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赤井沙希は本当に強くて美しいプロレスラーだった。

尾崎ムギ子氏に連れられて、またまたまたまたDDTプロレス『Ultimate Party 2023』を見てきました。

実は飯野さんが更生施設でフェロモン抜きに励んでいる間に私は、須見和馬君と言う新しい推しを見つけてしまった。

須見和馬

違うの、違うの。飯野さんは飯野さんで推しなんだけれど、DDTを見ているうちに私が好きなプロレスのスタイルがわかってきて。たぶん私は張り手とかキックよりも選手のアクロバットな動きや投げ技が好きなんだなと。もう須見君のドラゲ仕込みのアクロバットな動きは新体操やフィギュアスケートを観る時の楽しさに近い。バク転とドロップキックのコラボを目の当たりにした時は、人の身体能力ってここまで上がるのかと感動すらした。そしてこれを言うのは反則だとは自分でもわかっているんだけど、元彼にかなり似ているのだ。このままアクロバット先輩の遠藤さんみたいになってほしい。
しかも須見君はまだデビュー一周年を迎えたばかりなので研修生や瑠希也と一緒に試合中もリング周りのケアもしている。そのひたむきな姿もとても愛らしく、ついつい目で追ってしまう。ヒロムが来ようが、クリス・ジュリコが来ようが、私はいつも須見君を応援しているのだ。

しかし今回は須見君の他に見たいものがあった。赤井沙希の引退試合だ。

赤井沙希。赤井英和の娘にして元オスカー所属のタレント。私は見たことがないがヘキサゴンに出ていたこともある。世間の認識はこんなものかもしれない。
しかし彼女は10年という長い間、DDTに在籍したプロレスラーでもあった。

私がプロレスに、というかDDTにのめり込む過程にいつも赤井沙希の姿はあった。
男同士の激しい肉弾戦は見ていて楽しい。しかし泥臭すぎてしまう。そんな中、赤井沙希という一輪の華が舞うのは本当に刺激的だった。体格差というハンデがありながらも、eruptionというチームでマッチ戦という彼女のキャラクターを活かせるスタイルで、本当に赤井沙希は輝いていた。

赤井沙希は個人的には決して強いプロレスラーではなかったと思う。というかあのスレンダーなバディでは男性を相手にすると攻撃を喰らわすのも受けるのもなかなか難しい。私の新しい推しの須見和馬君ですら、165cm69kgという細さでドロップキックが相手に響かないこともある。174cm53kgのスレンダーな赤井沙希なら尚更だ。

私が観た赤井沙希の試合を思い出そうとすると、男たちから胸元に張り手やキックを喰らい、痛みでリングをのたうち回る赤井の姿が浮かんでしまう。赤井の試合の風物詩、というとセンスの悪い言い回しだが、私はそんな赤井を何度か見てきた。
引退試合でも元eruptionの樋口が「さあ耐えてみろ」と言わんばかりの強い張り手を赤井にお見舞いし、彼女もまたリングに転がりながら悶えていた。

しかし凄いのがこの後だ。どんなに苦しくても痛くても彼女は立ち上がる。よろけながら間合いを見て男たちを蹴り上げ、コーナーポストの上から跳び、投げ技を仕掛ける。まさに不屈のプリンセス。そんな気高い赤井沙希を誰が弱いと笑えるだろうか。そして坂口、岡谷というeruptionの仲間が彼女をサポートし続けた。だから「赤井沙希は強い」と私は自信を持って言える。赤井は男たち相手に怯むことなく、殴られても投げられても何度も立ち上がる不屈のプリンセスなのだ。

引退試合もまた激しい攻防だった。中でも樋口の強さは圧倒的だった。あの強さに観客の私も恐怖を感じる程だった。そして残念ながら引退試合にしてeruptionは負けてしまった。負けた瞬間、号泣する岡谷の顔がモニターで流れ、私もおもわずもらい泣きしてしまった。

試合前にこれまでのeruptionのダイジェスト動画がモニターに流れていた。中でも坂口が赤井に「リングの上で泣くなといつも言ってるだろ」と叱責するシーンが印象的だった。きっと若手である岡谷もいやというほど聞かされていただろう。
にも関わらず、岡谷は泣いた。一瞬だったかもしれないが、私はそんな岡谷を見て「本当にeruptionは良いチームだったんだろうな、本当に赤井沙希は良い選手だったんだろうな」と感じることができた。eruptionが入場する時はキングギドラの「平成維新」が流れていたがあれがDDTで聴けなくなるのは少し寂しい。

有終の美、とはいかなかったが、赤井沙希はいつも不屈でいつも美しかった。そしていつも強くいつも気高い姿を披露し続けた。

引退セレモニーの時の赤井の美しさを私はどう言葉にしたら良いかわからない。10カウントが終わった瞬間にコーナーポストに駆け上がる。たくさんのテープが飛んでくる中、その圧倒的な美しさと強さを誇示した赤井沙希の姿はまるでサナギから孵って舞い始めた蝶のようであった。


DDT歴半年未満の私が、赤井沙希の試合を見たのはたかだか数回だ。でも「プロレスラー赤井沙希」の終焉を見届けることができて本当によかった。彼女の願い通り、プロレスの良さが、DDTの楽しさが赤井沙希の試合を通して私という人間に伝わってきた。

私はこれからも酒の席で酔うとプロレスの話、そしてDDTの話をするだろう。そして必ず赤井沙希の名前を出すだろう。
でもプロレスに興味がない人は「赤井英和の娘でしょ」「タレントレスラーでしょ」と悪気なく言うかもしれない。わかるよ、そう言いたくなる気持ち。私もイベント会社で働いていた時に釣りアイドルやパチンコアイドルをいやというの程見てきたもの。

でもそんな時は全力で否定する。
「違うよ、赤井沙希はタレントレスラーじゃないよ。世界一強くて美しいプロレスレスラーなんだよ」と言うだろう。私は赤井沙希の闘う姿を一生忘れない。

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赤井沙希さんの自伝「強く、気高く、美しく」が21日に発売されます。父との関係や、DDTでの振り返りなど赤井沙希の半生が綴られた一冊。なんと取材協力は我らが尾崎ムギ子。ぜひ皆さん読んでみてね。

強く、気高く、美しく

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