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情報を口伝えにする大切さ

自分が得た知識を口で人に伝えることの重要性を強く感じています。
私のひとつのこだわりは、読んだ本についてその内容を読んだ後できるだけ早い時期に他の人に話すことで、自分がどれだけその本の内容を理解できているかを自分で確認すると同時に、読んで得た知識を確固たる自分の知識にしようと、意識的に“口伝え”ということをやっています。

これは、実はとても効率のいい本の読み方だと自画自賛しているのですが、他の人に話してみると、あるいはその時に相手から質問されたりすると、如何に自分の理解が足りていないかがわかることもあるし、あるいは相手もその本やそのテーマについて知識があった場合などは、自分とは違った受け止め方をしている人がいることに気付かされたりします。
このことは読書に限ったことではなく、セミナーや誰かの講演を聞いて感銘を受けたときなども同様で、他の人に話すことで自分の理解レベルの確認と、さらには聞いた知識を確実に自分のモノにするのに大いに役立つと思います。
最近は、コミュニケーションの多くが、“口伝え”から、メールやインターネットを活用したものに変化してきています。ITの進化によって、我々は大きな恩恵を受けていますし、もう昔のやり方にはとても戻れないというものもたくさんあります。
メールやSNS、チケット予約に、インターネット販売、情報収集に情報蓄積、音楽や動画などを携帯端末で楽しんだり、健康管理などまで、我々の生活の中にしっかりと根付いてきてもいます。

ただ、気になるのは人と人とのコミュニケーションが希薄になっていないかということです。
電子メールが普及してから、職場の隣の席の人とでさえ、メールで会話する人が増えているという現実もあります。私は、技術系の仕事が長いのですが、エンジニアの職場では、電話で大きな声で会話する人が20年前に比べると激減しているように感じます。
職場では、ほとんどの人たちが、パソコンの画面と睨めっこしながら仕事をしています。ほとんどのことがパソコン上で出来てしまうので、会議や打ち合わせ以外は、パソコンの画面上が職場であり、また、コミュニケーションの場であるわけです。

ところで話は少し変わりますが、皆さんの職場でITシステムを変更した、あるいは変更を検討した、などの経験はないでしょうか。
私は大企業にいたときに、プロジェクト管理をしっかりやりたい、情報共有、管理を充実させたい、情報検索性の向上で業務効率を上げたい、などの理由で何度もITシステムの変更を検討し実行する場面を経験してきました。やれMSプロジェクトがどうだとか、Redmineがこれからのツールだとか、かなりの時間を割いて議論して、そしてそれなりの投資をしてシステムを変更します。
しかしながら、私の経験から言うと、狙い通りに職場の課題を解決できたケースはほとんどなかったように思います。
うまく行っているのは、一部の少人数のチームで元々チームワークがうまく働いていて、しかも全員がITに精通している場合に限られるような気がしています。
何が問題なのか。
私は、人と人とのコミュニケーションがしっかりある上でのITシステムでないからだと考えています。
情報の検索、企業内では報告書などの検索性ということが課題になることがあります。社内にどんな知識やノウハウがあるのか、他の部署がどんなことをやっているのか、それを“見える化”しようということなのだと思います。ちなみにこの“見える化”って言葉が、少し注意が必要だと私は思っています。
GoogleやYahooなど、インターネット検索技術は飛躍的に進化し続けています。同時に世の中に出回る情報も爆発的な勢いで増えていて氾濫状態です。意味のある情報ばかりではなく、間違った情報も溢れているわけで、使う側がしっかりとしたマインドをもって、有益な情報のみを取り出す必要性も出てきています。
でもこれは世の中一般の話で、これをそのまま企業内に当てはめてしまうと多くの問題が起こってきます。

企業内にはその企業にとって有益な情報だけが存在しているはず(前提)なのですが、企業内の活動が、小さな組織ごとの小さな活動になっていたり、他の部署の人たちが活用できる情報になっていなかったりすることで、ひとつひとつの文書の価値が低下している傾向があることが一つ目の問題なのですが、これは今回のテーマとは少し離れるので、問題提起までに留めておきます。
二つ目の問題は、パソコンを介しての仕事のやり方、コミュニケーションの取り方が浸透するにつれて、誰が何の仕事をしているかという、人間が人間を知るということが少なくなってしまって、他人に対する関心が薄れていってしまっていることです。
20年前、職場のあちこちで電話で会話している人がいたころは、聞いてないつもりでも、何気なくあの人は今こういう仕事をしていて、どうも協業相手とうまく行ってないみたいだとか、あの人はいつも怒られてるとか、この人はいつも自信たっぷりに仕事しているとかが、周りに自然に伝わっていました。
仕事に関する会話も、職場内で大声でやり取りする姿は日常茶飯事で、そのプロジェクトに関係ない人でも、プロジェクトの内容がわかったりしたものでした。
報告書は紙ベースでやり取りするので、先輩や上司からのフィードバックも“口伝え”が基本です。
電子的なコミュニケーションがないから、階層的に行われる会議などで、どの部署がどんな仕事をしているかを事細かに報告しあう必要もありました。
その結果、職場の多くの人が、どこの職場の誰々は、どんな仕事をしているのか、それが自分たちの仕事とどんな関係があるのか、あるいはないのかを常に把握することできたわけです。
何か仕事で困ったことがあって、先輩や上司に相談すると、それについてはどこどこの部署の誰々が似たようなことをやってるらしいから相談に行って来い、というようなことが瞬時に帰ってきたりするのです。
企業内の情報検索は、実はIT化だけで進めるのではなく、”口伝え“の文化、つまり人と人とのコミュニケーションを充実させた上で、足りないところを補うITシステムであるべきだと考えています。
情報検索だけではありません。情報の質について少しだけ触れましたが、企業内の報告書をもっと多くの人に読んでもらいたい、役に立てたい、自分のやったことを自慢したい、などの人と人の関心を繋げることで、報告書の質を高める、仕事の満足度を上げる、そしてその結果、仕事の効率を飛躍的に高めて、さらには”人“の成長につながるのだと私は思います。

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