのだ(計画倒産)。
本来ならば中止案件なのだが、年度内計画に入れてしまっているため、
そして、計画倒産したもののスタッフは宙に浮いたままということもあり、ギリギリの納期で、それなりのクオリティで年度内に発売しなければならないものだった。
宙に浮いたスタッフはアランゾーンが別のビルに部屋を借り、そこに入れ、この2本を作るというところまで決まっていたが、肝心のシナリオ込みの企画とディレクターがいない。
そこで、私が誘われたということだ。
2本のうち小規模のネタはアドベンチャーゲーム(ADV)で原作は良く出来ていた。これなら、なんとかなるだろう。
問題は中規模のRPGだ。ゲームシステム、世界観、キャラ設定が、あきらかにパクリものなのだ。誰がどう見てもパクリだ。
もう、登場するキャラやモンスターの名前が一文字変えたレベルだった。
「咲坂さん、これ、厳しいですよ」
「神春さん、もうね、あなたの好きにやっていいから。ただし、条件があって、年度内売りだから、納期は残り7ヵ月~8ヵ月。制作スタッフと制作費は、これ以上、減っても増やさない。そしてクオリティはBランク。この3つを守ってくれれば何をやってもいいですから」
「いや、その3つが厳しいッスよ。しかも2本ですよ」
「神春さんは別口だから、ギャラ、もうちょっとUpできるし、あと、アシスタントを1人付けます。なんとかお願いします!」
「たぶん、納期も制作費もクリアーできると思います。問題はBランククオリティですよ。ADVの方はなんとかなりそうだけど、RPGの方、これは、キツいですよ」
「実はね、この2本、トップダウンタイトルなんだよ」
「これまた厄介ですね(苦笑)」
「これね、高田さんと社長が決めちゃったタイトルなんですよ。ハッキリ言って、高田さん、騙されちゃたんだね」
「…なるほど」
「ここで、この2本をクリアーすれば僕も上に行けるし、神春さんも、それなりの待遇になりますよ。お願いします!」
金に弱い私は悩んだ。失敗すれば当然、私のせいになるだろう。
「分かりました。ただ、アシスタントを2人にしてください」
「分かりました。お願いします!」
こうして、私は社員となり、この2本を引き受けることになった。

第2話『意外と』

さっそく、2人のアシスタントが付いた。
ひとりは林田という20代後半、高学歴でロジカル思考の男。
もうひとりは若山という林田と同年代の20代後半、細かいところまで気の利く女だった。
実は、この2人、フィーリング重視の咲坂からは理屈が多いと言うことで嫌われていた。
が、決して、私に嫌がらせで付けたのではなく、私が実作業をすることもあり、私は第三者的に管理してくれる人が欲しいと求め、また、今回、私に付いて勉強になればという咲坂の思いで私に付けたのだ。
結果論で言うと、この林田と若山の2人は大正解だった。

次にスタッフ。総勢、31人。
実は結構な技術レベルを持った人たちが集まっていたのだ。
プログラマーもグラフィッカーも優秀だ。
だが、方向性や指示、具体的なイメージがなければ動けない完全な工場系ソフトハウスだった。
例えとしては不適切だが、クリエイターではなくオペレーターだ。
だが、これも実は幸いし、社長が逃げてから約2ヶ月、プログラマーは作業軽減のため様々なツールやライブラリーを作り、グラフィッカーも、様々な素材を描いていたことだった。
つまり、多種多様、そして優良な素材を使ってゲームを作れば良いのだ。
生み出すのではなく作り出す感じで、ゼロからじゃない、
40ぐらいからスタートできる。
だが、スタッフらは不安感でいっぱいだった。
そりゃ、そうだろう。あくまでもアランゾーンの預かり契約だから、タイトル終了後、切られるからだ。
そこで、私は咲坂に「この2本のうち1本でも条件を満たした場合、彼らスタッフ全員の身柄を保障して欲しい」と頼んだ。
咲坂は高田と社長と相談し、結果として、やはり、2本共、条件を満たさなければ約束できないと言ってきた。
「どうせ、俺も失敗すれば切られる身、ならば、ここで意地を見せてやろうじゃないか!」
私はスタッフらに言った。
沈黙するスタッフたち。
私は、再度、スタッフを奮起させるため呼び掛けた。
「…君たちを見捨てた、あの社長を見返してやろうじゃねーか!不安になればなるほど、あの逃げた社長は喜ぶぞ!後悔させてやろう、君たちを見捨てたことを!心配するな、大量の失敗作を作り続けてきた俺が監督するんだから!」
「ダメじゃん!」と、プログラマーの1人が言った。
「そう、ダメなんだよ、だから、君たちが、このダメな監督を救ってくれよ!」
これは、私に付いた2人のアシスタントにも言った。
こうして、作業が始まった。

第3話『明日が見えた』


作業は順調…いや、私のRPGのシナリオが、なかなか進まなかった。
ADNの方は、原作が良かったので、集中すればサクサクと書け、また、グラフィックレベルが高かったので良い具合に進んでいた。
プログラマーも、それまで用意した様々なツールやライブラリを駆使し、
私の脚色したシナリオに合わせシステムを改良し、メリハリのついたゲームになってきた。
問題はRPGだ。ゲームシステムに合わせて、様々な設定を考えなければならない。
ここで見事な活躍をしたのが若山だった。
彼女は、それまで銀行員だった。だが、アランゾーン社のゲームにハマり、プロデューサーの高田に憧れ転職したのだ。だが、前職が銀行員だったため、ずっと事務仕事をやらされていて、実は腐っていたのだ。
最初、彼女は遠慮気味に私に接していた。
ある日、私が設定で悩み苦しんでる時に数十枚のプリントアウトした紙を持ってきた。
「あ、あの…これ、ダメだと思います。でも、ちょっとだけでもと思って…ダメなら私を外してください」
困っていた私は、さっそく読んだ。
多分に有名RPGの影響があるものの、そこは私のエキセントリックスパイスをぶっ掛ければ化学反応を起こし違うものになり、面白いものになる。
実は、彼女、私のアシスタントに付いたその日から、システムを把握し自分で設定を作っていたのだ。
「いけるぞ、これ!」
こうして彼女を中心に設定を作った。
若山は、私のエキセントリックスパイスを時には尖らせ、時には丸くし、
そして、私にエキセントリックスパイスの種類を求め、みずからも融合材を生み出し、納得できる設定が出来た。
咲坂に見せると目を丸くし、高田も驚くほどの出来になった。
さあ、シナリオだ!
だが、ここで問題が起きた。
アシスタントの林田は、私がRPGの方の作業をしている時にADVの進行管理をしているのだが、私のシナリオに数か所の矛盾が見つかったのだ。
急ぎ過ぎた!勢いで書きすぎたのだ。
ここで林田の趣味が活きた。彼は読書家、しかも、普通のレベルではなく洋書まで手を広げ、ミステリー作品、ファンタジー作品で読まなかった本は無いというほどの読書家だ。
彼は私のシナリオの矛盾を見事に処理したのだ。
矛盾を上手く利用し、展開を変えシーンを加え削り、構成し直し、
プレイヤーを惑わす仕掛を作ったのだ。これで、展開の物足りなさもクリアーできた。
私は、この2人に救われたのだ。
いや、他のスタッフも作業再開早々、なんとなく嫌な空気ではあったが、次第に私たちと打ち解け、みな、協力的だった。
RPGの膨大なシナリオを書いている最中、ADVのβ版が出来た。
β版とはすべての要素が入ったもので、残りの作業はデバックと調整だ。
さっそく、咲坂、高田に見せた。
この時点でアランゾーンの要求クオリティハードル、Bランクを得た。
明日が見えたぞ!


第4話『嫉妬!』


さあ、RPGのシナリオだ!
と、この時、ストップがかかった。
咲坂、高田の両者が、このRPGを2A部で引継ぎ作ることになったのだ。
いや、ちょ、ちょっと待って!ここまで来たのに、なぜ?
「神春さん、これは悪気があってのストップじゃないです。ADVの出来がBランククリアーし、このRPGも良い内容になっています。そこで、今いるスタッフは2Aに入ってもらって、そこで作ろうというのが会社の考えなんです」と咲坂が言った。
「…それはそれで良いのですが、私と他のスタッフは?」
「実は、今のADVと神春さんで、来年度用の新規タイトルを作ってもらおうかと。悪い話じゃないでしょ」と高田。
「では、若山さんを2Aに入れてください。彼女の設定のおかげで、ここまで作ることができたんです」と彼女を推した。
「いや、それも神春さんに言おうと思ってて。彼女も一緒に2Aに異動してもらおうかと思ってます」と咲坂が言った。
「いやぁ、彼女に、そんな能力があるとは気づかなかった」と高田が笑った。
のちに分かるのだが、根本的に人を見る目が無いのが高田の特徴だ。
そして、これがのちに大きな事件を起こすことになるのだ。

こうして、アッサリとRPGが私の手から離れた。
年度内発売必須タイトルだったが、来年度タイトルとなった。
その代わり、もう1本、2A部で作ったアクションゲームの納期が早まり、強引に発売された。
会社側の考えも理解できる。RPGは、この会社の看板ジャンルだ。
それなりのクオリティで出す必要があるだろう。
だったら、最初からRPGをやらせなければ良かったのに。
なんだか、トンビに横から盗られた感じだったが、実は、本音を言うとRPGのシナリオは重荷だった。プレッシャーもあった。なかなか進まず苦しかった。
もう少し時間があればと思ったが、会社の判断だ、仕方がない。

RPG制作スタッフは社員になり、若山と一緒に2A部に異動した。
もっとも、場所が無いから作業部屋は、今のままだ。ディレクターは2A部の社員2人が就いた。そして2A部のシナリオ、グラフィックスタッフと共同で制作再開となった。
状況を横で見ていると、これは、トラブルが連発すると予感した。
何かあると、誰が上で誰が下というヒエラルキー論争が起きていたからだ。
ADVスタッフも正式に社員になり、私と一緒に来年度用タイトルの仕込みに入った。2B部唯一の内部制作ラインだ。
それまで休まずだったので、リフレッシュで私は1週間休むことになった。
休み明け、私はスタッフを率いるということで課長代理になった。
上司は部長の咲坂だ。
休み明け、林田から若山が退社するという話を聞いた。
さっそく若山と会って話を聞いた。
懸念していたことが的中した。
2Aの古参スタッフが彼女の設定を無断で変えまくり、追い出したのだ。
そう、気に入らないのだ、彼女が。嫉妬だ。
ゲーム業界に限らず、この嫉妬というのは仕事をするうえで本当に厄介だ。
来年度用タイトル、私は2本作ることになっていた。
1本は今、ADVスタッフと林田でやっている。
もう1本は、実は、こっそりと高田と咲坂から話を聞いていた。
そのマネージャー兼務で若山を2Bに戻そうとした。
だが、彼女は断り、辞める決意が変わらなかった。
「もう、こんな仕事、やりたくない。ゲームは遊ぶのが一番です。もう、踏ん切り付けました」
彼女はそう言うと去って行った。
実は彼女だけじゃなかった。2Aに移ったスタッフらがポロポロと辞めていくのだ。聞けば同じ理由だった。
なんとか私のラインと思ったが、残念ながら私には、そこまでの権限がない。
高田に言っても、彼は第1開発と2Aの兼任部長。昔からいるスタッフを優遇する。
となると、咲坂なのだが、これが、とんでもない問題を起こしたのだ。


第5話『クーデター』


中小のゲームメーカーやソフトハウス、制作スタジオは、スタッフの独立、分裂、社長交代等々、経営、運営に関わる様々なことが起こる。
特に、この時代、ゲームはマネーゲームの駒のひとつだった。
アランゾーン社は様々な投資家の巨額投資によって成り立っている会社だった。
有名RPGをリリースするから、結構、投資が集まる。
詳細は分からない。咲坂は3年前から2人の管理職有志と1社の投資会社と準備し、アランゾーン社長解任、経営権を奪い取り、咲坂は新社長になろうと計画していた。
ちなみに高田は開発担当役員だったが、本クーデターにはまったく無関係。というか、無関心だった。

クーデターは、くだらないミスで失敗に終わった。
咲坂がクーデター要綱のメールを間違えて社長サイドの管理職に送ってしまったのだ。
咲坂らの3年の月日と金が吹っ飛んだ。それだけじゃなかった、クーデター資金のため外注先からキックバックを貰っていたのだ。
当然、咲坂は会社から追い出される。
咲坂は私を呼び出し会社から去ると告げた。
「神春さん、すまんね」
彼は私に頭を下げ言った。
「ゲーム作りってさ、やっぱり金ありきでしょ?だから、僕は、この会社が欲しかったんだよね」
違う、そういう金じゃない。
「個人的に俺は咲坂さんが好きだし、悪い人間じゃないと思ってます。でも…」
咲坂は私が何を言いたいのか分かっていた。
「神春さん、金に色は着いてないんですよ」
「それはそうです。でも、やっぱり、1本でも面白いゲームを作って1本でも多く売れてっていうのが王道だと思うんですよ」
「神春さん、決して、あなたをバカにするつもりはないのを言っておきます。そのうえで言わせてもらうと、そんな青いこと、理想論じゃ、理想のゲームなんて、今、この時代、作れないんですよ。昔と違って、今や億単位、いや、10億単位の制作費がかかるんですよ。マネーゲームで勝たないと今やゲームなんか作れないんですよ。今の、あのバカ社長のように投資家に操られてる経営じゃ、面白いゲームなんか作れないんですよ」
咲坂は次第に語気を強めてきた。
「注目されるのは、あのタイトルのシリーズと、その外伝ばかりじゃないですか!金も時間も人も、全部、あのタイトルが吸い上げてしまう。僕は、この会社に入って7年、ずっと、あのタイトルを支えるためコツコツとゲームを作ってきた。それはあのタイトルのためじゃない!ゲームの事なんか何とも思っていない投資家のためなんかでもない!ゲームを遊ぶ人たちに、たくさんの楽しさを提供するためですよっ、違いますかっ、神春さん!」
咲坂の言っていることは理解できる。投資の対象になってしまったゲーム…
当時、すでにネットで株取引ができる時代だった。
パソコンの前に座る30分だけの株主のために、日夜、悩み苦しみながらゲームを作る…
私は、咲坂に何も言えなかった…
「神春さん、もう、僕と接触しない方がいいと思う。あなたも疑われるから。それでね、もし、この会社で部長になったら、XとYという役員がいるんだけど、この2人は気をつけた方がいいですよ。あいつらはね…」
XとY・・・巨額の金が出入りするアランゾーン、そういう奴らがいても不思議でもない。
咲坂は根っからの悪人ではない。彼もまた、金の亡者に利用され裏切られたのだ。

咲坂は出社禁止となり、社長を含め数人の幹部らが、私と高田に立ち会うよう命じ、咲坂の机の中の隅から隅まで調べ、私物を選り分けた。
翌日、クーデターの首謀者咲坂と参加した管理職らは退社した。
ちなみに、私もクーデターグループの1人として疑惑を持たれ、社長秘書や弁護士、役員らと面談し、その間に私の机の中を調べられた。もちろんシロだ。
あまり気分の良いものじゃなかった。

ADVが発売され、そこそこの評価を得、売り上げも当初の予想より多かった。
成功したのだ。
だが、咲坂のクーデターの件、若山やスタッフの退社など、無邪気に喜べる気持ちにはなれなかった。
高田が話がしたいと彼は私を彼が常駐する特別個室に呼んだ。
そう、カリスマプロデューサーである彼には個室が用意されている。
「神春さん、本音ではあなたに2Bの部長をやって欲しいんだけど、僕はクリエイターとしての神春さんでいて欲しいんですよ。今の、あのチームで面白いゲームを作って欲しいんですよ。だから、希望するなら推薦するけど、部長、どうします?」と高田が聞いて来た。
「私は数字管理とかなんだとかと同時にゲーム製作出来るほど器用じゃないし、ハッキリ言って経営とか向いてないんです。高田さんの言う通り、自分、クリエイターでいたし」
「やはり、そう答えると思いました。2Bの部長となると営業とも折衝しなければならないですからね。それでね、神春さんには課長代理から課長になってもらって、それで、あのチームで新規タイトルを開発してもらうと同時に2Bのスタッフをゲーム製作だけのまとめ役というか相談役をやって欲しいんですよ」
「ああ、それは嬉しいですね。分かりました」
こうして、私は課長職となったのだが、実際は管理職会議とか、経営企画系の会議に出席する回数が増えるぐらいで、他は、変わらなかった。
2Bの部長は社長秘書の1人が暫定的に部長代理となり統括することになった。たぶん、咲坂の息がかかった社員らの監視もあるのだろう。
私にも週報を書くように求めてきたが、全部、林田が代わりにやってくれた。

さて、部長の席が空いたということで2Bの古参社員らがザワザワと騒いでいた。
私が部長をやることになると思ったがそうではなかったからだ。
もう1人、課長がいたが、彼は2Bの社員らから嫌われていた。彼はみずから立候補したが、すぐに様々な怪文書や悪い噂が飛んだ。彼は数日で立候補を取り消した。


第6話『こども』

会社は2B部の部長求人を出した。
ゲーム業界が厳しい時代、そして有名なRPGをリリースする会社ということで、数百の応募があったそうだ。
そこから十人程、書類選考で選んだ。
高田が私を個室に呼んだ。
「神春さん、僕ね、彼が部長に良いと思うんだ」
高田は私にプロフィール表と職務経歴書を渡した。
倒産した元有名ゲームメーカーの男だった。歳は私より上、咲坂と同い年ぐらいか。
赤橋(あかはし)さんはね、昔、ウチが下請けだった頃、彼のメーカーには、いろいろとお世話になったんですよ。その時、彼と知り合ってね。それで、今、彼、仕事が無くて困って、そこでね、私から助け船を出してやろうかと思ってるんですよ」
赤橋…どこかで聞いた名だ。どこだったか。ずいぶんと昔の話だ(と言っても数年前だが)。
ん?経歴書を見ると、ある社名が目に入った。
winタイマー社
過去、winタイマー社には散々な目に遭った。
(詳しくは、拙マガジン、平成ゲーム業界の隅 哀酷物語1~3参照)
嫌な予感がした。辞めた人だから、あのワンマン社長とトラブルがあったのだろうか。
「どうですか?」と高田が聞いて来た。
「すみません、自分、ちょっと分からないです。ただ、調べろと言うなら調べますよ」
「うーん、そうだなぁ、大丈夫だとは思うけど、念のため、調べてくれる?」高田も、何か引っかかっているのか。
「ただ、今回、彼を救ってあげるわけで、彼は僕に恩義があるわけだから、僕に逆らうなんてしないと思うんだよね。彼も親分が誰か分かって入社するはずだし」と高田。
高田は下町っ子だ。義理と人情とか恩義とか、そういうのが好きな男だった。
「いやあ、本音を言うとね、2Bの部長、決まらなかったら僕が兼任になっちゃうんだよ。僕は1開発と2Aで手一杯だし、他の候補も見たんだけど、投資家の息がかかった人とか、もう、そういうのは咲坂さんで勘弁して欲しいし、それでも早く決めなきゃいけないから困っているんだよ。だから、もう、彼に決めちゃいたいんだよ」
「なるほど。高田さん、大変スね」
「そう、大変なんだよ!もうひとつ本音を言うとね、神春さんが2Bの部長になっちゃうと僕と一緒にゲームが作れなくなっちゃうんだよ。あっ、それでね、例の企画、良いねぇ!神春さんの世界観設定、僕の意見、入れてくれる?いいアイデアがあるんだよ」と高田は、先日出した私の企画提案書を机の上に置いた。
「全然、構わないどころか大歓迎ですよ」と答えると、それまで険しい顔をしていた高田の顔が一気に緩んだ。
高田とは同年齢というだけでなく、趣味趣向が合っていた。
お互いSFやホラーが大好きだった。そして、確かに彼のアイデアは面白い。
約2時間、ああでもないこうでもないと新企画の話で盛り上がった。

打ち合わせ後、私とペアを組んでいる林田を呼んで、新しい部長候補の話をした。
彼もまた、ゲーム業界に様々な知り合いがいる。さっそく、内緒で彼に調べてもらうことになった。
私は私で、元winタイマー社の知り合いに聞いた。

最悪だった…
あまり他人のことを言える立場ではないが、私とは違うというか、次元が違う悪さだった。
赤橋はクリエイター系でもなんでもなく、宣伝・営業畑の人間でゲーム製作に口を出しては、内部制作ラインや下請けを潰していた。
根拠のないデマを吹聴し、上司、同僚、部下を辞めさせるのが得意で、winタイマーを辞めた理由は、勤務時間中、出会い系サイトでナンパしまくり(ちなみに、出会い系サイトに書いた赤橋のプロフィールには、当時、有名な某男優に似てますと書いてあった)、彼に遊ばれた女が1人どころか3人も次々と会社に乗り込んできて会社が修羅場になったからだ。
それまで、winタイマー社長の右腕としてやっていたが、さすがに会社が修羅場になると社長も庇いきれず辞めさせざるを得なかった。
だが、今も、winタイマーに顔を出す関係だ。
なるほど…ひょっとしたら、あの時も彼が絡んでいたのかも知れない。
winタイマー社以外の情報も入った。
赤橋が過去在籍していたある中堅メーカー××社の話だ。これは、結構、業界内で話題になった。
赤橋は、××社の企画とスタッフを引き抜き他社へ移ったのだ。
裁判沙汰になるのでは?と噂が飛んだ事件だった。
当時、事件の概要は私の耳に入ってはいたが赤橋という具体的な名前は聞かなかった。
結局、主軸を失ったその中堅メーカーは他社に吸収された。
林田からの情報も酷いものだった。
「中から食いつぶす」「支配欲が強い」「裏工作の赤橋」
林田は強く私に赤橋入社を反対すべきと言ってきた。
マズイな…高田に、どうやって報告しようか…
高田は、赤橋入社に急ぎ動いている情報も入っていた。代理の秘書に伝えるか。
いや、それだと高田と私の関係に溝が出来るかもしれない。
こういうゲーム製作とは関係の無い悩みは、一番、面倒くさいし厄介だ。
そして、高田の腹の中は分かっていた。高田は自分に意見を言う存在が根本的に嫌なのだ。
咲坂と上手くやっていたのは、それが、海谷に油断させるため、高田を利用するための芝居とはいえ、咲坂は高田には逆らわないどころか高田の意見を尊重し負担軽減に動いていたのだ。
高田は悪い人間じゃないが、子供なのだ。
自分の好きな事しかやりたくない。そして自分が絶対なのだ。
そして、コンプレックスも強い。私と趣味の話をしていてもマウントを取ろうとする。私は適当に話を合わせているが、過去、同じようなマウント取り系社員とケンカになり追い出している。
この高田の性格は逆手に取られ、いろんな人間に利用されている。
以前、高田に「ゲーム業界以外の人じゃダメなんですか?」と聞いたことがあった。
その時、高田は「社長も副社長も同じこと言ってくるけどさ、神春さんね、面倒くさいんですよ、他業種の人は」と答えた。
これも彼の腹の中は違う。
彼はゲーム業界の中ではカリスマプロデューサーとして有名だが、他業界では、誰それ?状態なのを知っているのだ。常にカリスマ的存在じゃないと嫌な彼は、自分の事をカリスマ的存在であり敬ってくれる人以外、嫌なのだ。だから部下から、ご機嫌取りされると喜ぶ。
それもまた逆に利用される。
これは私だけじゃなく、咲坂も林田も若山も同じこと思っており、よく私に言ってきた。
咲坂は、高田のそういうところを上手く利用した。これは咲坂が辞める際、私にハッキリと、そして具体的に言った。彼がなぜ、それを私に言ったのかは凡そ分かるが、私は高田とは、そういう関係にはなりたくないと思ったし、高田も私に対し友人的(後輩のような)な存在でいて欲しいと思っていたのは分かっていた。

第7話『入社早々』

トイレで用を足していると、そこに高田が入ってきた。
「あ、神春さん、外で待ってて」
高田がトイレから出てくると、すぐに個室にということで、高田の部屋に入った。
「それで、どうだった?」
「え?」
「ほら、赤橋さんのこと調べたんでしょ?」
「あ、はい。んー、詳しくは聞けなかったのですが、良い話は、なんというか、あんまり、その…」と私は誤魔化した。
「いや、ハッキリ言ってくださいよ」
「あー、まあ、その…」と、極力、オブラートに包んで聞いた話をした。
「…そうか…やっぱり、ちょっと焦げ臭い人か。。。」
「やっぱりということは高田さんも何か聞いたんですか?」
「うん。ウチ(第1開発)の奴らにも聞いたんだけど、あまりというか、まあ、悪い評判ばかりだったんだよね」と高田は寂しそうに言った。
「あの、どうでしょうか?もう少し、秘書の人に暫定部長をやってもらっては」
「それは無理なんだよ。たださ、今回、僕が助ける訳じゃないですか、彼を。だから、やっぱり、彼(赤橋)、僕には逆らわないと思うんだよ」
いや、逆らうとかそういうレベルじゃないと思うのだが…さて、困った。どうやって止めようか。
「あの、高田さん、赤橋さんは営業系の人なんですよね?やはり、外注制作メインとはいえ、2Bは開発だから、営業系の人は、どうかと思いますが」
「それ、ウチ(部下)の奴も言ってたんだよ。それでね、なんとか神春さんが開発系のバックアップをしてくれないかな?」
「え?自分がですが?」
おいおい、勘弁してくれよ。
「うん。神春さんがさ、赤橋さんをバックアップしてくれれば彼も助かると思うんだよ」
「あー、いや、あの、自分、そこまでの余裕があるかどうか」と答えると、あからさまに高田は不機嫌な顔をした。
「あの、高田さん、たぶん、性格的に私と赤橋さんとは考え方とか合わないような気がするんですよ」
「でもさ、部長を決めないと困るんだよね」
高田の顔を見ると、もう、意志が決まっている顔だった。
「あの、やはり、例の“高田さんとの共同企画を進めたいし、もっともっと良いものにしたいので…」と、仕方なく、新規企画を盾にした。
「あー、あれに影響が出るのはマズいな。うん、それはマズい。やはり、彼にバックアップしてもらうか」
彼・・・そう、例の部長に立候補したが怪文書が飛んで辞退した、もう1人の課長だ。
「すみません」と頭を下げると、高田は「いや、あの企画は、僕にとってもセカンドステージに進むために重要だから。あと、何かあったら何でも遠慮しないで僕に相談してください」と締めくくった。
嫌な予感がプンプンした。

ついに赤橋の入社、2B部部長就任が決まった。
就任の挨拶で、赤橋は、さっそく、カマしてしまった。
「僕は前のサキなんとかという恥知らずな人間は大嫌いです。ああいう人間はクズです。キックバックは、まあ、業界の慣例だけど、組織を裏切ることは絶対に許せない!」
高身長でイケメン風、確かに出会い系サイトで某男優に似ていると書いた理由の通りだ。
だが、調べた通り性格に難があるのは、この就任挨拶で分かった。
キックバックが慣例って…
林田も「神春さん、赤橋、マジ、ヤバいですよ。慣例って、自分もキックバックやります宣言じゃないですか」と私に言ってきた。
まったく、その通りだ。

「あれぇ?僕の歓迎会、無いのぉ?」と、入社2日目の朝礼で赤橋が言った。
誰も幹事をやりたがらなかった。
「僕ね、拗ねちゃうよ」と赤橋が笑いながら言った。
みな、沈黙したままだった。2B社員のほとんどが赤橋の噂を知っている。
朝礼は、そこで終わった。
私と林田が別ビルにある開発室に行こうとしたら赤橋が声をかけてきた。
「あ、キミ(林田)、ちょっと先に行っててくれる」と赤橋は林田を追い払った。
「あのさ、神春さん、今日、ちょっと付き合ってくれないかな?」
「今日は、ちょっと都合が悪いんで」と断ると、
「じゃあ、明日。明日の夕方から付き合ってよ」と言ってきた。

翌日の夕方、赤橋は私を連れ、あるデザインスタジオへ向かった。
その際、タクシーだったのだが、「いやぁ、部長になるとタクシー乗り放題だからいいね」と、わざわざ私に言った。
デザインスタジオは家賃が高そうな意識高い系マンションの1室だった。
デザインスタジオの社長が自社のプレゼンを始めた。あまり聞いたことの無いゲームタイトルを紹介し、このゲームはこうだったと私に説明した。正直、私の方向性とは違った意識高い系のタイトルばかりだった。
1時間ほど、説明を聞いた後、社長が食事に行きましょうと誘ってきた。
店はマンション近くのイタ飯屋で、ワインだの聞いたことの無いカタカナばかりの料理名だのを注文し、ワインをガブガブと飲む赤橋と社長は笑いながら話していた。
私はというと、この手は苦手なので、早く時間が過ぎないかと黙ってチビチビとカタカナ料理をつまんでいた。
「あれ?神春さん、飲めないの?」と社長が聞いて来た。
「いや、実は、最近、胃の具合が。今週、医者に行くんで」と誤魔化した。
「神春さん、この会社はね、いい仕事するんですよ!」と酔っぱらった赤橋が言ってきた。
私は適当に誤魔化し返事をした。
ようやく面白くとも美味しくもない時間が終わった。支払い時、赤橋が会社名義の領収書を切ってもらっていたのを見て、その金額の高さから複雑な気持ちになった。
赤橋と社長は次の店に行くと言って私と別れた。

翌日の朝礼時、赤橋が大声で「神春さん、昨日は楽しかったですね!」と声をかけてきた。部内の社員らが一斉に私を見た。私は、苦笑いするしかなかった。
朝礼後、林田が詳細を聞いて来たので、ありのまま話した。
林田が「神春さんを利用しようとしているのかな?」と聞いてきた。
「利用価値なんかねーぞ、俺は」と答えたが、なんとなく分かる。
私は年度内タイトルを2本持っている。そのうち1本は、今、進めている内部制作の企画だ。
もう1本は、実は高田が持ってきたタイトルだった。
赤橋が来る前、人の良い高田は持ち上げられ、高田の知り合いの外注のソフトハウスに内定を出してしまったタイトルだ。
このソフトハウス、社長以下、全員、女性だけのソフトハウスだった。
高田は、極秘に、そのタイトルを何とかして欲しいと私に言ってきた。
テーマは、“美術とは、芸術とは、それらを教えてやる”という超上から目線のもので、ゲームでもなんでもなく、プレイヤーはコントローラーのひとつのボタンを押すだけで、目的も何もない超カルトな企画だった。
それを私が高田の指示で分かりやすいエンターテーメント企画に、そして林田の1本立ちするためのデビュー作にするために悩みながら修正していたのだ。
赤橋は、それを知らない。なので、昨夜、私に紹介したデザインスタジオに私の持つタイトル1本を回したいのだろう。
厄介ごとに巻き込まれる嫌な予感が強くなった。


第8話『電光石火』


管理職やプロデューサーが集まる来年度タイトルの発売計画の打ち合わせの席、あのカルト企画の話を高田が説明した。
「現在、神春さんの方で企画修正しています」と高田が言った。
赤橋は、もの凄い形相で私を…ではなく、先の部長に立候補したが辞退した課長を睨んだ。
課長は俯いていた。
後に分かるのだが、課長は赤橋に来年度以降のタイトルの情報を伝えたが、このカルト企画は秘密裏になっていたので知らなかったのだ。
打ち合わせ後、赤橋が私のところに来て、強い力で私の肩を何度も叩き
「なんだ、決まっていたなら、あの時、言ってくれれば良かったのにぃ!」と私の顔を覗き込むように、そして、顔は笑っても目が笑っていない表情で言った。
「いや、高田さんから、決定したわけじゃないから内緒でって言われたんで」と答えると、
「これからは内緒はダメだよ~。高田さんなんか持ち上げられると気持ち良くなっちゃって、なんでもハイハイって言うんだから。それを止めるのが僕の仕事でもあるんだから」と、今度は私の肩をギュっと握って言った
。高田に関してまさにその通りなのだが、私や赤橋に止める権限はない。

赤橋の動きは早かった。
この会議の後、課長を呼び出し、長時間の説教、そして翌日からネチネチと課長を責め始め、課長が体調不良で休むと、赤橋は課長をクビにすると部内で言いふらした。
赤橋の、この本人がいないところで色々と言うのは彼の得意技だ。
こうして部内から孤立化させるのだ。
気の弱い課長は暗い顔で出社することが増えた。そして、今日もまた赤橋はネチネチと課長をイジメる。
正直、私は、あの課長も、あまり好かない人だったが可哀相になった。
だが、林田が、火の粉が掛かるから余分なことをしないよう言ってきた。
「今、神春さんは、ボクを含めてラインを守る人なんですよ」
そう、2B内唯一の内部制作ラインを守らなければならない。
2B内の社員たちのほとんどが赤橋を警戒していた。一部と書いたのは、やはり腰ぎんちゃくが生まれるもので、数人、赤橋に付いた。
くだらない!こんなことよりもゲームを作ろうよ!と思うのだが…

結局、課長は異動願を会社に出したが受け入れ先が無く、自主退社してしまった。
最終日、課長は私のところに来て「赤橋には気をつけてください」と忠告してきた。
聞くと、今、2B内の社員を1人1人追い出し、赤橋の知り合いを呼び、入れ替えようとしているということだった。
なるほど、それで腰ぎんちゃくが増えたのか…
不安になった林田が「とにかく、このラインだけは死守しましょう」と言ってきたのだが、どう守るか…
赤橋が入社してから、わずか2ヶ月で2B部の社員4名が会社を辞めた。
私の制作ライン以外で15人の社員数が10人になってしまった。
そして、さっそく赤橋の知り合いが2名入社し、内定が4人となった。
3ヵ月、それまで、私には、一切、口を出さない赤橋が不気味だった。
「たぶん、最終目的は神春さんですよ」と林田が言った。
そうだろう。だが、高田の息が掛かる20名近い私のライン、そして、2Bとはいえ独立部隊。さすがに、ここには手を出すことはないだろうと思っていた。だが、暴走する赤橋には関係なかった。

第9話『あちゃー!』


カルト作品の企画を修正が終わったので、ソフトハウスと高田、私(&林田)、営業部長、経営企画部部長、社長秘書と、それぞれの確認の会議がおこなわれることになった。
そこへ、赤橋が「参加したいと」言い出し参加することになった。
「横で黙って見ているだけだから」と赤橋が私に言った。
嫌な予感がした。
会議の趣旨は、高田は私が作ったカルト修正企画にOKを出している。
ここでソフトハウスがその修正案を飲み、「一緒に頑張りましょう!」と共同宣言する会議だ。
だが、実際は、ソフトハウス側と私と林田との数十回の話し合いで、
若干、私の修正案に不服な部分はあるものの、それは制作過程で話し合いましょうということで、ソフトハウスとは了承していた。もちろん、この、裏の場には社長だけでなくディレクターも同席していた。
ようは、今回のこの会議は、営業や経営企画部など経営側に対するアリバイ作りだ。
会議前、林田はソフトハウスの社長に「とにかく丸く収めたいから」「これはセレモニーですから」と伝え、社長も仕事が欲しいから了承していた。

会議が始まった。
ソフトハウス側は社長とディレクター、プログラマーが参加した。もちろん、全員、女性だ。
私と林田のプレゼンは問題なく進み、ソフトハウス側の社長も、こちらの修正案を飲むどころか、これでさらに良いゲームが作れます!と言い、良い雰囲気になった。
ところが、最後の質疑応答の際、赤橋が「本当に、これが作りたいのですか?」とソフトハウスの社長ではなくディレクターに質問した。
直接的なカルト表現を抑え、裏テーマにしたのが私の修正案だ。
ソフトハウスの社長が「まったく問題ない。この修正案は私たちの作りたいものになっている」と答えると、
赤橋は「あなたではなく企画者でありディレクターに聞いている。最初の企画では貴女の芸術に対する強い想いを感じたが、この修正案では、その芸術色が徹底的に抑えられ削られ、誰でも分かる凡庸な企画になっている。こんなレベルで良いのですか?」と再びディレクターに聞いた。
すると、ディレクターの顔が赤くなり「違います。私が作りたいのは、これではありません!」と言ってしまったのだ。
営業部長、経営企画部、秘書室、高田、そして私と林田、ソフトハウスの社長は「え?」となった。
赤橋は「あなたが本当に作りたいのは何ですか?」とディレクターに聞いた。
「私が作りたいのは、最初に出したもので、これではありません!」と言い、美術論、芸術論を語りだし、如何に自分が芸術と美術を企画に込めたかの演説を初めてしまったのだ。
ルノアールやらダリやら前衛舞踏だの何やらを恍惚の表情で語るディレクター。
ついに社長が止めた。
「神春さん、なんかソフトハウス側と違いますね」と赤橋が私に聞いて来た。
私は動じてはならないと自分に言い聞かせた。
「いや、違いませんよ。今、彼女が語った芸術論は、作る過程でバランスを考え取り入れることになっており、それは修正案にも書いていますよ」と答えた。
「そうは思えないなぁ」と赤橋。
すると、興奮しているディレクターが「この修正案では、芸術、美術の高貴さが、まったく入っていません!これでは、ただのゲームです!」と、言ってしまった。
すかさず赤橋が「ですよね」と答えた。
「いや、だからゲームを作るんだよ!」と叫びそうになった。

必死に社長とプログラマーがディレクターの言った事を取り繕っていたが、ハッキリと言い切ってしまったディレクターの言葉の前には、ただの言い訳でしかなかった。
ヤバいと思った高田は「再調整して、もう一度、やりましょう」と強引に打ち切った。
このディレクターのせいで、すべて台無しになってしまった。
営業部長、経営企画部部長が、私と高田、そして、ソフトハウスの社長に「ウチは芸術や美術品を扱う会社じゃないから」と言い残し会議室から出て行った。
赤橋は「やはり、作りたいものを作るのがゲームだからね」と、ゲームと言う単語を強調し会議室から出て行った。
会議室に残った私と高田、林田にソフトハウスの社長が「どうしましょうっ?」と聞いてきた。
どうしましょうと聞かれても、あそこまで、あなたの会社のディレクターが私の修正案を否定したら、もう、どうしようもない。
ディレクターはプログラマーから厳しく叱責されていた。
それでも「芸術が~」と、まだ言っていた。
高田が「神春さん、もう一度、チャレンジしますか?」と、チラっと社長を見て聞いてきた。
「あれ以上の企画修正は厳しいです」と正直に答えた。
すると、ソフトハウスの社長が「ああ、どうしよう」と頭を抱えた。
林田が社長に「あれほど言ったじゃないですか!」と詰め寄った。
「神春さん、やはり、もう一度、チャレンジしましょう」と高田が言ってきた。
「よろしくお願いします」と社長も深々と私に頭を下げた。
だが、そこへプログラマーの制止を振り切ったディレクターが私のところに来て「あんたは芸術が分かっていない!」と言ってきた。
「あなた、大学どこ?私は△△美大、研究のため〇〇芸大の院に進んで云々」と絡んできた。
社長が彼女を止め「すみません、すみません」と何度も私に頭を下げた。

結局、例のカルト企画は営業など経営側から強い拒否反応が出て中止となった。まあ、普通に考えれば、そうだわなぁ、と。
林田のプロデューサーデビュー作品が消えた。
高田は「仕方がない」の一言だった。
私と林田はソフトハウスへ行き、正直に説明した。
社長も「仕方がありません」の一言だった。
あの時の社長の悔しさが出まくっていた顔が忘れられない。
もの凄く美人なのだが、その顔が別人のように、いや、まるで悪魔に憑依されたかのような顔になっていた。
「やはり、もう、会社を整理しようかと思ってます」
ゲーム業界自体も厳しい状況だった。あのカルト作品に勝負を賭けていたのだろう。
「神春さんの修正案を読んで、不安感も無くなって、これでなんとか行けると思ったんですよ。あれだけ彼女には我慢するように言い聞かせたのに…やはり友達同士の会社ってダメですね」と社長が言ってから1ヶ月後、ソフトハウスは解散した。
ちなみに、会議前に裏で赤橋がこのディレクターと接触したとかそういうのは一切ない。赤橋は、ただ難癖を付けたかった、そして分かりやすい罠を仕掛けただけだったのだ。
単純な罠に、個人の芸術だか美術だかの代替え欲求を最優先するディレクターがハマってしまったのだ。


第10話『崩壊』


あのカルトタイトルの件から、私の持ち枠1本が消え、それを赤橋が呼んだ社員が持って行ってしまった。
「神春さん、林田君、もう、要らないよね?」と赤橋が言ってきた。
「いや、内制ラインのアシスタントとして彼を使うつもりです」と言うと、
「それじゃ給料に見合わない。もう、アシスタントでは困るんだよね。彼、総務が向いていると思うんだけど」と赤橋。
やはり、そう来たか。
「先日、高田さんと話し合って規模が大きくなる可能性があるので、アシスタントと言ってもマネージング中心でやってもらうので」と言うと、
「マネージャーだったら、他に該当者がいるから。彼はやっぱり総務だよ。総務は受け入れるって言ってきてるし」と赤橋。
カチンときた。
「勝手に総務に言う前に私に言ってくださいよ。彼の管理者は私なんですから」と言うと、
「君だって、僕に内緒で、企画、進めていたじゃん」
「え?あれは高田さんの指示に従っただけですよ」
「あんな、女の色気に負けた高田さんの、しかも訳の分からない企画なんて成立するはずないのは分かってたんでしょ?」と言ってきた。
さすがに腹が立った。
「そういうのは一切ないですよ!いい加減な事、言わないでくださいよ」と私は語気を強めた。
「神春さんも男だからねぇ、あのソフトハウスに好意を抱くのは分かりますよ」
キレた。
「私は出会い系サイトに登録するほど困ってないから」
赤橋の顔が鬼の形相になった。
「はぁ?何言ってんの?それ、誰に言ってんの?俺に対する名誉棄損だぞ!」
「あなたの方こそ名誉棄損ですよ」と言い返すと、
「キミとは何を話しても無駄なようだな、バカな奴だ」と赤橋は私を睨んだ。
私もにらみ返すと、赤橋はフンと鼻で笑った。

翌週、林田が会社を辞めると言ってきた。
「総務に行くなら辞めます」
彼はゲームが作りたかった。だが、今の赤橋体制では無理なのが分かっていた。
赤橋の腰ぎんちゃくとなれば別だが、彼はそういう人間じゃない。
私は必死になって彼を引き留めた。
マネージメントを一手に引き受けていた彼がいないと、私は企画に集中できない。
「神春さん、引き留めてくれるのは嬉しいけど、赤橋の方が権力を持っているんですよ?」
林田のこの言葉は、その通りだ。
こうなると、高田に訴えるしかない。
さっそく高田と話し合った。
高田は林田が総務に異動するのを知らなかった。なんとか止めて欲しいと訴えた。
「実は、例のカルト企画の件で、営業とか経営企画が僕に不信感を持っているんだよ」
「どういうことですか?」
「今、会社、上手く行ってないんですよ。それで2Bだけじゃなくて2Aも整理する方向の話が出てるんですよ」
え?
「大丈夫ですよ、神春さんのラインは、ちゃんと結果を出したラインだから」
いや、そういう問題じゃない。
「林田がいないと、私、企画に集中できないんですよ」
「それは問題だなぁ。神春さんの、あのラインは成功とまでは言わないけど失敗して欲しくないんだよね」
「だとするなら、余計に林田が必要です」
「…ちょっと考えてみるよ」
結局、高田は動かなかった。

「神春さん、分かりましたよ。最終的には高田さんの首ですよ、赤橋が狙っているのは…」
赤橋は林田に、このまま2Bに残りたいなら協力しろと言ってきた。実際は私と高田のスパイになり、私のラインを壊せというものだった。
それを林田が断ると、総務にすら行かせない、辞めろと言ってきたのだった。
赤橋からクビと言われた林田は、社内の友人、同期らから様々な赤橋情報を得た。
そして、退社の結論を出した。
「神春さん、もう、警戒しようが対抗しようが無理ですよ。ことは赤橋だけの問題じゃないんですよ」
林田は私に様々なことを教えてくれた。
林田は最後に「もう、僕、耐えられないので」と言い会社を去った。

事件は続けて起きる。いや、赤橋は続けて起こす。
「神春さん、神春さんのラインからクレーム来てるんだけど」と赤橋が言ってきた。
え?クレーム?
「彼ら、神春さんが、意見を全然、聞いてくれないって言ってきてるんだけど」
「誰が言っているんですか?」
「それは言えないよ。言ったら、キミ、その人をイジメるでしょ?」
「そんなことしませんよ!」
「ちょっとさ、あのラインも見直すことにしたから」
ついに来たか…

さっそく、高田に相談すると、やはり、そんな見直すなんていう報告は受けていないと答えた。
もう正直に言うしかない。
「高田さん、やっぱり、赤橋さん、ヤバいですよ!」
私は赤橋入社2日目のデザインスタジオの件から何まですべて話した。
高田は沈黙した。
「高田さん、このままじゃ、彼にやられますよ」と言うと、
「でも、赤橋さんは僕に恩義があるから」と高田。
「あの人は、恩義とか仁義とか、そんなの持ってませんよ」
「…最近、営業とつるんでるんだよ、赤橋さん」と高田がポロっと言った。
「今や、2Bの社員の半分以上が赤橋さんが入れた社員です。わずか半年未満でですよ?異常事態ですよ。今のうちに赤橋さん、手を打たないと」
「分かった。神春さんとラインを2Aに組み込む」と高田が提案してきた。
実は、これ、無理なのは分かっていた。
林田と2人で、第1開発、2A、2Bの経費や予算を調べてて、第1開発、2A共に、制作費が増え、もう、予算が無いのだ。
かといって2Bの予算を回せるかというと、赤橋は外注ラインを増やし予算を使い切ろうとしていた。
赤橋は2Bで、短納期、激安の開発費のタイトルを大量に量産させるやり方を進めようとしていた。彼がかつていたwinタイマー社と同じやり方だ。
これは、一時的に売り上げは出るものの、安かろう悪かろうタイトルになり、クオリティやブランドの価値が下がり、在庫の山が出来、結局は自分で自分の首を絞めることになる。
それなりの評価を、そして利益を得るには、やはりある程度のクオリティは必要だ。特にこの会社のブランドイメージは、高クオリティを売りにしている。
赤橋はクオリティよりも量産に舵を切るべきだと営業と経営企画に進言し、ここ数年、経営状態が良くないことから、営業は赤橋の提案に乗ってしまったのだ。

最後、私は社長秘書に訴えるも、わずか1ヶ月で私のラインは解散となってしまい、7割が退社。残りは高田が2Aに編入させた。もっとも数人だが。これが高田が出来る唯一最低限の救済処置だった。
もちろん、私をクビにするという赤橋の言葉が社内中に広がった。


第11話『魑魅魍魎』

私の仕事が無くなった。社内には異動先も無かった。
高田は自身が管理する第1企画と2Aのどちらかに私を入れようとしてくれたが、経営企画部と社長室からの反対で無理だった。高田包囲網は始まっていた。
もう、この会社でゲームを作るのは無理だ。諦めるしかない。
たっぷりと残っていた代休と有休を使い、ボーナスを貰い、私はアランゾーンを辞めた。

退社の日、高田のところへ挨拶に行った。
「高田さん、いろいろとお世話になりました」
「力になれなくて、申し訳なかった」と高田が頭を下げた。
「いや、いろいろと動いてくれたのは知ってるので」
「あのね、神春さん、本音を言うと、僕、営業や経営企画だけじゃなくて、社長からも、散々、叩かれてるんだよ。だから、自分の身を守るのに必死なんだよ」
どうせ最後だ。今まで得た情報を高田にぶちまけることにした。
「今からは、私の妄想、そして独り言です。カリスマプロデューサー高田は、もう、要らないんです、経営側は。あのRPGシリーズで必要なのは高田じゃない。デザイナーだけで十分だと判断したんです。デザイナーとその他がいれば成り立つと思っているんです。だから高額な報酬の高田は不要と判断したんです。経営側は」
高田がギョっとした顔をした。
「そこへ赤橋が来た。高田さんが招き入れたわけです。赤橋は経営側の高田不要論を知った。そこで、強い野心を持った赤橋はチャンス到来ということで、いろいろと動くわけです。2Bをステップに上に行こうと」
「いや、神春さんっ、そういう根拠の無い話は止めてくださいよ!」
「とりあえず、最後まで聞いてください。これは高田さんのためでもあると思っているんです。そして、根拠は無いことにしてください。というのも、誰が言っているんだ?って高田さん、私に聞くから」
「…あのね、神春さん、仮に経営側がそう思っても赤橋なんか彼らの中になんか入れないですよ」と、高田はフっと鼻で笑った。
「そうです。入れないですよ、あの経営グループの中には。でも、赤橋を利用しようとする人は出てくるでしょ、あのグループの誰かは。あのですね、赤橋が連れてきた社員の中には逆に赤橋を利用しようとしている人もいるんですよ。赤橋は高田さんと同じ事を、その社員に言うんですよ。俺がおまえを助けてやったのは分かっているよな?って。ところが、その社員は、なぜか私に、全部、ペラペラと喋るんです。いろんな名前も。もっと面白かったのが、その社員だけでなく、他の、やっぱり赤橋が連れ込んだ社員もペラペラと喋るんです。赤橋さんにはXさんとYさんがバックにいるからって」
XとYの名前を聞いた高田は、さらにギョッとした顔をした。
「なんで、そんなこと、彼らは神春さんに言うのよ?」
「さあ自慢ですかね?それともガセを私に流して高田さんをビビらす予定だったのか」
「ふん、僕はビビらないよ」
「ですよね。でも、XさんとYさんの名前を聞いて思い当たる節、ありませんか?ハッキリ言って、私のラインでタイトル出したかったのは高田さんの第2の居場所と言うか立場作りだったわけでしょ?でも、それはそれで私は、まったく構わなかったんです。高田さんがかつて私に言ったようにクリエイターでいたいだけだから。ゲームを作りたいだけだから」
「うぬぼれですよ、神春さん。そこまで神春さんに期待なんかしてないよ」
「でも、あのRPGのデザイナーチームから高田さんのクレームが出ているのは知ってたでしょ?提案しても否定しまくる高田さんは要らないって言ってたのを」
高田の顔がギョっとした。
「高田さん、赤橋に恩義や仁義とか、そういう言葉なんかないですよ。あの男は、こういう陰謀とか大好きなんですよ。無ければ作ろうとまでする下衆なんですよ。私も甘かったけど、高田さんは、もっと甘いですよ。××社の引き抜き事件、知ってますよね?」
「え?ああ、ずいぶん前、話題になったアレか」
「ええ。あの裏の首謀者、赤橋さんですよ」
「!?」
「私は高田さんとはプロデューサーとディレクターの関係で上手く行くと思ってました。私、高田さんのこと好きなんですよ。それで、最後の忠言です。今すぐ高田さんと懇意な管理職らに声をかけ、高田護衛隊を作り、赤橋対策をすると同時に、デザイナーらに頭を下げ反省した方が良いと思いますよ」
「神春さん、もう、出てってくれ…」
高田は私を彼の個室から追い出した。

私が退社してすぐに2Aと2Bは解散し、赤橋が連れてきた社員を中心に第2開発部となった。無論、赤橋は部長だ。
そして、毎月、数本、同時にソフトが発売された。酷い時は同日に4本もアランゾーンブランドのソフトが発売された。
そう、赤橋が進めた安かろう悪かろうタイトル群だ。
当然、評価は散々なものだった。安く早く作っても売れなければ、どうにもならない。
これで、アランゾーンが一気に傾いた。
社員らが日毎に減っていく。リストラだ。
高田率いる第1開発は有名RPGの納期を縮め、制作陣に鞭が入った。
だが、元々、芸術家気取りの彼らに鞭を入れても嘶くだけで動かない。

さらに安かろう悪かろうタイトルが量産された。
これでは儲かるのは外注のみだ。いや、キックバックを受ける赤橋も、か。
この量産タイトル、数本、遊んだが、酷いものだった。
ようやく、有名RPGが発売された。散々な評価だった。
第1開発にいた友人に聞くと、みな、やる気皆無、それよりも今後どうするかで不安がっていた。中には、制作途中で転職するデザイナーやプログラマーもいた。
会社が大きく傾いた。

1年後、赤橋は責任を取らされ部長解任、ヒラ社員に。そこで退職勧奨を受け、赤橋は不当解雇と訴えた。
赤橋は、和解ということで大金を受け取り会社を辞めた。
高田は株主総会で解任動議が出され賛成多数で会社から追い出された。
アランゾーンも、毎年、ころころといろんな会社に買われ売られを繰り返し、著名RPGも作れなくなり、今や社名しか残っていない。

高田とは、私がアランゾーンから追い出された後、2回、会っている。
1回目は、傭兵募集で行った先のメーカーに高田がいた。高田は、もう1回、一緒にやろうと誘ってくれたが、結局、条件が合わずダメだった。
2回目は、高田が大手メーカーから出資を受けて作った会社だった。
知人の紹介で面接に行った際、高田は他の面接役員と一緒に出てきた。
高田は「相変わらず傭兵稼業なんですね」と笑いながら言ってきた。
結局、高田は私を選ばなかった。いや、選べなかった。
後から聞くと、その会社では彼に決定権なんてものは無かった。
ただの看板としての存在だった。
その会社も、結局、1本も作ることなく消えた。
赤橋は、豊富な自己資金で携帯・スマホゲームの会社を作ったが2年で倒産した。

あの時、もし、咲坂のクーデターが成功していたら、もし、赤橋が来なかったら、会社は、私は、高田は、林田は、どうなっているのだろうか。

今も、ゲーム業界には魑魅魍魎があちこちにいる。特にゲーム業界が斜陽になればなるほど、景気が悪くなればなるほど、魑魅魍魎たちは跋扈する。
もっとも、これはゲーム業界に限ったことではない、か。

おわり

※この作品はフィクションであり、実在する団体、個人とは、いっさい関係ありません。


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