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juice barはつらいよ〜自殺頭痛と闘うラッパー・NG2M編〜

昨日のnoteが反響がありすぎて困惑してしまった。本人としては「オカマです!貧乏です!さぁ笑え!」くらいの気持ちで書いたつもりだったのに皆さんにご心配をかけてしまった様で申し訳ない。差し入れもたくさん頂いてしまった。そりゃ四十手前の男性の日給が1,000円だと知ったら皆びっくりするわな。これ以上心配をかけたくなかったので、インスタのストーリーにも「元気です」ってコメントと共にいくちゃんから頂いた差し入れの写真をアップした。


そしたら茨城のゲイの友達から「あんたコロナになったの?」と心配するDMが来てしまった。なるほど、国からの支援物資に見えないこともない。でももはや高級食材となってしまったスパムを国は送ってきたりはしない。重ね重ね心配を掛けて申し訳なく思う。石鹸やボディーソープも皆さんから頂いてしまい、「そうだよなぁ、身内からレモン石鹸泥棒が出るのはみんな嫌だよなぁ」としみじみ思ったりもした。

そんな中、高級ブランド・ロクシタンのボディーソープを持ってきた男がいた。

さっきから高級高級ってうるさくてごめんなさいね。なんせ日給1000円のゲイからしたらもはやジョージアの170円のカフェオレすらも高級品。なんて書くと皆差し入れで持ってきちゃうからうっかり書けない。

話が脱線したが、NG2Mという駆け出しのラッパーがいる。NG2Mと書いてナガトモと読む。駆け出しと言っても歳は30台半ば。うちのオーナーの熱烈なファンで、家族でよくお店にも来てくれる。
何でも奥さんと一緒にNOTEを読んでくれているそうで、昨日のNOTEを読み終えた奥さんがストックしていたボディーソープをNG2Mに持たせてjuicebarrocketに送り出したという。本当に申し訳なさすぎる。しかもロクシタンでも人気のラインのチェリーブロッサム。これで艶やかな桜の香りを漂わせながらスムーズに髭も剃れる。

私は先日のNOTEを軽い気持ちで書いたのでまさか本当にボディーソープを持ってきてくれる人がいるとは思わず、人の優しさに触れてうっかり号泣してしまったのだけど、NG2M君もその冗談に乗っただけでまさか泣かれるとは思ってなかったみたいでひたすら困惑してたという地獄絵図が昨夜は繰り広げられた。とんだ店だよ。

そんなNG2Mもまた、苦境に立つラッパーである。
実はNG2M君は群発頭痛を抱えている。自殺してしまう程つらい痛みに襲われることから自殺頭痛とも呼ばれている。難病指定はされていないが、1000人に一人の割合。原因は不明。ちなみにハリーポッター役で知られるダニエルラドクリフも群発頭痛持ちである。
群発頭痛で悩む当事者に会うのは初めてだ。私はよく「ゲイの人に会ったの初めて」と言われる。その度に「坊や知ってる?東京は広いの、色んな人間がいるのよ」なんて得意げに思ったりするんだけど、うっかりNG2Mにも「群発頭痛の人に会ったの初めて」と言ってしまった。東京は広い。色んな人間がいる。坊やはあたしだった。

周期は2年に一度。目の奥がどうにもらないくらい痛むという。じっとしているのも耐えられない、あまりの痛みに嘔吐する。明かりすら刺激になるので暗い部屋に引きこもる。一回始まると大体数十分から一時間程続く。それが一ヶ月続くという。薬はあるが保険適用で一回分400円。予兆があるのでその際に服用するが、効いたり効かなかったりする。医者には「2年後、もっと良い薬が出るといいですね」と言われたらしい。

私はよくまとめサイトで自殺頭痛スレを見ていで、後頭神経痛になった時もあまりの痛さに「群発頭痛だったらどうすっぺか」と怯えたことがあった。
だからこそNG2M君にも興味本位で聞いてしまったが、想像しているよりも壮絶だった。神様は時々、人にとんでもない試練を与える。なのに目の前でこのひとは何事もないかのようにヘラヘラと酔っている。
「正月も酒でやらかしまして」とどうしようもない話を聞いて、いいよ、私が全部許すからと思ってしまう。酒で吐くつらさの方が頭痛で吐くつらさよりマシに決まってる。
一年後か一年半後かわからないが、またこの人は痛みと闘い、そして耐え抜くんだろうなと想像してしまう。人はなんて強い生き物なんだろう。

NG2Mの曲は明るい。

流れるようなピアノの音色。短めの緩い曲調。うちの店に寄せすぎと思わないこともないが、二年に一度戦い抜くひとの曲にも聴こえない。その強さを自慢することなく、ただひたすら自分の運命を受け入れる。


お店を始めた日にNG2M君が来てくれたことを思い出す。あの希望に満ちた日を。もし気持ちが負けそうな日が来たとしたらまたこの曲を聴こう。

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