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華生ばかり #0108

 さて、前回のコラムをお読み頂いていない方にはまったくの意味不明回になります。なんとか完成しましたので僭越ながら出させていただきます。
 これはとある戦いの記録であるとともに、ムーミン谷に住んでいる小さなミイが中学生の頃の私に教えてくれた「戦うってことを覚えないうちは、あんたに自分の顔はもてません」という言葉をまざまざと思い出し、改めて実感し、まず物書きの端くれとして、コラムというもののネタを本気で作るために生きてみるという挑戦のはじまりでもあります。ラジオの方は聴覚で楽しんで頂いて、こちらは是非視覚と想像力でお楽しみください。

■現代のわらしべ長者戦争:後編

 wearとかに載っている一般人の方の写真で、今ふらっと歩いてます! みたいな自然な感じの写真つーのは、一体どうやって撮ってんだろうかと不思議に思う日々。ああいうのってすごい雑誌っぽくて、よく撮れてるよね。協力者がいるのかな。今書いてて「あ、連写かも」と思ったけど。いやぁ、普通にマンション内で立ってて撮ってんのも結構ハードル高いのに(シャッター音が本当にでかい)往来の場で、カシャシャシャシャシャシャーー!!!(しかも一人)は相当強靱なメンタル持ってないとムズいな……。
 それはともかく。
 前回、某古着屋さんに行って数時間熟考した挙げ句にGAPのジャージだけ買って撤退したというところまで書きました。そのジャージはジャージでめっちゃカッコいいので、とりあえずその次の日に履いてアップしたんだけど。しかし今回やりたいのはそれじゃない! あたしゃリーバイス求めてるよ。渇望してるよ! 最近ようやく生活サイクルが戻ってきたことにプラスして、このミッションが加わったことによる(私にしては)びっくりするほどの早起きっぷりでさくさくとその日の投稿用の写真を撮った私は、今日はもうポメラ持って行かない! 何かあったら全部iPhoneの中に書くと決めて、おうちでコーヒーだけ飲みながらデニム関係の着こなしをパソコンで検索しまくって「いやこんなの、リアーナのスタイルがあるからできるんだよ! 一般人にはできないやつだよ!」とか文句を垂れまくっていました。
 そんなことやってるうちに、気付いたら午後三時。アホかと思いながら荷物を掴んで家を出て、目的地へと赴くも……乗り換え、乗り換え、徒歩、乗り換え。分かっちゃいたけどクソ遠いなめんどくせーー!! 最近はもう電車移動とか殆どしないって言うか基本的に7キロぐらいだったら歩いて行くから、本当に精神的に疲れた。けど今回行くのは未開の土地すぎて、聞くところによれば方向音痴であるっぽい私には、ちょっと徒歩だとハードルが高いかもしれないので、仕方なく電車での移動。もう、行きの移動だけでくたくたになった。電車は速いし楽だけど、それ以上に人混みの中で揉まれながら電車に揺られてるのってめちゃくちゃきついな、ってのを何年ぶりかに思い出したよね。夏でも冬でも、知らない人に触れるのが嫌だという性格的な問題もあるんだけどね。
 しかもまぁ、何でこんなに電車来ないの? 止まってんの? ぐらい来ない。本当に強風とかで止まってる可能性があると思って調べたんだけど、シンプルに本数が少ないだけだった。その間も、その電車の沿線、もしくはその沿線の駅からバスに乗れば結構すぐに行ける的な古着屋さんがあるかどうかをiPhoneで調べまくって、結局、最低でもここは押さえる! と、二店舗ほどにアタリをつけて、乗り換え情報と地図をスクショ。モバイルバッテリーは一応持ってきてるけど、写真撮りまくる予定で来てるし、いちいちMAPアプリ開いたらバッテリーの消耗が激しいんじゃないかと警戒しての超頭脳明晰行動。さすが私ナイスーー! てなことで、がたんごとんと電車に揺られて、ホントにこの電車で合ってんのかなと不安に思う感じの駅間の距離を痛感しながら到着したのは「北上尾(きたあげお)」という駅。

 おお! 何ここ、何処ここ!! 誰も知らない! めっちゃわくわくするな! 何線だっけな。東海本線、とかそんな感じの路線のこじんまりした駅。駅についたら改札が一個しかなかったから、そこから出たのね。でも、改札から右に行けばいいのか左に行けばいいのか分かんなくて、座り込みながらひとしきり悩んだ。なんつーか、北上尾の人に怒られるかもしれないんだけど、目印がないのよ! のちのち「こんなでかい有名店あったんじゃん!」とか「これは流石に地図に載せといてよ!」って感じのお店が結構あったことに気付くんだけど、何が言いたいかっていうと、私悪くないのよってこと。これホント、Googleマップに載ってないの! かなりの有名店とかがあったりするはずなのに。何もないのよ。地図的には、駅周辺が更地みたいな感じなの。
 私が目視したところ、二階建てのデカい駐輪場が駅前に三個。私的にはそれしか目印がないんだけど、何回見てもGoogleマップに載ってないんだよ。ちょっと待ってよ。逆に何で二階建てぐらいの小さいマンションの「グランシエロ何とか」みたいな小洒落た名前のアパートはMAPに載ってるの? これはつまり、お金払った人の所有する建物からMAPに追加していくとか、そういうのがあるのかと。私が知らないだけで、そういう仕組みで出来てるのかと勘ぐりながら、混乱も混乱。でも、駅から見ただけじゃよく見えないけど、もしかしたら駐輪場の名前が「グランシエロ何とか」なんじゃないかと思ってきて、全部の駐輪場の目の前まで見に行って「グランシエロ……グランシエロ……」とか呟いて、それらしき看板を探してみたんだけど、ないよね。案の定。そうだよね。よくわかんないけど、そんな名前の駐輪場聞いたことないしね。
 MAPアプリ(というかiPhone)を手でぐるぐる回して「こっちが上? こっちが右?」「私は今、どっちを向いてると思われてんの?(←地図の神様みたいな存在がいると思っている)」そういう何かが私のiPhoneを空からのGPSとかで監視していて、私専用に地図を出してくれてると思ってる。だから、その神様的な存在が私をどっち向きに立ってると認識してるんだろうと考えて、結果よく分からなくなってくると、決まって私は「違う違う。そうじゃ、そうじゃなぁい」と鈴木雅之さんの曲を人目も気にせず口ずさんでいる。ようやく「あーなるほど、今私は下にいると思われてるんだな……」と一人で納得して、もはや殆どMAPではなく自分の目だけで「絶対こっちだ。だってこっちしかないもんね!(野生の勘)」とアタリをつけた。そして長い旅になった場合のことを不安に思ったから一旦トイレに行っておこうと思って駅トイレの個室のドアを閉めたら、意味不明な文言が殴り書かれてあるのが目に飛び込んできて、それを読んでいるうちにテンションがだだ下がり、凹み出し、すっかり恐ろしくなってしまった。

 何これ怖い……。何で私、こんな全然知らない場所に一人で来てしまったんだろう。これ書いた人はどういう思想なんだろう。街中で配るようなリーフレットに書いてあるならまだ分かるけど、何でトイレに書いたんだろう……。一体どういう人が……。まさかのダイイングメッセージだったとしたら……。やばいよ通報案件だよ……。私今日、それどころじゃないんだけど……。
 急に「私、帰れるかな」と不安に思っちゃったけど、それでもリーバイスを求めて一直線に歩こうと己の精神を奮い立たせ、自分の信じた道を行く。MAPはもうほぼ見ずに、こっちとしか思えないと思う方角に歩く。歩く。
 そんな時に目に飛び込んできた、見たことのないマッサージの看板。「全身もみほぐし 60分 2,980円」

 えぇーー。驚異の安さ! 永ちゃんは30分5,000円くらいするよ、っていうか、大体の相場ってそんなもんじゃない? めっちゃ入ってみたいけど、勝手に他の整体行くのもなーと。かかりつけの人がいるならその人にまかせた方がいいと言うしなぁ……と諦めて、ピカピカ光ってすごい主張をしてくる看板だけ記念に写真を撮って「ここの駐車場めっちゃ広ーい」とか感心しながら、その広さにちょっとうきうきしてしまい、あえてその駐車場を何故かジグザグと縦横無尽に歩いてアラレちゃんのように突っ切る。(子供ってこういう意味不明な行動取りがちだよね) ていうかこの日、本当にすっごい寒くて、なんかテンションがおかしかったんだよね。めっちゃ寒いし未開の地だし、誰にも頼れないし、被害妄想とかすごくなってきて「何かあの男の人、私のこと見てるっぽいけど『なんだ、余所者め』みたいに思われたのかな??」とか思ってしまったりとか。昔話とかドラマでよくあるじゃん、そういうの。街の人みんなが団結して、余所者を騙すみたいな不気味な感じ……。そういう妄想が止まらなくなってくるんだよね。そうなってきたらもうおしまいなんだよ。怖いとしか思えなくなってくるから。
 そうこうしてたらどんどん陽も落ちてきて、マジもう夜だよ。こわい! こわい! と心の中で叫びながら、極度にトイレに行きたい人並みの速度で歩いて行く私。
 そしてめちゃくちゃ広い道路に出て少しホッとしたのはいいんだけど、まさにゲームセンターCXで課長が行きそうな感じの昭和感溢れるゲーセンを見つけて「すごい! でも流石に怖すぎる、入る勇気はない……」と思いつつ、窓の隙間から中を覗くと「パチンコ台しかない!!」「そして誰も居ない!!」。ヒー。こういう雰囲気のゲーセンでは素敵な記憶が何ひとつないので、駐車場に停まっていた、車高の高い真っ白なベルファーレの持ち主の存在を警戒しながらもお店の外観を写真に収める。

 茨城に居た頃にこういうタイプのゲーセンあったなって思い出してさ。めちゃくちゃ田舎だったんだけど、そのゲーセンに私と同じ高校でイキり倒してるクラスメイト達(ほぼ全員ヤンキー)が飽きもしないで毎日毎日集ってるわけ。でも奴らは多分、せいぜいジュースを買うくらいのもんで、肝心のゲーム機にお金を落とすこともなく、何か知らんけどそこの店の門番みたいなツラして店の前にみんなで座り込んで煙草吸って吸い殻投げて、手叩いてゲラゲラ笑ったりとか通りかかる他の生徒の頭小突いて奇声上げたりしてんのよ。はーーマジで大っ嫌い、あの時期! よってこの北上尾の地には何の罪もないけど、こういう雰囲気苦手だな、とか思いを馳せながら駐車場に一台だけ停まっていた妙に車高の低い真っ白な車を見ながら「やっぱりハンドル近辺に、なんかふわふわしたやつ敷いてるんだな。そして透明のビニール的なもので押さえつけて何故かふわふわ感を消す。あれってヤンキーの万国共通のステイタスみたいなもんなんだ。ふわふわしてなかったら『お前なんでふわふわしてねーの?』みたいに言われるんだな、きっと」とか思ってたんだけど、私こう見えて、ほんっとーーにヤンキーに好かれるんだよ。何にも関わろうとしてないのに「おい吉川ァ!! ヒマーー??」とか声高に呼ばれたりとかして、仲間みたいに思われるんだよ。「あすなろ白書」とか「ロングバケーション」あたりの木村くん(「ひとつ屋根の下」の江口洋介さんかもしれない)になりきった感じで無駄にロン毛にしてカッコつけてるアホとか、どこで売ってんだって感じの暴走族御用達カラスマスクとかつけたバカに大声で話しかけられる気持ち、本当に本当にマジでガチで本当に最悪な思い出なんだけど!!
 あいつら今どうやって生きてんだろうな、みんな一回ずつぐらい側溝とかに片足突っ込んで盛大にコケて足でも折ってろとか思うけど、あの土地から離れない限りずっとヤンキー同士つるんでたりすんのかなーとか。でもよくあるけど、職場で人生の師匠みたいな人見つけて「俺、昔はホント馬鹿で。色んな人に迷惑かけて生きてて。でも俺……、そんな自分のこと恥ずかしく思いますわ。社長に会って、俺思ったんすよね。変わんなきゃなーって。俺、馬鹿ですけど。マジ、馬鹿ですけど! でも、お願いします。俺……いいすか。社長の下で、頑張らしてもらっても……いいすか……!」とか言って「……泣くやつがあるかよ。ほれ!」みたいに慰められて、涙拭きながら軽く頭下げて日本酒注がれてんのかな(照明が暖色系のスポットライトに変更、ゆっくりカメラ引く。BGM:「家族になろうよ/福山雅治」)みたいなの想像すると、それはそれですんげぇ腹立つのよ。曲止めろ、マジめっちゃ腹立つ!! 何だろう、何でこんなに昨日のことのようにまざまざとリアルに考えて当時と同じ、いや下手したら当時よりも盛大にムカつくんだろう。はぁーーーー、このゲーセンの壁と窓をボッコボコに粉砕して、ついでにあそこにあるヴェルファーレもフロントガラスを見る影もなくバキバキにしてやりたいわ。鉄パイプとか落ちてねーかな。あいつらが人生やり直しててもどうでもいいけど、私の想像の中にいい感じで歳とった顔して出てくんなよ高瀬、中田!! お前らホント嫌い!! 多分もう一生嫌い!! 特に高瀬、お前はホント別格にダントツで嫌い!! あんたさ、スマスマのビストロとかで木村くんが言ってウケがよかった台詞とか仕草とか、次の日絶対やってたじゃん。オリジナルみたいなツラで。で、それ昨日木村くんがやってたよねとか私が言うと、ろくでなしブルースみたいな顔して「は? 俺昨日のスマスマ見てねーんだけど」とか言ってたじゃん。何で月曜夜にスマスマがやってることは知ってんだよ!! 浅い奴め……。たまに言うじゃん。ヤンキーから牧師になった人は確かにすごく立派なんだろうけど、最初から牧師目指してた人の立場はどうなるんだという話。まさにあれだよ。高瀬が更生してても、私全然好きになれないんじゃないなと思う。若き日の思い出があまりにも鮮烈すぎる。

 ……というようなことを延々と考えつつゲーセン前で悶々として冷たい風に吹かれて震えてたら、めっちゃ気分悪くなっちゃったのよ。強烈な怒り(想像による)で吐き気もするし。そして急激に「倒れるかもしれない」というほどの異常な空腹に襲われたの。

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