「だんす・おん・ざ・ばんぱいあ&ぬこーず」(4)


※メモ
アシストロイドたち一箇所で寝てる。
その様子を愛でるミナとアントニア。
一体消えているのに気付くミナ。
「あれは大丈夫でございます」
「そうであろうな……以前、ちょっと世話になった」
 苦笑するミナ。
 エリスの両隣で眠るふたり。


ちょこまか歩いていく「6」
ウルフボーイズと軽い交流。


摩耶、アキラの父と会話
アオイも一緒。
「寂しくて、厳しい人ね」
ぽつりというアオイに微笑む摩耶。

※メモ
アキラの父と「6」ミナの母親の肖像画前コント。

「こちにわ、なにしてるでしか?」
「このえをみておる」
「ミナしゃまのしょーらいのおすがたでしか?」
「かもしれぬな……いや、この方はミナ様のお母上だ」
「きれいでしね」
「お前もそう思うか」
「はいでし」
「お前の主人は……このお方になんとなく似ておられる気がする」
「そでしか?」
「お前はそう思わぬか?」
「じんるいのしこーとでじゃ・う゛ーによるさっかくは、わりらにはいまみっつほどりかいしがたくありますでし。でもながいかみとりんかく、そこからさんしゅつされるごほんにんのあかるくてやさしいせいかくは、わりらにもよそーできまし」
「……意外に理屈屋なのだな」
「わりらはあしすとろいどでし。このよにはりくつしかないのでし」
「哲学者でもあったか」
 苦笑するアキラの父親。
 そしてふたりはじっとミナの描かれた肖像画の前に、しばらく立ち尽くしていた。


※メモ
いちかコント。
「流しの原型師」として中野ブロードウェイで商売しているいちか。
次々に商売を広げている。
噂を聞きつけてローゼンマンの配下が買っていく。
偶然通りがかった(あるいはいちかの売ってるモノが怪しいということを聞きつけてきた)後藤さんと浜警部たちとのコント。
「あんたとそこのごっついお兄さんとの間に子供が出来たらこんな風かな?」
とあっという間に粘土で少女の姿を作り上げる。のみならず後藤さんと浜警部の結婚式フィギュアまで。
どうにも気配がただ者ではないので食事に招く後藤さんだが、いちか「いやー、今日で多分店じまいだから」と笑って高速移動。
次々にローゼンマンの配下の仕掛けた時限爆弾を解除。浜警部に手渡す。
「悪いけど、後始末よろしく……やっぱ造形資料に凝りすぎると良くないわねー」
消えてしまういちか。

※メモ
いちか、全員と合流。日限を切る

「何処行ってたんですか、いちかさん!」
「いやー、ほら、この世界ビミョーにウチらの世界と違ってて面白いもんだからついアキバと中野に長逗留を…………ついでにあちこち回ってお仕事して小銭稼ぎしようかと」
「…………これはなんじゃ? どうもエリス殿と違って偉く下世話な生き物に見えるが」
「まあねー。吸血鬼並みにはポピュラーなお化けよ」
「これ」呼ばわりされても怒ることなく、鷹揚にいちかは笑った。
「化け猫か、聞いた事はないぞ?」
「んにゃ、仙人よ。この世の断りから外れ、陰にも陽にも傾かず太極にある…………まあ、数千年前からいるピーターパンシンドロームなネオテニーつーか、魔法の使えるヒキコモリの一族ね」
 なんとも身も蓋もないことを言う。
「こっちの世界じゃ超常の者はヴァンパイヤと人狼以外居ないみたいだから、知らないのは当然だけど」
「で、何を売ろうとしてたんですか?」
 苦笑いしつつ騎央が尋ねると、
「フィギュア。色々作ったけど法的に駄目だったわー」
「…………で、どういうものなのですか?」
 思わずヴェラが訊いて、にやりとわらいながらネコ耳仙人(自称)は背負っていたデイバッグから信じられないほど巨大な段ボール箱を取り出した。
 明らかに、デイパック自体より大きい。二倍以上ある。
 その中にはさらに小さな段ボール箱が入っていて、アクリルケースに収まった中身を取り出すと、思わずヴェラが溜息をついた。
「これは…………姫様!」
 そこには4分の1ほどの大きさに縮められたミナ姫が、すまし顔で収まっていた。
 服装は政府公報や記者会見に赴くときに着用する赤黒のゴスロリ系衣装である。
 今にも呼吸を始め、動き出しそうだ。
「これを…………あなたが?」
「ん、そだよ」
 と、いちかは路上販売のたたき売りのごとくニコニコしながら品物を取り出していった。
「んー? とりあえずベイオウルフズとお姫様の式典ジオラマセットフィギュア8分の1と、今見せたミナ姫様の可動人形、それとセットでヴェラさんでしょ、んで、あそこにいる三人メイドとアキラ君…………と」
「…………」
 思わずミナが身体を乗り出すほどに、それは良くできていた。
「でもここの日本政府ってアスホーがスモールよね-『バンドに関係する一切の造形物二次版権ブツはこれを禁止する』とかなんとか言われてもーだめだめ、ショウケースで売ろうとしても捕まりそうだったもの」
「またそういう命がけのオタ行為を…………」
 騎央を筆頭にした「あっち側」から来た全員に苦笑が広がる。
「こ…………これは…………」
 ヴェラが息をのんだ。
 どれもコンピューターの3Dスキャナーのように精緻なだけではなく、生きているようであり、しかも「造形物」としての美しさと整合性も保っている。
 確かにエリスと違い下世話な雰囲気のネコ耳少女だが、腕は天才…………いや、天工のレベルに達していた。
「は、販売いただくわけには…………」
「宿代代わりにおいとくわ。実を言うと地下のほうで一部屋勝手に借りてたから」
「は、はあ」
「あそこ静かでいいわねえ。電源も心配しなくて済むし…………あ、あとそろそろ今回の助っ人が来るわ」
「え? でも次元転送出力はもうギリギリだって」
「いや、こっちの世界の家一軒を隣りに送り込んで、そっから引っ張ってきたの。等価交換だから問題なし」
「そういうもんなんですか?」
「あまり長居できないのはあたしたちと同じだけどね…………えーと、お姫様、たぶんバンドの地下、家が一軒無くなると思うから、ごめんね」
「なんじゃそれは?」
「質量的な問題。これ以上増やせないから等価交換でこの世界の家一軒と助っ人を取り替えっこしたのよ…………んでね、騎央ちん、これがこの世界のあたしの自信作」
「…………うわ、大きいフィギュアですねえ」
「…………」
 オタ属性は完全にないので、「まあ、良くできてるなあ」程度に眺めていたアキラの目が大きく見開かれた。
 隣で興味深そうに眺めていたミナの顔がこわばる。
「!」
 いちかが得意そうに取り出したのは、どう見てもミナの顕身した姿だったのだ。
 皮膚の一部が角質化し、武装しているのも似ている…………幸い、完全に同じではなかった。
「まるで扱いが地デジ○並みだったんで、腹が立ったからさ、こっちもアナ○熊よろしく作ってみたのよ、名付けてナミ女王様!」
 こちらの視線を知って知らずか、ネコ耳のオタ生物は等々と講釈をたれる。
「吸血鬼の普通の人間の『女王様』のコスプレって設定! ニ○動とヨウ○ベにはCGとこいつの制作動画をあげてあるわ」
「あー!」
 あんなが指を差した。
「もうひとり、ネコちゃんがいるー!」
「お、いたわね、あたし」
 この世界のいちか登場。こちらはジャージに竹刀というふて腐れた格好。
「あら4457世界のあたしじゃないの。どしたの?」
「あそこから叩き出されちゃってねえ……色々あって」
「なるほど、さすがあたし。またいらないことしちゃったんでしょ?」
「それはあたしだから判るんじゃないの、あたし?」
「なんか不思議な光景……」
 呟くアオイ。


※メモ
いちかたちによる状況の整理。
とにかく異次元からこっちに来る途中、触手を伸ばしてきた『ゆがみ』を排除せねばならない。
『ゆがみ』はいずれこっちに来る予定だった。
次元の狭間に漂う悪意の塊、ダイスの上の悪魔。
「正式には害意型武装情報体と言うそうです」
バンドはこの世界における運命の中心。
強力な運命を崩壊に導くことで力を得るが、普段は次元の壁に邪魔をされて直接手が出せない。騎央たちを殺してしまえば彼らは運命の輪から逃れてこの世界に出現する。
「そうなれば世界は崩壊、ってーわけでー」
信じてくれるかな?という表情のいちか。
「そんなものは信じぬが、お前たちは信じよう」


※メモ
 コンテナ登場。

 中に顔出しの着ぐるみを着けた探偵(自称)の華子(HJ文庫「きぐタン!」より)。
「来たわよ」
 唖然とするベイオウルブス&ウルフボーイズ。
「次の仕事がキャンセルになったんで、しばらく暇だから来たわ」
「オーケイ、あんたが居ると楽で良いわ、楽しい格好の人が増えて殺伐とした雰囲気も薄れるし」
「それが着ぐるみの神髄だもの」
「…………?」

※メモ
食事。
いちかのもちこんだ仙薬がスティグマに似た働きをして「味」を感じるミナ。
驚く一同。提供するよと気楽ないちかをジャージのいちかが咎める。
「介入しすぎよ、あたし」
「いいじゃないのあたし同士、硬いこと言いっこなし!」

※メモ
食後。
アシストロイドを使ったアフレコごっこを始めるアントニア。
ミナも乗ってくる。
微笑ましい食後。

※メモ
風呂
エリスにぴったりよりそう二人。
何となく嫉妬の感情を覚えるアオイ。
だが、エリス、聖母のよう。


※メモ
夜。それぞれの会議。
「長くは居られないのが残念でございますね」
「うむ」
「それにしてもあのヴェラ様はお強うございます」
「ほう、珍しいな」
「何とか能力の発動を停めることは出来ましたが、それが精一杯で…………あのままお嬢様とミナ様からのご命令が無ければ…………良くて相打ち、悪ければこちらの負けだったかもしれません」
「…………」
 さすがに騎央たちが目を丸くした。
 この一行の中でも、摩耶の戦闘能力は群を抜いている。
「まあ、確かにあの狼さんたちもかなりの身体能力の持ち主ばかりですもんね」
「そういえばエリスは昼、一緒に訓練してたんだっけ?」
「ええ。あんなに身体を動かしたのは久しぶりで、とっても面白かったです!」
 実を言えば、摩耶の次に戦闘能力が高いのはエリスなので、これもまた凄い事実ではある。
「ミナ姫様はともかく、他の人たちはちゃんと信用してくれてるかな?」
 ぽつん、と騎央が呟くと、
「少なくとも、我らはともかく、ミナ様の決断を疑わないのは事実のようねー…………少なくともこの部屋には最初から盗聴、監視システムの類がないわ」
 しれっとした顔でいちかが言い、アオイと摩耶、そして対防諜システムを搭載している「定やん」が頷いた

「彼らはこれから先も居続けるのでしょうか?」
 ヴェラがふとミナに訊ねた。
「どういう意味じゃ?」
「あの摩耶様…………かなりの使い手です。これまでの人生で、顕身を封じられたのは初めてでした。あと一瞬、姫様とアントニア様の制止が遅ければ、おそらく相打ち…………悪くすればこちらの命が」
 期せずして、ほぼ同時に同じことを口にしていることを、ヴェラも摩耶も知らない。
「なるほど…………つまり再戦を望みたいと言うことか」
 わざとトボけるミナへ、窘めるような視線を込めてヴェラは言葉を繋ぐ。
「いえ、彼らの持っている能力、情報、それらはある意味、我々にとっての切り札になります」
 一瞬の沈黙。
「言うな、ヴェラ…………同じ事を他からも言われた」
「ヴォルフ殿ですね」
「…………」
 言わずもがなのことを、という沈黙。
 そして、ミナはぽつんと言った。
「とりあえず彼らの事が終わるまで待て…………せめてそれまでは、友達のままでいたいのじゃ」
「御意」
 ヴェラが下がると、しばらくミナは書類をいじくっていたが、飽きて放りだした。
 と、まるでそれを見計らっていたかのように空中から丁稚型アシストロイドが「6」と額に書かれた仲間と共に現れる。
「おお、遊びに来たか」
 にっこりとミナは微笑んで、「おいでおいで」と手招きをする。
 二体のアシストロイドは「おばんです」「こばわ」とプラカードを掲げながらテコトコと吸血鬼の女王の膝の上に乗っかった。
 ぎゅーっと二体を抱きしめ、ミナは微笑む。
「何故みな、妾のために『役立てよう』『役立とう』とするのじゃ……」
 小さく、少女は呟いた。
「そばに居てくれる、一緒に話をしてくれる、それだけでよいと言うに…………」
 ぽんぽん、と「さだやん」がミナの頭を軽く撫でた。


※メモ
間もなく、この世界に本格的に『ゆがみ』たちが押し寄せることが判明。
ただし彼らも無限には沸く事は出来ない。
叩きつぶせば二度と現れない。騎央たちがこの世界に現れた矛盾が発生させているからだ。
そして、この世界における最大の「事象の中心」がバンドだと判明。
世界は個々を中心に「踊る」といちか二名が証言。
「誰かが奴らに方向性を与えたのよ……そうでなかったら三々五々に現れてこれほどまでの勢力にはならない」→もうひとりのミナの関与の可能性を逡巡?
自分たちの性だと謝る騎央たちに「そんな必要はない」と言い切るミナ。
「どうせこのバンドは常に狙われておるのだ」
そしてベイオウルフズに武装命令。

「なんで俺たちはこの格好せねばならないんだ!」
「…………理由は簡単。彼らは『まだ』この世界の存在になりきっていないから、あなたたちは通常の手段では触れることも出来ないのよ」
 華子と名乗った少女は偉そうに腕を組んだ。
 ちなみに今日は何故かカバの着ぐるみを着用していた。
 頭にはシルクハット。
「この着ぐるみを装着していれば大丈夫、内蔵された半次元渦動フィールド展開システムがあなたたちの存在そのものを半現実化して相手を攻撃できるようにするわ…………人狼である以上、飛び道具を使うのは意味がないでしょう?」
「その何とかシステムだけ取り出して装着、ってわけにはいかないのか!」
「無理。放熱とシステムの余剰電力を布状にして織り込んであるからこその着ぐるみ型だもの。これでもこの世界ではオーバーテクノロジーだわ」
「何でアキラとアンジーは!」
「早い者勝ち…………それに、彼らは遊撃隊だもの…………第一、彼は喜んでいるわ」
「おう、俺はこの格好、好きだぞ!」
 シンヴァだけがニコニコと、着ぐるみのライオン姿でシュッシュッ、とシャドーボクシングのまねごとなんかしてたりする。
「だよねー!」
 子猫のキグルミを着けたアンジーはくるくると器用に片足で回転し「にゃん♪」とポーズを決めたりしている。
「か…………可愛い」
 ロムロスが思わずコボした。
 思わず、ベイオウルフズ全員が頷いてしまった。
「…………」
 ヒュンテが何か呟き、眼の見えないカミーユも「そうなのかい」と頷いた。
「いやしかし…………」
 レムスが食い下がる。
 残念ながらまだ十六歳のシンヴァや外見的に女と見まごうアンジーと違い、他のベイオウルフズは成人男子…………つまり「いい大人」なのだ。
「ああ、こういう姿は他に見られたくないなあ」
「…………だな」
「我が儘を言わないの、一応すべて狼か肉食獣系でコーディネイトしたんだから」
「いやしかしですね、華子殿…………」
「胸を張れ、愚か者!」
 声がとどろいた。
 全員が直立不動になる。
 これを可能にする人物はバンドの中には一人しかいない。
 アキラの父、ベイオウルフズの長。、ヴォルフである。
「我らは姫様のご下命に従い、戦い、勝利するだけの存在だ、恥は棄てよ!」
 声は華子の背後から聞こえ、だんだんと近づいてくる。
「は、はい…………」
 しかし、こういう恥は持っていないと人狼のうち「人」の部分としていけないような気もする…………とはまさか誰も口にすることは出来なかった。
 我らベイオウルフズ、ミナ姫の無敵の剣。
 何者をも打ち破り噛み砕く、絶対の盾にして鎧。
 それを統率する長の命令だった。
「私も着用済みだ」
 声は、彼らの目の前に立っている、犬のキグルミから聞こえてきた。
 なんとものへっとした長い顔に、黒い垂れ耳のビーグル犬を模していて、何故か目の所には黒い線に見えるようなサングラス状のパーツが装着されている。
「総員着用後、この華子どのを教官として着用したままの戦闘訓練を行う!」
 ついこの間生誕五〇周年を迎えた、どこぞの犬小屋の上でいつも昼寝をしていて、かつ、時折空想の撃墜王ごっことかしてそうなビーグル犬の声は、絶大なる効果を持っていた。
「はっ!」
 全員敬礼。
 満足したように頷き、ビーグル犬はくるりと踵を返した。
「デザインは各種取りそろえてあります、希望があればどうぞ」
「で、では華子…………いえ教官殿!」
 真面目なレムスが手をあげた。
「わ、我々もで、出来れば自分は閣下と同じ構造のキグルミを使用したくあります!」
 その声に対する華子の答えは冷酷非情であった。
「アレは試作品で、不完全な品です。だから一着しかありません」
「えーっ!」
「ヴォルフ殿はさすがです『部下達に不完全なものを渡すわけにはいかない』と自ら着用を買って出ました」
「つ、つまりその、それはつまり…………」
「言葉を二度重ねる必要はありません。あなたたちのキグルミはすべて完璧に顔出し構造となったものをそろえてあります」
「…………」
 そのときの沈黙と、一同の表情を表すには、「絶望」の文字以外無かった。
 しばらく反応をまち、彼らが一切の思考活動を一時停止していると判断した華子は、きっかけのひと言を与えてやった。
「私の好きな格言があります。あなたたちに送りましょう…………『ギャグは開き直った方が傷は浅い』」
 全員の背筋がしゃんと伸びた。
「教官殿! 自分たちが選べるキグルミはどこでありますか!」
「あちらです」
 コンテナの奥にあるクローゼット型のキグルミ倉庫を指し示すと同時に、人狼たちは我先に殺到した。

※メモ
 決戦前、ジジとあんなたちから送られる黄色いマフラー。
 早速首に巻いてみた騎央たちを見て、「定やん」は「くにんのせんきとひとのいう」とプラカードを掲げた。
「まったく、どこで覚えてくるんだろうな、そういうの」
 苦笑いしながら騎央は「定やん」の頭を撫でた。
「でもまあ、確かにここまできたら『あとは勇気だけだ!』だよな」
 数ヶ月前携帯コンテンツで読んだばかりの古典漫画の名台詞が自然に口から出た。


※メモ
『ゆがみ』が出現を開始する。この世界の悪意をくみ取って、ヴァンドの中心部を破壊しに殺到する。
 最深部の地下を通っていくので地上の住人たちに被害は無い。
 地上への被害を食い止めるのはベイオウルブスとウルフボーイズ。
 きぐるみコントめいたところも。
「だが本当に雑魚だけ片付けていいのか? 雑魚のレベルでこれだけだぞ?」
「そこはアキラと姫様のご判断を信じよう」


※メモ
アキラは浜の情報で李たちがこの期に乗じてバンドに殺到する可能性を知る。
防ぎに走るアキラと浜
だが敵の正体はキリスト教原理主義たちに雇われたPMC。
大激戦の果て、アキラは更に彼らの裏に「テロメア」が存在することを知る。


※メモ
 バンドの地下へ通じる東京側の入り口に集結する「テロメア」
「ゆがみ」に「方向性」を与えたのは彼女たち。
 立ちふさがる殺戮モードのいちかたち。
 エリスの世界のいちかはチャイナドレス、バンド世界のいちかは黒いボディスーツ。
「舐めるなよ、吸血鬼ども」
「こちら側」のジャージ姿のいちかの口元に、剃刀で引いたような笑みが浮かんだ。
「夜の闇が、最初から己らだけの物だと思うな…………我らが、明け渡してやったのだぞ?」
 最後の言葉が、殺到する吸血鬼たちの耳に届いたか否かを確かめる術は次の瞬間永遠に失われた。
 全員の顔に、髪の毛ほどの線が走り、そこから鮮血を吹き出させながらミリ単位で、文字通りの微塵切りとなった。
 そして、全員がいちかたちに指先さえ触れることが出来ずに灰と化していったからである。
 第二陣が殺到する。
 脇には華子、縫いぐるみを除装して戦闘モード。さらに「リカバイヤー」と「鬼姫斬魔行」の捨那も時間限定で登場。
 大殺戮の果て、「テロメア」の盟主、もう独りのミナ姫登場。
「貴様ら、何者じゃ? どこから来た?」
 フードの下で盟主が問うのへ、
「さあね。この世界にある闇じゃないことだけは確かね」
「誤魔化すな」
「まあ、お察しの通りの『流れ者{流れ者:ケーブルボーグ}』よ。ここで流れ流れて消えるだけ。この世界の行く末に、興味はあっても介入はしないわ。でも、今は違う。アンタがたに邪魔して貰うわけにはいかないのよ…………今、邪魔をされるとこの世界が滅びるから」
「戯言だと言ったら?」
「観たでしょ? アタシたちは強いわよ? ここにいる五人でまあ、残りの雑魚は全滅、アンタの力も三割は削れるでしょうし、そうなったら後ろに控えてるお姫様とアタシたちの仲間がアンタを葬る」
 いちかの言葉には矛盾があった。
 戦っているのは四人の筈である。
 だが、フードの人物はそのことに構わず、口元を軽く歪めた。
「この世界の行く末に興味など無い、と答えたら?」
「アンタが破滅型の人間でも、その破滅は自分が呼びたいんでしょ? 誰に任せても同じだというのなら、ここまでノコノコでては来ない」
「読む物だな…………さて、お前たちは何者だ? 後学の為に教えて貰おう」
「言ったでしょ?流れ者よ、吸血鬼…………まあ、後ろにいるふたりは半分神様と、吸血の文字が取れた『鬼』だけどね」
「なるほど、どうりで妾の言葉が通じぬはずか」
「そういうことよ。闇の色も世界が変われば変わるの」
「ふむ…………夜の眷属も知らぬ世界があるというか?」
「闇の中にはね、あんたらが観たこともない色の闇もあるのよ」
 テロメアの生き残りともうひとりミナ姫は撤退。
 後を追いかけようとするいちか(エリス側)に対してジャージのいちかが「時間がない」と告げる。
「始まったわよ」


※メモ
集合体になる敵。
原子炉への道を真っ直ぐにやってくる。
いちかの術符で出現する広大な空間に誘い込まれる。
決戦開始。


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