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美容師の多くが悩む腱鞘炎・腰痛 理学療法士が教える簡単ストレッチ!

美容師という職業柄、避けては通れない身体の不調ってありますよね。腰痛や腱鞘炎、肩こりなど、その人のクセや体格によって症状もさまざま。悪化する前に未然に防ぐことができたのなら、毎日のサロンワークもより充実したものへと変わるはず!

 そこで今回は、リハビリ分野のプロフェッショナルである2名の理学療法士の方に、美容師向けのおすすめストレッチをお教えいただきました。

理学療法士ってどんな職業?

 まず初めに、理学療法士ってどんなお仕事かご存知でしょうか。わかりやすく一言で表現すると「リハビリの先生」。ケガや病気などで身体に障害の残った方に対し、座る・立つ・歩くなどの基本動作能力を回復、維持し、社会の中で不自由なく生活することができるように支援するリハビリテーションの専門職です。

 理学療法士といっても、分野はさまざま。現在は、卒後教育として脳卒中系障害や神経系障害など20分野以上にも細分化され、より専門性が高くなってきている職業でもあります。今回取材を受けてくださったお2人は、骨折や関節疾患などの整形外科領域の分野を専門とされていています。普段は、腰痛や膝、股関節などの痛みを持つ患者さんに対し、痛みの軽減を目的に理学療法をされているのです。

「解剖学」「運動学・運動力学」「生理学」から考える治療法

 まずは、理学療法士が最初に学ぶ「解剖学」「運動学」「生理学」という3つの基礎分野について、簡単にご説明します。

【解剖学】靭帯や筋肉など、人体の形態・構造を理解する学問

【運動学・運動力学】ある動作に対し、軌道や位置の変化などを知る学問(運動学)・外力が働いて運動を起こす作用を学ぶ学問(運動力学)

【生理学】人体を構成する細胞や個体(血液など)から生体の仕組みを学ぶ学問

 上述の3つの分野から原因を探ることが大切です。なぜなら同じ美容師という職業でも、体格だけではなく、ハサミの持ち方、動かし方、1人ひとりの生活習慣、男性女性でも筋肉のつき方が違うからです。つまりは、同じ腱鞘炎の人がいても、同じ治療を施すというわけではありません。

腱鞘炎と腰痛の原因って?

 腱鞘炎の原因はみなさんもお分かりの通り、主に手首の使い過ぎから摩擦によって起こることです。特に美容師さんは、手首を長時間動かし続けていますよね。そうすることで筋肉が血管を圧迫し、血流が悪くなり、阻血状態になります。体内に栄養を送り込む役割を担っている血液が循環しなくなった結果、腱鞘炎が起こりやすいです。

 腰痛も同じ理由が挙げられます。シャンプー中やカット中に、腰に負担のかかる体勢を続けることで背中の筋肉が血管を圧迫し痛みが起こるのです。


アナタにも出ている
腱鞘炎のサイン

 原因がわかっても、手首を使わないことなんて絶対できませんよね。そこで、せめて腱鞘炎が悪化しないように「腱鞘炎のサイン」を見逃さないことが大切です。

 レベル1~レベル5に向かうにつれ、症状は悪化。レベル2以上の場合は、整形外科などへの受診をおすすめします。手首の違和感を持つ程度の初期症状の場合は、腱鞘炎の悪化を防ぐ方法を知っておくことが大切です。まずは、自分がどのレベルに位置するのかを把握しておきましょう。

初期症状なら間に合う!?
手軽にできる腱鞘炎予防のマッサージ

 上表のレベル1に当てはまる方、または手首に違和感を持っていないという方におすすめしたい簡単マッサージ&ストレッチをご紹介。日頃の小まめなマッサージで腱鞘炎を防げるかもしれません!

【腕のマッサージ】

手首が痛い腱鞘炎でも、マッサージするのは肘に近いところからスタート。やさしく肘下から手首付近にかけて揉んでいき、血流を良くしましょう。血流が良くなる入浴中が効果大。

【親指ストレッチ】

親指を伸ばして、腕と同様に血流を良くします。気持ちよいと感じる程度の強さで、親指の付け根から手首を伸ばしてあげましょう。10秒を3~5セット行うと効果的です。ストレッチも入浴中に行うのがおすすめ。これなら、サロンワークの間を見計らって簡単にできますよね!


腰痛が気になって腰を強く叩いていませんか?

 美容師の悩みの大半を占める腰痛。仕事中、腰痛が気になって腰を叩いたりしていませんか? そもそもマッサージという筋肉をほぐす行為自体、筋肉を傷つけていることになるので、叩くのは痛みを悪化させる原因ともなるので危険です。腰痛のマッサージ&ストレッチも伝授していただきました!

【もも後ろとおしりの筋肉をほぐす】

立ち仕事や無理な姿勢を長時間していると、太ももの後ろやおしりの筋肉が硬直していきます。そのため、強張っている筋肉をストレッチしてほぐしてあげるのが効果的。

(浅く椅子に座り、片足を前に伸ばします。上半身を少し前に倒し、伸ばした方の足のもも後ろが伸びるのを感じてください)

(少し違う位置も伸ばしてあげましょう)

(就寝前のちょっとした時間に伸ばしてあげるのもいいですね)

どのストレッチも10秒を3~5セット行うのがおすすめです。

お客さまにやさしい
美容師による簡易マッサージ

 ヘアカラー後やパーマ後にサービスで簡単なマッサージをしている美容室がありますよね。でも、マッサージのプロではないので、なんとなく施されている方もいるのではないでしょうか。そこで、同じ姿勢を長時間続け、肩の凝り固まった筋肉をほぐすマッサージ法をお教えいたします! 動画をご覧ください。(http://www.kamishobo.co.jp/archives/webzine/011に掲載しています)

 マッサージするポイントは3カ所。背中にある「肩甲挙筋」「小菱形筋」「大菱形筋」を中心にやさしくほぐしていきます。このとき、首の後ろは強く触らないように気を付けましょう。神経が通っているので強く触ると大変危険です。

正しい姿勢を維持する
「靴のインソール」

 理学療法士の金子さんと勝田さんが取り組んでいる「靴のインソール」。長時間の立ち仕事をしている方に向け、靴にインソールを入れることで作業時や立位姿勢を改善して足腰の負担軽減を図る「靴のインソール」を考案されています。「靴のインソール」は体格、歩き方、立ち方などのデータによってつくられるため、同じものは決して存在しません。そのため、必ず自分に合ったインソールに出会えるのです。

 金子さんが取り組み始めたのは3~4年前。中には、高価格なもので5万円(受診料含む)するそうです。「もっと手軽に、もっと多くの方に提供したい」と金子さんと勝田さんが取り組む「靴のインソール」は、試験的に無償で提供されています。

 見られる立場にいる美容師だからこそ、正しい姿勢でお客さまを迎えることを心掛けていきたいですよね。

身体を使う仕事だからこそ
自身の身体を大切に

 最後に、理学療法士のお2人からメッセージをいただきました。

「遅くまでお仕事されている美容師さんをとても尊敬しております。自身のスキルアップも大切ですが、何よりご自身の身体を大切にしてほしいと思います。身体あってのお仕事だと思いますので、身体に不調を感じられましたらいつでもご相談ください(勝田さん)」

「理学療法士と美容師はお互い専門職、そして対象が人ですよね。そのため、良いサービスを届けられるよう、スキルアップしていくことが大切だと思います。私たちは患者さんに選んでいただけるよう、美容師さんはお客さまに選んでいただけるよう、お互いに腕を磨いていきたいですね。現在は、靴のインソールだけでなく、美容師さんにマッサージをお教えする活動も積極的に行っています。医療業界と美容業界が手を取り合って、もっと素晴らしい世の中にしていければと思います(金子さん)」

 どんな仕事もまずは自身の体調が何よりも大切。特に人から見られる仕事である美容師さんは気を付けたいですね。毎日、元気にハツラツとお客さまを迎えられるよう、ご自身の不調は積極的に改善していきましょう。


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