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「ダーウィンの海」を超えよう

技術経営(MOT)の用語として、魔の川、死の谷、そしてダーウィンの海という3つの壁があると言われているのをご存知でしょうか。

基礎研究から製品開発、事業化の過程で直面する壁で、簡単に言うと、基礎研究、アイデアから実用化を目指すまでの壁を魔の川(Devil river)、実用化から製品化までの壁を死の谷(Valley of death)といい、製品が市場に出て淘汰を受けて生き残るための壁をダーウィンの海(Darwinian sea)といいます。

先日、中国のスタートアップの方たちに「イノベーション」についての講演をする機会をいただき、この3つの壁の話、実際の成功例や失敗例とこれらの壁の関係、そのほか、Jobs法による潜在ニーズの見つけ方から、実際にどうやって事業価値を上げていくかという話をさせていただきました。
3時間を超える講演でしたが、皆さん熱心に聞いてくださり、特にこの3つの川の話はとても興味深かったというフィードバックをたくさんいただきました。

私自身も、今回の講演の準備で資料をまとめながら改めて気づいたのですが、これまでの成功例、ヒット商品を振り返ってみると、技術的な発明や、顧客ニーズへの気づきから技術的なブレークスルーなどが取り上げられ、それが成功物語として語られることが多く、つまり魔の川や死の谷を越えることで大成功を収めたというストーリーになっていることが多いのですが、実は最後のダーウィンの海を越えなければ本当の成功にはならなかったということが、あまり語られていないような気がしています。

イノベーションというと、この魔の川や死の谷を越えることだと、実は多くの人たちが感覚的に考えているのではないでしょうか。
確かに、これも立派なイノベーションなのですが、せっかく素晴らしいものを作っても、顧客に認知されない、営業が売ってくれない、売りたくない、時期が早すぎてうまく行かなかった(でも、後にヒットしたなどもある)、顧客が採用すべき形に収まっていない、などの理由であと一歩のところで失敗し、撤退するケースも世の中にはたくさんあるように思います。

「イノベーションのジレンマ」を書いたハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセンは、顧客は製品やサービス自体を見て製品やサービスを購入するのではない、顧客は顧客の片づけなければならない仕事(Jobs to be done)を片付けるために、製品やサービスを採用するのだ。ということを言っています。これに基づいた顧客の潜在ニーズを見つける手法をJobs法(Jobs to be done法ともいう)というのですが、最近、この手法が注目され始めています。

ただし、いろいろと試した結果、顧客のJobsを客観的に見つけるには少し慣れが必要という感触です。どうしても事業側の都合が頭から離れないで、客観的に見れないことが原因と思われます。ただし、使いこなすと実に色々なことが見えてきます。

顧客をとりまく事業全体の中で自社がどこにいて、どこに競合がいるのか、どこにビジネスチャンスがあるのか、事業としての価値を上げるチャンスはどこにあるのかなどです。

この手法と、過去の成功事例が教えてくれるものを合わせると、ダーウィンの海を越えることが出来るのではないかと考えています。
真の成功を成し遂げるために、ダーウィンの海について、もっと深く考えるべきかと思います。
もちろん、魔の川や死の谷を越えてこそ、競争力のある製品やサービスを手にすることができるわけですが、そのあとのダーウィンの海こそ、超えることでの大きな利益、市場に対する大きなエネルギー、インパクトがあること、つまりダーウィンの海を越えるイノベーションの重要性を再認識したいものです。

講演会の最後に、参加してくださったスタートアップの皆さんに、今現在、3つの壁のどこと戦っているかを尋ねてみました。80%以上の方が魔の川を越えたところ、あるいは奮闘中と答えられ、ダーウィンの海と奮闘中と答えたのは5%くらいでしたが、どの状態にいても最終的にダーウィンの海を越えなければならないと考えたとき、資金やリソースも限られる中で、どうしたらいいかと救いを求める声が多く聞かれました。

多くの人が、自分の思った製品やサービスを市場に出せれば、あとは運を天に任せるような思いなのかもしれません。
スタートアップの成功確率が1,000に3つと言われるのもうなずけます。

ダーウィンの海を越える方法は、過去の成功したビジネスモデルからも学べるし、過去のビジネスモデルを応用する方法が有効だと考えています。過去を学ぶこと、さらに、アナロジー思考や、事業モデルを流用するための考え方、手法によって大きなイノベーションを起こしましょう。(「イノベーションを起こすしくみ」参照)

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kamonk

製造業の経営改革、事業再生をプロデュースするフューチャーシップ(株)の代表取締役。大手精密器メーカー、海外EMS企業の製品開発現場で30年間以上、新製品開発や新規事業開発を指揮してきた。リーン開発、TOC、ジョブ理論などの多彩な手法を組合わせた独自手法で日本製造業の復活に奔走中。
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