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ーあこぎ小説ー  誰が私をこうさせたのか  最終話

 私は娘の異変に気付きました。

 買ってやった覚えのないアクセサリーを髪につけています。

 買ってやった覚えのないかわいい色のスニーカーを履いています。

 顔もなんだか大人びています。

 ある晩に、私は娘を問い詰めました。

 それで娘は本当のことを言いました。娘は小学生売春をしていたのです。

 同級生や6年生に、売春行為をしていたのです。

 「なんでそんなことを⁉」

 「だって月にお小遣い300円じゃ何も買えないもん

 おしゃれしたかったんだもん。遊びたかっんだもん。

 ・・・・・・おかあさんと同じことをしただけよ!」

 「!」

 気が付くと私は娘の首を両手で絞め殺していました。

 そうでした。私は自分の持っているものをすべて売ったと思っていたのですが、私には娘がいたのでした。

 娘は、私にとってたいせつなたいせつな宝ものでした。

 なのに私は、娘の気持ちなんて、考えていなかった。

 私は、「ごめんね、こめんね」と言いながら、娘のジヤージを脱がし、下着も新しいものに変えて小学校の制服を着せて、布団を敷いてそこに寝かせました。

 白いガーゼのハンカチを娘の顔にかけました。

 私はアパートの部屋のドアを開けました。

 冷たい雨がふっていました。私は部屋から出ました。傘なんていりません。靴なんていりません。

 私は冷たい雨のなかを裸足で近くの交番に自首しに行きます。


 その後彼女は裁判を受けて、懲役7年の実刑判決が下った。

 彼女は女子刑務所に入った。

 彼女が生活保護という制度があることを知ったのは、女子刑務所に入ってからだった。他の女囚たちから教わったのだ。

 借金を全額返済した時点で、生活保護が受給される条件はほとんどそろっていたのだ。

 だが彼女は知らなかったのだ。

 ある若い女囚が彼女のことを嗤った、「ははは。意外と馬鹿だよこのおばさん」と。

  

                         おわり







 





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