J-POP音割れ問題の悲しすぎる真相が見えた……?【音圧競争】

※注意
 この記事は「LUFS」「ラウドネス」「マキシマイザー」「音圧競争/音圧戦争」などの知識を持った方を読者として想定しています。
 大丈夫なら本文へ。

 こんにちは、音楽系Vtuberの渚乃奏です。

「最近のJ-POPの音が酷い」

 という話を耳にしたことがある人はちらほらいると思います。実際、私も酷い音源を耳にすることは多いです。

 その原因として「音圧競争のせいではないか?」という記事も、よく見かけます。私も、その点は同意です。
 しかし、それにしても音割れしている音源が多すぎではないでしょうか?

 というわけで、今回マキシマイザーである実験を行ったところ、音割れ音源が横行している現象の裏側に、一つの仮説が立てられました。

 私が行った実験は次のようなものです。

1.マキシマイズしていない自作音源を用意し、6つのトラックに同じ音源をコピーする。
2.各トラックに同じマキシマイザーを挿し、2.5デシベルずつゲインを上げていく。(画像参照)

3.各トラックを個別に書き出していき、ラウドネス(LUFS)を測定する。

 その結果、次のようになりました。

 「Integrated」の項目が、各音源の全体ラウドネス。つまり聴感上の音量で、数字が少ないほど音が大きく感じられます。
→訂正:数字が0に近付くほど、聴感上の音量が高くなります。
 なお、ダイナミックレンジが元音源の時点で低い値になっているのは、楽曲のサビ部分のみ抜き出して書き出したためと思われます。

 で、ここから本題。

 ゲインを上げていない音源(一番上)が「-12.4LUFS」となっていますよね? その一つ下、ゲインを2.5db上げた音源は「-9.9LUFS」になっています。

-12.4+2.5=-9.9

 という、単純な計算通りの結果です。

 ところが、ゲインを5.0db上げたデータを見ると「-7.6LUFS」になっています。

-12.4+5=-7.4

 なので「-7.4LUFS」になると思っていたのですが、数値にずれが生じています。
 このずれは下に行くほど、つまりマキシマイザーのゲインを上げていくほど酷くなっていきます。

 そして、最終的にはゲインを12.5db上げた時、ラウドネスは「-4.3LUFS」という結果に。
 ゲインを10db上げたデータが「-4.9LUFS」なので、このあたりに来ると、マキシマイザーのゲインを2.5db上げているのにラウドネスの値はほとんど変わっていないことになります。

 そして、データを再生すると、あることに気が付きます。

 ラウドネスの上昇度が低下していくと同時に「音割れ」が酷くなっていくのです。
 つまり、マキシマイザーはある程度ゲインを上げていくと、途中からラウドネス値はほとんど上昇しなくなり、代わりに音質だけが劣化していくのです。

 これが、いわゆる「音割れJ-POP」を生み出している正体ではないか?

 というのが私の仮説です。
 つまり、聴感上の音量が上がっているのかどうかも確認せずに、マキシマイザーのゲインだけを強引に上げていった結果、音割れだけが進行した音源が制作されているということです。

 もしこれが、昨今の(特にJ-POPで)横行している音割れ音源の制作背景だとすれば、それはもうエンジニアの怠慢以外の何物でもありません。

「音圧を上げる」

 などとのたまいながら、実際に音が大きくなっているかすら確認しないで、何も考えずにマキシマイザーを操作しているのです。

 なお、今回制作したサンプルを、すべて-13LUFSに揃えて書き出したデータを用意してみました。(画像参照)
 一番最後に、冒頭と同じデータを配置したので、最後まで聞くとマキシマイズでどれほど音が劣化したのかより分かりやすくなっています。

 ただし、音源を直接この記事に貼ることができないようなので、別記事扱いで投稿しておきます。

 ちなみに、私は今年からマキシマイズを基本的に止めています。ラウドネスノーマライゼーションが導入されているYouTubeに、海苔波形を投稿するメリットはないからです。

 では、また。

追記:付録として、マキシマイザーでどのくらいノイズが発生しているのか分かりやすいデータを用意しました。


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渚乃奏

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