見出し画像

カタストロフと美術のちから展に行ってきました

これに行ってきましたのでご報告です。(ネタバレがあるかもしれません。)

カタストロフ(=大惨事)のときに、美術はどんな役割を担うのか。前半は「破壊(と、その状態をいかに残していくのか)」、後半は「創造(することで、いかにして前を向いていくか)」の二本立てでした。

扱うテーマは、3.11や阪神淡路大震災のような自然災害、ホロコーストや9.11といった人的なものから、難民、貧困格差、各地域の闘争までさまざまでした。そのほか、肉親の変化や道端で出会った個々人の悩みなどがテーマになっている作品もあって、規模は違えどカタストロフなんだなあと。

印象的だったものをまとめようと思います。

3.11のとき、原子力発電所にて、第一線で対応していた108人の肖像画

トップ画像のやつです。黒い丸が並んでいるなーと遠くから見て思っていたのですが、近くで見ると、丸い時計に黒い塗料で肖像画が描かれていることがわかりました。並んでいる108の肖像画は、福島の原子力発電所にて作業をされていた方々でした。彼らはそれぞれチクタクと動いています。「それは生きている音なのか、死までの時間を刻む音なのか…」みたいな解説にはちょっと息をのみました。

瓦礫の写真、描画、インスタレーションと続く中で、この作品がすごく異様に見えました。生身の人間の物語というか、生きているまさにその一瞬というか。死ぬギリギリの間際になって生きることがすごく鮮明になってくるような、そんな感覚になりました。

池田学さんの「予兆」と「誕生」

美術手帖で見て「あああ(歓喜)」と思っていた方の作品と出会えるとは思っていませんでした。歓喜。

(美術手帖さんより)

「予兆」は、北斎の「富嶽三十六景」みたいでした。

大きくうねる波なんですけど、よく見たら地面が盛り上がってできている波でした。「予兆」というか、この状況はもうすでに予兆の五歩くらい先を行っています。わたしたちが普段生きているときも、「予兆かもしれない」と思ったら「時すでに遅し」なのでしょうか。タイトルと作品のギャップを覚えました。

この作品は人が多くてあんまり見えなかったなあ。

「誕生」は、画としてとても綺麗でした。綺麗なんだけれども、桜に見える花びらに紛れて放射能マークが紛れているのは何というか、池田さんらしいなあと思いました。

瓦礫のなかから生えた大木は、うねり幹をのばし新しい文明を誕生させています。破壊のあとの誕生。幹にはそれぞれ森の化身のような、頭のような目のような、生き物のかたちを見ました。日本の八百万の神にも通ずるような、そんな感覚で受け取りました。

池田さんの作品には、遊園地とか看板とか飛行機とか、漢字のフォントとかエッシャーの作品の一部とか、本当に色々な登場人物が出てきていて、彼らが何を訴えているのかが毎回気になります。

美術を通してできること

美術に携わる人がカタストロフに面するとき、「どういうものを作って届けたらよいか」。その問いに新しい角度で提案をしてもらったような気分になりました。

「一緒につくっていけばいい。」

3.11のときに顕著だったようなのですが、「東北の子どもたちと一緒に、夢を描いた作品をつくる」「更地になってしまったふるさとに、灯台をつくる」など、一緒につくる活動をされていたかたが多くいらっしゃるようです。ものをつくることは「つくる人」と「それを享受する人」という2つの立場で構成されることが多いけれども、「つくることを享受する人」という全員が同じ立場でつくっていくことが、前向きに生きていくパワーを持っているなと感じました。

特に、3.11の数日後、避難所にて行った「ぬいぐるみをつくろう」みたいなワークショップの作品の展示が印象的でした。子どもたちがぬいぐるみと一緒に願いごとを書いているのですが、「おじいちゃんの足が良くなりますように」「お父さんとお母さんお仕事がんばって」「みんなが健康になりますように」と、自分の大切な人を想う言葉が多かったんです。側からみたらカタストロフの真っ只中なのかもしれませんが、そこには前に向かって伸びる芽が隠れています。その芽を引き出していくこと。見失いがちですが、それは大きな救いかもしれないと思いました。

オノ・ヨーコさんの参加型展示

「平和についての願いを書いてください」とペンを渡されましたが、何も書けませんでした。平和が当たり前な自分には、願いも何も出てきませんでした。むしろ、そんな薄っぺらい自分が数分考えた薄っぺらいものをここに描き残していくのが、申し訳ない気がしてやめました。

オノさんは、そんな状況の人間でもなにかしら考えるきっかけとなり、最初の意見をここに書いていくことを願っていたのかもしれないですね。

まさかの「電信柱、カラス、その他」

併設している展示で会田誠さん(の作品)に出会ったのは衝撃でした。ただ好きなので。


そんな感じです。もっと写真撮ればよかったなあ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?