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居場所

ここ数日は、とっても暖かくてつくしは顔を出し、菜の花がたくさん咲いて、梅の花も満開です。明日からは冷え込みが予想されているようですので、どうぞくれぐれもお気をつけください。毎週月曜日私の半生を振り返りながら、新たな道を歩き始める様子を綴っていこうと思っているこのページ。さて、今日は新たな一歩の話です。

大掃除から
私の拠点である台所だけの建物「生活工房とうがらし」は、1997年にできてから23年以上の月日が過ぎました。できた当時は、住宅専門雑誌やライフスタイル系の雑誌、新聞などにも取り上げられ、田園風景の中にポツンとひときわ美しい姿で輝いていました。あれからの歳月は、長いようで気がつけばあっという間のようでもあります。
もともと工房は母が主宰し、父が時折手伝っていましたから、当初私は、小さな子どもたちを連れてときどき尋ねる立場でした。ある時から、母を手伝うようになり、いつの間にか私もここを拠点に活動することになり、ここ数年は、母も足が遠のきはじめ私が取り仕切る立場になっていました。それでも、母が自分の思うように設られている場でしたから、私が手を出したり、口を出したりすることもありませんでした。気に入らないことや使いづらい場所も目をつぶって、福岡から宇佐へ通っていた感じです。
そんな私が、今月になって新たな道を歩きはじめたことをきっかけに、大掃除をすることにしたのです。難事業な様子は想像できましたが、まずはそこからです。

今は亡き母が、どんな思いで集めた食器や什器なのか、亡き父がせっせと飾っていた絵画や、壁に打った釘のそれぞれは何のためだったのか、知るよしもありません。出てくるわ、出てくるわ、もう驚嘆です。
アルコールは基本は禁止、という場所なのに、数十個のワイングラス。和菓子用には落雁の型抜きから、おまんじゅうの焼き印。カステラの型。洋菓子用には、マドレーヌからケーキの型、チョコレート用のもろもろ。鍋釜類はもちろんのこと、押し寿司の型は、何十人分を想定しての準備なのかと思うくらい。かつては、それぞれうちでお祝い事などを行なっていたためか、漆器類の数々に重箱、お膳もの、徳利にお猪口などなど。もしかしたら、23年の開設当時以来かもと思う包みも出てきました。よく集めたなぁと。

工房には、竃を備えた昔台所、今台所、バーベキューや野菜を洗うための外台所、囲炉裏や半地下室などを兼ね備えています。畑に、果樹園もあるので農具も含め用途に応じた道具類があるわけですから、まあ本当にいろいろなものがありました。大掃除にはまる4日かかりました。捨てるものもたくさんあるし、処分に悩むものもたくさんです。これから活躍を期待する什器や食器も漆器も日の目を見た感じです。

ひとつずつ見直してみると、長い年月をかけて使われてきたそれぞれの役割を確認できたり、母がそれを使っていたことなどを思い出したりして、胸が熱くなることもありました。思い切って処分しながら、これから自分が何をはじめていくかなども少しずつ見えてきます。

軌道修正
カステラ屋さんかおまんじゅう屋さんか。
わざわざ拵えてもらったカステラ用の木枠。うちのスタッフがそれを洗って磨きながら「今度の先生(母)の誕生日にはカステラを焼かないとね。」っていうので、「なんで?」と聞くと「ほら好きだったでしょ先生(母)」っていうので、「とうとう母の好きだったカステラのために、カステラ屋さんも私はやるんだね。」と大笑いしながらの作業です。


「おまんじゅうの、敷紙や焼印もこんなにあるのは、今度はおまんじゅう屋さんかな?」と出てくるものを笑いに換えながら作業を続けます。

押し寿司の枠も。大中小とあって、それぞれで何個も出てくるのです。「今度は押し寿司やさんもできるね。」

そんな笑いの中で、大掃除を終えました。不思議なもので、そうなると窓ガラスを磨く余裕や、花を生ける気分にもなります。
何より料理が楽しくなります。
結局のところ、私の場所が作れた気がするのが、一番の収穫です。居心地のいい居場所ができたのです。

私はこの居心地のいい場所から、日常の食を非日常から見直しながら、「ごはんはエール」をテーマに、日々を丁寧に食を積み重ねていこうと思っています。近いうちに、そんな居心地のいい場所を共有したいと思う仲間を、募集しようと思っています。青空のもと、気持ちのいい空気を、気の合う仲間と、たくさん吸いたいと思います。
来週も、ぼちぼち進んでいきます。

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