見出し画像

造形がリアルであればあるほど、迫力のあるポーズは不自然になる?


生き物を造形していると、ポーズをつけてつくりたい気持ちと、ポーズをつけずフラットな自然体の状態でつくりたい気持ちのジレンマが常にある。
僕は生き物を、作品としてではなく生きているものとしてつくりたいと思っていて、そのためにはどうするべきかをいつも考えている。
作品の表現としてはもちろん迫力のあるポーズで造形したほうが格好良いし魅力的だと思うが、"生き物"をつくる場合にはどうなのか。
ライオンの、今まさに獲物に飛びかからんとする瞬間の躍動感ある動きと表情を、静止した状態でつくるということは実はものすごく不自然なことではないか。生き物を"生きているもの"として作る場合には、ぼーっと無表情で佇んでいるほうが、もしかしたら正解なのではないか。
今回は、僕が生き物をつくるときに意識している、そんなところについての話をしていこうと思う。

フィギュア造形と特殊造形

先に書いた「自然体こそ生き物らしいのでは」という感覚は、僕が特殊造形をルーツに生き物づくりをしていることも影響しているかもしれない。
というのも、特殊造形でつくる造形物は人が身につけたり、仕掛けを作ったりして最終的に動かしたりする場合が多いので、原型の段階で下手に表情を作らないことが多い。
(それは着ぐるみだったり、特殊メイクだったり、メカを仕込んで動かすアニマトロニクスだったりと方法は様々だが、基本的に後で着用したり動かすことを想定していることが多い。)
対してフィギュア造形では、あるシーンを想定して、そのシチュエーションに合った状態の造形物をつくることが多いように思う。物語や状況の再現だったり、お客さんをもてなす場でのウェルカムドール的な役割だったり、フィギュアを作る際にはその場面でのベストの形が求められる。
人が着たり関わることで完成するものなのか、それ自体で完成するものなのか。個人的にフィギュア造形と特殊造形の一番の違いはそこかなと思う。

ツチノオトシゴ
原型の段階ではポーズをとっていないラフな姿勢(上の写真)だが、中に針金を仕込んであるので下の写真のように自由にポーズがとれる。


表情をつくったまま静止していることの不自然さ

そうなってくると、生き物をジオラマ的な表現としてではなく、生きてそこに存在するものとして作りたい場合、できるだけ表情がない状態でつくったほうが生命が宿るのではと思えてくる。
実際には動かさないにしても、動くことを想定して、動く前の状態、ポーズをつける前の状態、すなわちフラットな状態でつくっておいた方がより生きものらしいのではないか。
表情が生き生きとして躍動感のある瞬間を捉えた造形作品は、その造形がリアルであればあるほどその状態で静止しているということが不自然で、表現として素晴らしいなと思うと同時に、絶対にこれは生きてはいないんだなということを強く実感させられてしまう。

不自然じゃないポーズとは

では、生き物を'生きているもの'としてつくるにはどうするべきなのか。
自分にできる範囲内で、現時点ではふたつの方法がある。
ひとつは、上で述べたように、フラットな基本形の状態でつくって動く可能性を残しておくこと。実際に動かないにしても、動くかもしれない、動き出しそう、と思える余地をつくるというのが大事なんだと思う。

かぶりものでいうと、例えばオオカミを作る場合、ハロウィンの時期に出回るような初めから歯がむき出しの恐ろしい形相をしたものをつくってしまうと、表情が動くかもという期待や可能性がなくなってしまう。
すでに動いたあとの状態で表情が固定されていると、さらに動き出す余地が見えなくなるため、お前なんでいつも怒ってるんだよ、ということになってしまう。
逆に、フラットな状態で作っておけば、実際に動かなくても、もしかしたらこれから表情がかわるかもしれない、怒ったら怖い顔になるかもしれない、という可能性を感じることができる。
もしかしたら動くかもしれない、と思わせることが生き物らしさを感じさせる重要なポイントのように思う。

もうひとつの方法は、その状態でじっとしていても不自然じゃないポーズでつくることだ。(硬い素材で作る場合は、後で動かせないので特にこの方法が適していると思う。)
具体的には、寝ていたり、座ってぼーっとしていたり、ただ佇んでいたりと、実際の生き物もよくするであろう自然な姿勢でつくってあげることだ。
また、山道などで出会った鹿が逃げもせずじーっとこちらを見ているような、観客を認識しているそぶりというのも大事だと思う。
見る人が直接関われる状況をつくることで、'物としての作品'から'生きている物'へ認識が変わるのだと思う。

そういった期待を込めて作ったのが、カッパの赤ちゃん。
卵の殻に入れた状態だとフィギュア的な表現だが、このカッパの赤ちゃんは抱っこしたときに一番可愛くなるようにつくっている。抱っこした時の重量感、腕にフィットするフォルム・・・。人が関わること(抱くこと)で赤ちゃんも人を認識し、生き物としてできるようになった。

おわりに

ということで今回は、生き物らしさを出すために何を意識してつくっているか、というお話でした。今回はちょっとですます調をやめてみました。最終的になんだか自分の作品の紹介のようになってしまって恐縮です。
理想を言えば、本当に生命が宿って動き出してくれればもうなにも言うことないのですが・・・。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

何か心に触れるものがあったら、お気持ちを頂けるとすごく嬉しいです。制作の励みになります。

Thank you!
57

かものはし

生き物をつくる人です。 現実には存在しないちょっと不思議ないきものや、リアルな動物のかぶりものなどをつくっています。

良い記事メモ

良い記事メモ
2つ のマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。