疾走れ、撃て!泥縄資料

この前「疾走れ、撃て!」という私の作品(MF文庫J刊)が全12冊で完結しました。
 まさかヒットするとは思わなかった「あそびにいくヨ!」は碌な資料も作らずにスタートしましたが、この作品は軍隊物ということもあり、色々と最初に設定を作ってからのスタートとなりました。

 とはいえ作品は生き物なので色々変化していきます。
 そうやって付け加え、加筆していった資料が以下の物です。

 最終的には使わなかった設定もあれば、形の変わったものもあります。
 ただ、最初に考えていたのはこういう感じだったということですね。

「疾走れ、撃て!」のファンのかたが、本編との差異を見つけて楽しんでいただければ幸いです。


疾走れ、撃て!(仮)泥縄資料

○世界観設定。

現代社会のパラレルワールド。

ベトナム戦争末期、ベトナム奥地の遺跡から次元の壁を破って現れた巨人族との戦闘が開始。

色々あって何とか彼らを次元の彼方に封印したものの、それは完璧ではなく、いつ破れるか判らない(実際、細かなほころびは幾つか生じており、すぐに塞がるものの、その際に被害が生じることもある……理宇の両親が死んだのはその為)。

結果世界的に皆兵主義が取られるようになり数十年が経過。

同時に封印したときに再び世界に現れた「魔法使い」の研究が進み、その能力の増幅方法、戦略的応用が真剣に議論され、研究されて現代に至る。

日本社会では16歳になると20歳になるまで兵役の義務が生じる(高校~大学一年の年齢に適応)。

兵役が終わった後の進路は自由。

ただし「魔法使い」は基本的に「特殊休暇」を取っているだけ、ということになり、非常時には軍に復帰しなければならない。

それ故に「魔法使い」には幾つかの特権がある。

軍の人事権を個人的範囲で逸脱する許可や、「魔法使い」認定された瞬間から生じる士官クラス待遇など。

また、公式には認められていないが「魔法使い」の魔法をより効率化する「触媒存在」と呼ばれる人間もいる。

別名を「杖」と言い、彼らと一緒に行動することにより、魔法使いはより魔法の威力、集束などを高めることが出来るが、いかなる条件下でそういう存在が生まれるのかは、魔法使いよりも謎が深い故、公式存在とはされていない。

そして、恐らく理宇は「杖」である…………ただし、ふたり、もしくは数名の存在にとって、であるが。

※軍隊における魔法使いとその周辺

通常「魔法使い」は「魔導兵」と呼ばれ士官クラスの能力によって「魔導官」「魔導将」と呼び名が変わるが、それは能力による査定であり、軍隊における地位を補償するものではない。

故に実際には「魔導兵」に指揮される「魔導官」も存在する。

その運用に当たっては直属の護衛小隊が常に周辺をガードし、さらに護衛部隊に率いられた一般兵士による「護衛部隊」がこの指揮下に入る。

通常の人数は四〇人前後。

これらを一括して「魔導戦隊」と呼ぶ。

彼らには最優先に装備、配給が行われるが実戦においては消耗も激しい。

かつては「一週間生き残ったら長老扱い」と言われていた。

今でもこの部隊に配属されることを嫌うのはもはや常識といえる。

(追記:2012/07/23)

また、魔導士官は男女共有の軍服を着用するが、「杖」は通常の軍服である。

田神理宇が「杖」と認められたあたりで、「杖」用の軍服が採用されることになったが、これを着用した理宇がマスコミにもてはやされたことにより「彼の専用服」のイメージがつくことになる。

※数式魔法のシステム

魔法使いが主導権を握る。

頭の中で全てを計算し、意識を集中することで各種魔法陣を展開。

防御、攻撃(属性は木火土金水)、「杖」によって体力と意識集中のための空白領域を増やし、精度と効果をあげることが可能。増幅システムはこれを機械的に補うものであり、増幅装置無しに同じ事は可能であるが、魔法使いの消耗が激しすぎる(場合によっては死亡もありうる)のでこれは厳禁とされている。

また大規模ネットワークで無意識領域を他の魔法使いと共有することで発動する『大規模魔法」もあるが、これは精度に欠けるため、多用こそされるが信頼はされない。

☆首相:日本国首相
小柄でまるまっちい外見。イメージモデルは谷啓(晩年)。
若い頃は空軍パイロット、日本人初のA-10乗り。
柿の種が大好き。陽気な外見に似合わぬ辛辣な人物でもある。現在80歳

☆現役陸軍大臣:溝呂木永世(みぞろぎえいせい)(65歳)長身痩躯、死神のように陰気な顔。首相からは「矢印で出来た顔」と呼ばれるような鋭角な顔立ち。
イメージモデルは天本英世(晩年)
衆院議員、与党の大物ともパイプがつながっている。
陰気な雰囲気でほとんど喋らない。
階級は中将(大将は第二次大戦後、中将の死後の名誉職)
意外な事に子供好き(夫婦に子供は出来なかった)。孤児院をしている妻のもとにいる時はスカルキャップを被って絵本や紙芝居をしてくれる「おじいちゃん先生」でもある。
紫神小隊を巻き込むことに良心の呵責を覚えはするが「この子たちの世代にはそんなことをさせない」為にあえて断行することに。

☆坂田森(さかた・しん)大尉(32歳)

溝呂木の秘書官(大尉)神経質な吸血鬼のような顔。
イメージモデルは岸田森(30代終わりごろ)
溝呂木の腹心で、その気になれば佐官への出世も出来たのに、彼の肩腕として残るために内示を蹴ったという人物。
リヴァーナの「夢見」に頼りすぎる馬上に対する用心から溝呂木に身を寄せているふしもある。
両親は死去しているが、妹と弟がいる。妹は海軍のクォーターの青年と結婚予定。

☆野々山帝夕(ののやま・ていゆう)大佐(25歳)
矢真科ユリネの直属の上司。
イメージキャラは無能なラインハルト(黒髪版)。
よく言えば生真面目で涙もろく、悪く言えば杓子定規な上に情緒不安定。
うたれ弱いエリート。
軍人家系の出だが、婚約者を魔導士官に「杖」として奪われたために(実際には彼女は彼のことは眼中に無かったが)、魔導士官を異様に憎んでいる。
実戦には弱く、銃弾が飛び交う中で流れ弾が近くに炸裂しただけで簡単にゲシュタルト崩壊を起こす。

☆ブレンダ・ジャール・バーキン(肉体年齢二十歳・記録上は四十歳)
イメージモデルは「ガンヘッド」のころのブレンダ・バーキ。
ミヅキの父、アーネスト・華社・スティンレーの元婚約者で海兵隊所属の魔導士官。
92年、福島で見つかった次元断層の入り口から「敵地」を偵察し、情報を持ち帰るための強行部隊に配属される。
一個中隊を投入したこの作戦のため、「敵地」において一週間の過酷な旅に出たが、時間の流れの差から、帰還したときには20年が経過、彼女たちは全員MIA(作戦中行方不明)扱いにされていた。
優しいが、軍務の最中は口の悪いビッチキャラに変貌する。
帰ってきたら何もかも失った彼女はミヅキに対して複雑な感情を抱く。

☆和積伸一郎(わづみ・しんいちろう)
五巳鷹乃の反抗時代からの手下一号で、子犬みたいなけなげ系キャラ。それなりにお調子者だが、臆病なのであまりうまくいってないタイプ。
中学時代、お嬢様学校だった鷹乃の学校の学園祭に友人たちに誘われて行ったとき、彼女は舞台劇でハムレットを演じていた。
凛とした姿で、髑髏と語り、狂気と正気の狭間をさまよい、何もかも失うシェイクスピア屈指の悲劇の主人公を、彼女は中学生とは思えないほどの演技力で見せた。
そして、少年は魅せられた。
だから徴兵検査を終えて、バスに乗ったとき、彼女を見かけた伸一郎は「これが運命だ」という天啓を得た。
たとえ何があろうとも、この人と一緒にいく、と。
どこへ、とか何故、という考えはぽかんとすっぽ抜けていた。
彼女の行く所ならどこでもいいし、何故かは彼女が知っていればいい。
偶然は彼に沙羅に味方してくれて、今、同じ班で、彼女の(いちおうの、と上につくが)右腕としての日々を送っている。 という事情で鷹乃に一目惚れしているが言い出せないまま、鷹乃は理宇に恋してしまう。
そのことが一方通行の一目惚れであることにもすぐ気づく。なぜなら彼もそうだからだ。
実家は平凡なサラリーマン。

☆穂積太一郎(ほづみ・たいちろう)
理宇たちの移動する際使うトレーラーの専属ドライバー。ナイフで削いだような細身の外見。
実家が運送業で、子供の頃から車を転がすのは日課だった(ただし駐車場内に限る)。
一家そろって犬が好きで数匹飼っていたので、彼もイヌ好き。ヤンキーファッションで目つきが悪いのは、実は遠視で、近くは目をこらさないと見られないからである。
実際には細かい気配りと優しい性格。
矢真科ユリネのことは理宇たちを美ヶ原で救出したあたりで一目置いている。

■軍関係部隊名称

●埼玉七四九中隊
第七次関東防衛戦における最大の功績をあげた部隊。
指揮官は長月少佐。
☆副官は三津浦少尉(顔に大きな傷あり、女好き)
☆折原伍長
伊達とは知り合い。

●富士山監視団
富士山にある日本最大規模、本数の導柱を監視するための観測および防衛基地。小室浅間神社を囲むように建設されている。「お祭り」当日の朝は、ここでお祓いを受けるのが司令官のならいである
現在の司令官は黒田敏夫准将

☆黒田敏夫(くろだとしお)
准将 富士山監視団の司令官。
イメージモデルは黒沢年雄。
大病を患い、この仕事が己の最後の任務だと覚悟している。

●リヴァーナの正体とその目的
本来はダイダラを操る「基礎存在」が生み出した斥候プログラム実体。だが日本初の魔導士官、五代猛の特殊能力「未来介入」によりいくつかの手順を「偶然」省いたために、味方となるべく生まれた。
彼女こそが理宇と並ぶ「轟雷」を使った「最終決戦計画」の要である。
ミヅキと虎紅が彼女と接続されることで、「破壊の剣」を生みだし、無限増殖と進化を繰り広げる「基礎存在」を撃破することが可能になる。(シューティングゲームで言うところの不可避の強力ボム、もしくは無双時間発生装置)役割的には理宇の、ではなく、その動力源になる虎紅やミヅキのブースター。そしてアメリカ本国に移動してからは「クィーン」へのハッキングを可能とする唯一の存在となり、田神理宇と五巳鷹乃を次元転移の罠から救い、その存在を隠し続けた。

●リヴァーナの経歴
四年前にあった「第四次関東大侵攻」のさい、千葉の県境のクレーター側から発見された(実際にはクレーターの原因は異次元転移の際に使用した不安定な導柱の爆発によるもの)。
彼女自身は言語以外の記憶を消去され(実際には入力できるデータがそれしか無かったため、そう見えた)、壱岐原盾香(当時少尉)に救助された。
名前は盾香が学兵時代に好きだった、七〇年代のフィンランドの歌手、天才だったが「ダイダラ」侵攻による攻撃に巻き込まれて夭折した天才、ヴァーナ・ソルカミナヤ(架空)から取った。

☆壱岐原盾香(いきはら・たてか)27歳
イメージは「デッドマン・アンダーワールド」の刑務官の人。陸軍広報部芸能課所属。一気にまくし立てるときの凄さから別名「スターリンオルガンの盾香」の異名を持つ。
階級は中佐(大尉から、リヴァーナ発掘の労をねぎらう&各部署に無理を通させるための昇進)。
全裸で戦場に倒れていたリヴァーナを救出し、さらにその才能を見いだした人物。
二年前に芸能課の設立を首をかけて進言し、現在はリヴァーナのマネージャーであり、芸能部の最高指揮官。
昔初年兵の頃、矢真科ユリネと同じ部隊に居て、互いの渾名をつけあった喧嘩仲間。
だが、ユリネがその後所属された部隊が壊滅したと聞いていたので、最近まで彼女は死んだとばかり思い込んでいた。

●リヴァーナの失敗による「ダイダラ」側の対応
情報収集に当たらせるはずだったリヴァーナの喪失(過去からの介入による)によって、方針を転換、等身大ダイダラの投入による断片的な文字、印刷情報の収集に切り替えた。
これによりリヴァーナの「魔導ブースター」としての能力を特化させ、かつ司令塔&交渉可能(と思わせる)インターフェイスとしての「女王(Q:クィーンと本編では呼称)」を製造。陣頭指揮を執らせる。
彼女は七巻で堂々と姿を見せ、そのことが彼女をラスボスと世間に誤認させ、また交渉可能な相手ではないか、という期待を抱かせ、世界の対応を四分五裂させていく。

●三大魔法使い
日本国内におけるクラスA以上の能力を持つ陸軍魔導士官のこと。所在はそれぞれ北海道、関東、九州。

☆雉安有人(きじやす・ありひと)
大佐。本編には名前のみ登場。
プライドの高い傲慢な人物。「杖」は美少女だが奴隷扱い。
本編に搭乗前「杖」に見限られて戦場で死ぬ。
九州防衛の要であった。

☆那積雪乃(なずみ・ゆきの)
大佐、北海道防衛の要。
沈着冷静で名前をもじって「雪の女王」の異名を持つ。
同性愛者であり「杖」も女性である。

☆蓮高青葉(はすたか・あおば)
中佐、関東防衛の要、男性である。
大規模魔法陣を一人で構築できるほどの能力を持つが、体調不良で現在治療中(世間には知らされておらず極秘事項扱い)。

●関東四大魔法使い(グレートフォース)
関東におけるクラスAの陸軍魔導士官。メンツは以下の通り

☆内藤時雨(ないとうしぐれ)
虎紅の親友。階級は中佐
幼なじみが「杖」になった故に出世が早く、この位置に来た。虎紅の前ではお姉さんだが、本人はぽややん。
ドコでもコケる能力は虎紅同様。

☆台下柳太郎(だいかりゅうたろう)
時雨の副官で中尉。耳目秀麗な美少年。時雨とは幼なじみ。丁寧語で喋る。

☆雛安堵真澄(たかなし・ますみ)
「四大魔法使い」と呼ばれる魔女のひとり。西日本防衛の要と言われている。

☆差浦雄一(さうら・ゆういち)
「四大魔法使い」のひとり。「杖」である恋人を失い、その骨で作った「杖」を使っていると言われている。
美形でファンクラブまである。

☆鯛鞍巴(たいのくら・ともえ)
「四大魔法使い」の中でも最も強大と言われる「女王」。

○装備

☆八十四式装甲服
通称「ヨロイ」。射撃ポーズや手足を丸める防御姿勢を取ると装甲同士がロックされて最適なポーズと強度を得ることが出来る優れものだが、着脱が面倒でそこが特に女性に不評。
現在その辺も含めて容易な90式が開発中。

☆ライフル
叶式自動小銃(カノウ・アサルトライフル)。
装弾数30発。M14の改良型。この世界ではベトコン相手の戦闘よりも対ダイダラ戦が優先されることになったため、5.56ミリ弾はメジャーでは無い。

海軍はカービンタイプを主に使用。

☆数式戦車
九六式数式戦車が主流。オーソドックスな砲塔の部分に電算システムを搭載したタイプ。

☆「轟雷」
可変型数式戦車。次世代MBT計画の一環として作られているが、実際には田神理宇に与えるための専用機体。

●陸軍の階級(学兵)

二等兵

一等兵(上等兵兼ねる)

兵長

伍長

軍曹

曹長

少尉

中尉

大尉

少佐

中佐

大佐(ここまでが学兵も魔導士官も打ち止め)

上級曹長だの何だのと言う細かい階級は「職業軍人」になったときのみに適応される。

ある意味出世しにくくなる反面、不祥事のさいは「滑り止め」として認識されている場合も多い。

なお階級自体は現在のアメリカ陸軍に準じる

●軍事衛星

現在日本陸軍が所有しているのは4つ
最新は「のぎ」「おおむら」
空軍は「さかい」
最も古いモノは海軍管理の「ひらが」

●空軍
主力は「飛行機で数式の『刃』で叩き斬る」戦法と、「上空から叩きつぶす」急降下戦法。戦闘中に大規模魔法陣を展開する高度な操縦テクニックを保有しているのは国内では「フォーリン・エンジェルス」「スラッシュダイバー」の二部隊のみ。でF35ライトニングⅡを改良した専用機を与えられている。
魔導士官の損耗率は三軍一(過酷な運用環境で健康を損ねる&撃墜が即死亡につながるため)また西日本にはA-10を主力として「面」の数式を盾に操って敵を掃討する戦法を持つ飛行隊「ブラスト・タイガース」が存在する(当然機体は黄色と黒)。

●海軍
向坂竜一中将がトップ。
太刀風准将は末席に位置する。
米軍のキティホークを買い取って改良した「ふげん」を航空母艦として中心に編成。「ふげん」と「きりしま」にはレールガンが搭載されている。

新造艦
イージス巡洋艦として「うんぜん」「がっさん」が就航、あと五隻が就航間近。またヘリ空母「だざい」も存在。
水面下では潜水艦そうりゅう型「うつほ」「りうぐう」など、存在するが原子力潜水艦は今のところ二隻。
 室戸沖には海軍の防衛用海上プラットホーム「そこわだつみ」「うわつ」「なかつ」が存在し、沖縄にも同様の防衛用プラットホーム「しゅり」「まきし」「おろく」、北海道には大型要塞とも言われる「あさひかわ」と「かむい」が存在する。
 また、水中における数式戦車としてMJ計画を推進。メイン母艦として「ふげん」回収用潜水艦としてSEALシステムを搭載した「はるはら」がある。

●「ダイダラ」の元が来る異次元設定

理宇たちの居る世界の1042倍の速度で時間が流れている。2時間が2ヶ月以上の設定。
故に向こう側からすると恐ろしい勢いで進化していることになる

●等身大ダイダラ(グール)
捕獲した人類、あるいはその死体や装備から再生された人間大のダイダラ。当初は「等身大ダイダラ」と呼ばれていたが通常のダイダラと混同されやすい為、「餓鬼(グール)」のコードネームを与えられる。武器の操れるゾンビというところか。
肉体的にはすでに死んでいるため、高高度から落とされたり、海の中を歩いて渡ったり等、死霊兵士そのものの扱い。

●今後の展開
7巻:ブレンダの情報の分析が進む。ブレンダはすべてを一週間で失ったことによりショックを受ける。ミヅキは彼女になんと声をかけていいか判らない。
いっぽう理宇は「関東とリヴァーナを救った英雄」として世間の注目を浴びる。戸惑い、プレッシャーを感じて体調まで悪くする理宇。
看病に絡むドタバタ(コメディパート)
それに伴い、理宇をこちら側に引き入れようとする溝呂木の暗躍が始まり、伊達と夏華は彼らを守る為に奔走する。
同時に「重要人物」を暗殺すべく進化した等身大ダイダラが投入され、町中で理宇たちは戦車無しで戦うハメに。
何とか迎撃するが、理宇はショックで壊れそうになる。そんな少年を抱きしめる虎紅。
クィーンの登場。
自らを核攻撃したことで破壊され切った筈のアメリカ大陸中央に「ダイダラ」たちの前線基地が出現。それに伴う放射能の消滅に、世界は「交渉可能では無いか」という期待を抱く。「我々は『K』。偉大なる『K』とその端末である」
また、その顔立ちがリヴァーナそっくりだったために、陸軍の溝呂木はリヴァーナを拘束。
ミヅキは理宇が「怖く」なったことに気づき不安になる。

8巻:交渉可能では無いか、という期待が世界を駆け巡る。戦いに疲弊した人々は初めて「戦いの終わり」という光明を得て喜び、経済は皮肉にも回復を始める。
首相すら味方につかなくなったため、孤立する馬上。だが彼は自分の部下の予言とそれのもたらす意味を信じ、クィーンの存在がこちら側の攪乱を意図したモノだと見抜く。
海軍の太刀風もそれに賛同。
徹底抗戦したい側としても、交渉したい側にとっても理宇がキーポイントになる。
あげく、軽率な双方の陣営の跳ねっ返りの為、味方から襲撃される理宇。
自分でも驚くほどの冷徹さでそれを迎撃してしまう理宇。かろうじて人を殺さなかったのは、ミヅキが身を呈してそれを阻止したからだ。
理宇をぶん殴り、泣きじゃくるミヅキ。
だが、彼の行為は一方的に「事情を聞きに来た内規兵を負傷させた」とされ、リヴァーナ共々「敵との内通」を疑われて拘束される。
だが、太刀風が「名誉海軍少尉であるから理宇はこちら側の人間」と横合いからかっさらい、「ついでにうっかり」ということで公式には逮捕拘束が表沙汰になっていないリヴァーナも連れさってしまう。
激怒する溝呂木だが、空軍まで海軍の側についた上、実はその空軍に雇われていた矢真科ユリネ(しかも本当は魔導士官だった)が情報を開示したことで破滅する。
そして、国連からの交渉団を受け入れるクィーン。
各国首脳を伴った会議の開催を提案する。

9巻:国際交渉会議が決定。
首相は死を覚悟して後のことを馬上たちに託して会場へ向かう。果たして、クィーンは自らを犠牲にして(という感慨さえ彼女たちには無いが)会場ごと消滅。
首脳を失った国際社会は大混乱に陥るが、日本側が密かに開示した情報により、ある国は影武者を、ある国は事後を託した者たちがあとを引き継ぎ、反撃を伺う。
殴り込み部隊の結成の話が出る。
轟雷はこのときのための機体だった。
嵐の前の準備。理宇は虎紅とミヅキ、双方の両親と食事をするハメになる。
互いの思いを確かめ合う俊太郎と深冬。
恋が破れることをはっきり自覚する伸一郎。そして鷹乃。
「因果応報ね」
淋しく笑って泣く。それぞれの小隊関係者の思い。
酔っ払った勢いでついに伊達に告白する夏華。
そして朝が来た。
日本から出発する一同。

10巻:最終決戦。
各国の部隊との大連合になる。
殴り込み部隊はアメリカにある前線基地を突破し、時空の彼方にある敵の本拠を大規模「魔砲」で攻撃するのだ。
大激戦になり、深冬が俊太郎をかばって重傷を負い(死なない)、和積伸一郎は鷹乃をかばって、伊達は夏華を守って戦死、ユリネは部隊が全滅して「等身大ダイダラ」の材料にされる風景(その時はわからなかった)を見たことを告白しながら理宇たちをかばって死亡。
リヴァーナは数式魔法のブースターとして燃え尽きる。
そして、敵の本拠地を破壊する際、動けなくなった轟雷からミヅキと虎紅を脱出させ(そのカプセルが飛ぶ光跡を見ながら、重傷を負った壱岐原はリヴァーナが助かったと誤解したまま死去)、理宇は行方不明に。

二年後、紫神小隊の駐屯地に集まる仲間達。

深冬は負傷除隊、俊太郎と婚約していることを明かす。

夏華は、伊達の子供を連れて出席。

太刀風は中将に出世し、僅か一年で寿除隊した。

ミヅキは一時、アメリカに帰ることも考えたが、日本に残ることにした(ちなみにブレンダは父と再婚している)。
そして、あの戦いの最中、リヴァーナにもっとも強く接続された虎紅は「立派に成長」していた。
ただ、理宇だけがこの場に居ない。
そこへ緊急連絡が入る。
空軍の三隅裕也からだ。
降りてくるヘリ。ひとりの青年に支えられて、少年が降りてくる。
理宇だ。
つい二時間前、東京湾で救助されたのだという。
リヴァーナの残留思念によって、彼は何とか帰還したのだ。
抱き合って喜ぶミヅキと虎紅、戸惑いながらも「ただいま」と言えた理宇。

○「タイニー・ソルジャー」

※リヴァーナが実質的に最後に歌った曲。一般兵から一小節分の歌詞を応募し、組み合わせて作った。いささか古めかしい歌謡曲のラインを持つメロディと相まって「マニア受け」の楽曲になると言われていたが、リヴァーナの保護拘束と軍人への本格転身により「幻の曲」と呼ばれるようになった。正式な音楽データの配信は行われていない。

未来にさよなら言おう

命は永遠じゃないから

風に問いかけてみよう

僕らの運命(さだめ)の行き先を

冷たい雨の中、灼熱の日差しの中

ただ僕らは、歩き続ける。

行く先は見えない

教えられもしない

だから互いの顔、見つめ

だからくすんだ瞳で地図を眺め

踏み出していく、走り出していく

風の中へと

後悔はしない、心が麻痺してる、そう言い聞かせて

進まなければ、死ぬだけだから

でもその後は?

未来に、さよなら言おう

命は永遠じゃ無いから

凍える雪の夜、穏やかな朝霧の中

だから僕らは、疾走りつづける

輝きはどこにも

望みさえも忘れ

だから互いに声をはりあげ

になった銃構えて

引き金を引く、打ち据えていく

それは恐怖?

恐れさえ無い、心は死んでる、そう言い聞かせて

戦わなければ、帰れないから

でもどこへ?

未来にさよなら言おう

命は永遠じゃないから

風に問いかけてみよう

明日の僕らの運命(さだめ)の行き先を

小さく、笑って

まだ見ぬ君の為に

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