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社長の力って会社にどんな影響あるの?

アメリカのミシガン州アナーバーというところに、メンロ・イノベーションというとてもユニークなソフトウェア受託開発会社があります。数年前に私の友人がこの会社の社長であるリッチ・シェリダン社長と知り合いになり、実際にこの会社を訪れて、この会社の普通では考えられない仕事のやり方と、その成功の秘密を聞いてきて教えてくれました。

ソフトウェア開発会社というと、日本ではちょっとブラックなイメージがあって、いつも社員は残業に追われ、納期とお客様の要求を満たすために浸食をも忘れて働く姿を想像してしまいますが、この会社はまったく真逆のことをして、しかも高い収益と顧客満足度を達成し維持しています。

この会社、アメリカ国内では今ではとても有名になっていて、テレビ番組でも取り上げられ、見学希望者は後を絶たない状況だそうです。起業家たちの聖地であるシリコンバレーからも注目されているいわゆる優良中小企業です。

この会社、つまりリッチ社長の目指してきたものは、「よろこび(Joy)」という言葉でできる経営であるということで、「よろこび」は、この会社の社員はもちろんのこと、ソフトウェアを発注する顧客企業と、さらにはソフトウェアを最終的に使うエンドユーザーまで含めたすべてのステークホルダーの「よろこび」をすべて満足させる「経営」ということです。

リッチ社長とこの会社の社員たちがやっていることは、
1)残業は一切やらない。
2)誰にも喜ばれないソフトウェアは作らない。
3)プログラムの内容は、手書きの紙に書かなければ始めない。
4)定期的な進捗確認はお客様が主体でデモをやって確認する。
5)スケジュールは一人週40時間の限られた時間からお客さんが組み立てて決める。
6)プログラミングは必ず2人1組で実施。
7)プログラムそのものを作る工数よりも、プログラムの検査プログラムの作成を先に、重点を置いてやる。

詳細な施策の話はソフトウェア開発を知らない人にとっては理解できないと思うので、経営者として目指したところ、その意味で大事なところだけにフォーカスをあてると、
1)いいと思ったアイデアをすべて試してみて、良かったものを残していく。
2)お客さんとの関係を、委託受託の関係ではなく共同開発の関係にする。
3)出発点を社員の幸せと顧客(直接顧客とエンドユーザー)の幸せを第一に置いて、施策を試行錯誤していって現時点ではすべてがうまく行っていること。
まさに、社長の「経営方針」をすべての関係者が支持し、それを支えて成功に導いているということかと思います。

ソフトバンクの孫社長が、英ARM社の買収を決めました。
3兆円という巨額の買収です。
孫社長自らが10年も前から思い描いて、実行したということが報道されています。すごい社長ですね。
この買収が成功するかどうかはさておき、日本の大企業では最近では珍しい強力なトップダウンによって、力強く会社が変化し続け、前に進んで行っています。

一方、最近「シャープ崩壊」という本を読みました。
私自身も2007年前後に、シャープと密に仕事をしていたことがあり、当時の片山社長と前社長で会長の町田さんとの確執を間近で見てはいたのですが、この本を読んで改めて、人災による会社の衰退ということを再認識しました。
日経社もここまで実名で、歴代社長を批判し、場合によっては無能と言い切っている本を読んで、シャープに起こったことをとても残念に思うと同時に、こういう本物の振り返り、原因追求の重要さを改めて感じました。
起こってしまってからではなく、今も、日本の大企業で起こっているかもしれない能力の足りない経営者による人災を未然に防ぐには、社員一人一人が少しでも賢くなって、おかしなことをおかしいと言える会社にしていくことしかないのだと思うわけです。

「社長」という仕事について、ちょっとだけ深く考えてみたくなる3つの事象でした。



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