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伝わらない言葉、それは果たして言葉なのだろうか

伝わらない言葉
意味のない言葉

それはただの音だな

そんなことを
ふと思った

オーストリア連邦鉄道の車内はドイツ語であふれかえっていた

インスブルックからハルシュタットへ
ハルシュタットからインスブルックへ
行きも帰りも約4時間半の電車旅

私が何も知らずに乗った車両は、全ての席の背もたれに、目を閉じてニッコリ微笑むような顔文字と「quiet zone」という文字が書かれた緑の布がかけられていて

・声は小さく
・スマートフォンや携帯はサイレントモードに
・イヤフォンからの音漏れ注意

なんて、日本でよく見るような注意書きも、車内のあちこちで見かけるような車両だったのだけど、仲間と長距離列車の旅を楽しむ人々にとってはそんな注意書きは目にも留まらぬ瑣末なもののよう

車窓の風景を楽しみながらクラシックでも聴こうとカバンに入れていたウォークマンは、電車が走り出して数分でまさかの充電切れ

人々の楽しげな会話を耳にしながら、電車に揺られる4時間半だった

*

外は生憎の曇り空

晴れてればもっと綺麗なんだろうな…そんなことを思いながらぼんやりと窓の外の風景を眺めていると、いつしかまぶたが落ち始める

時差ボケもあってねむたさ極まるお昼過ぎ

眠気にあらがうことはやめて眼を閉じると、耳から入ってくる情報に意識が集中する。楽しげな、でもどこかほんの少しquiet zoneを意識したかのようなひそやかな話し声

女性が話しかけて
男性がそれに応える

日本語はもちろん
英語とも発音の異なる
異国の言葉

聴き取ることも、意味を理解することも全くできない言葉は、耳から入って、何も残さずに耳から出ていく

それはもう私にとっては言葉ではなく
ただの“音”だった

オーストリアに向かう飛行機の中で、「TOLKIEN (邦題: トールキン 旅のはじまり)」という映画を見た

J.R.R.トールキン

「The Lord of the Rings」の原作者。その人の生涯を描いた映画で、中学生時代に映画から指輪物語にどハマりして今も熱烈な指輪ファンである私は、映画のタイトルを見た瞬間に視聴ボタンを押していた

イギリスの名門オックスフォード大学の英語英文学科教授だったトールキンは、言葉に対する知見が深く、The Lord of the Ringsの中では彼が作った言葉(エルフ語とか)が度々登場する

そんな彼の人生を描いた映画の中で、トールキンの想い人であるエディスは彼にこう語る

“A word isn’t beautiful just because of its sound. It’s marriage of sound and meaning.”
言葉が美しいのは、その音のおかげじゃない。言葉は音と意味の繋がりよ。

また、トールキンの言語学の恩師であるライト教授は彼に告げる

“Language is never nonsense.
Language is meaning. History, layer upon layer upon layer. And word without meaning is what? Merely a sound.”
言葉は決して無意味なものではない。言葉は意味あるものだ。歴史や、沢山のものの積み重ね…。意味のない言葉とはなんだ?たんなる音だ。

そこに意味のない言葉
相手に伝わらない言葉は
ただの音

母国語である日本語を私は全て聴き取ることができる。でも、聴き取ることはできても意味がわからない、あるいは相手が何を言いたいのか分からず、自分の中に残らない言葉もまれにあって

そういう時の日本語は、母国語とはいえど、私にとってただの音なのだろう

「伝える」ことの大切さが色々なところで言われているけど、それはただ「言葉という形にして相手に告げればいい」というものではない

自分の想いや気持ちをこめて形にして、それを相手が受け取ってくれる。そこで初めて言葉は言葉になる

ありがとうも
愛してるも
相手を気遣う言葉も
誰かを思った忠告も
自分の想いを綴った文も

誰かが受け取ってくれなければ、ただの音

耳障りのよさだけではなく、音と意味の結びついた、相手にきちんと伝わる美しさを持った言葉

そんな言葉を紡いでいこうと、改めて思った

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