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【悩み】敬語をやめられない

私は敬語をやめられない。
それがここ数年の悩みだ。

一旦敬語でスタートした関係性を、
タメ口に直すことができない。
全然できない。それで困っている。

例えば、友達の旦那さんがいるとする。
友達は同い年。旦那さんも同い年。みんな昭和58年生まれ。出会って数十年。それでも、友達の旦那さんには、いまだに敬語である。

その理由は、出会った当初が敬語だったから、
がいちばん大きいのかもしれない。

だって、同い年だとしても、友達の彼氏に「はじめまして」で、いきなりタメ口では話しかけられない。そんなフワちゃんのようなハートの強さもコミュニケーション能力も、私は持ち合わせていないからだ。

そして一番の問題は、その後どのタイミングでタメ口に切り替えたらよいのかわからない事だ。

前述の親友は今年で結婚して14年目くらいだろうか。今思えば、結婚1年目が旦那さんへのタメ口ターニングポイントだったのか、5年目だったのか、10年目だったのか。それがわからず、敬語のまま今に至る。

この悩みは、友達の旦那さんの話だけではない。

義理の姉にも、兄が結婚してすぐに
「カナちゃん敬語やめたら?」と、
提案して頂いた。でも、出来なかった。
これにはまた違う理由がある。

義理の姉はまず「姉」である。兄の妻だし、生物学的に実際年上だ。
そして何より、私は、嫁としての振る舞いも完璧で気遣いの出来る義理の姉を、とにかくリスペクトしているのだ。尊敬している年上にタメ口は無理だった。あれから10年以上経つが、やっぱり今でもガチガチの敬語である。

同い年もだめ、年上もだめ。
では、年下はどうか。

これがどっこい、ダメだった。
「はじめまして」の人にはまず敬語。この壁が自分で崩せない。悪いことではないんだろうけども。

数年前に地元にUターンしてきた友達が、旦那さんを紹介してくれた。なんと6つも年下。それでも、だめだった。年下だとわかっても、それが崩せない。

高校生くらいならタメ口で行けるが、成人してたらもうだめ。

しかーし。
こんな私が、苦節10年以上かかって、敬語からタメ口にランクアップ出来た女性が、たった一人いる。

美容師のA子さんだ。
これは、私にとって、奇跡に近い。

元々、A子さんのお母さんは母の陶芸教室の生徒さんだった。娘さんが美容師になったと聞いて、こちらに移住したばかりで美容室を探していた10年前、私はそこに通うことにした。

当時A子さんは、地元の美容室のスタッフとして勤めていた。
紹介してもらい緊張しながらその美容室に行ってみると、「こんにちは!」と目の大きい、めちゃくちゃ美人なA子さんが迎えてくれた。

母同士のつながりはあるので、小さい頃に一度くらいは顔を合わせたことがあるかもしれない。でも、正直顔は覚えてなかった。そんな程度の認識で、ほぼ「初めまして」の「こんにちは」だった。

A子さんは、同い年。小中高はどこも同じではないが、地元は一緒。狭い街なので、共通の知り合いは多い。
世間話をする中でも、私はずっと敬語だった。会ったことがある同い年の人でも、美人だと敬語になるという法則がわかった。

そこから、10年以上。
美容室に行く間隔が信じられないくらい空く私だが、それでも浮気せずA子さんの元へ通い続けた。それはA子さんが結婚しても、独立しても、家の近隣に人気の美容室が出来ても、それでも通い続けた。

私は人見知りで、昔から新しい美容師さんに切ってもらうたびにめちゃくちゃ緊張する。
でも、人見知りのくせにこだわりが強いので、東京でも、引っ越すたびに、新しい美容室を決めるのに時間がかかった。

美容室や働いている人たちの雰囲気、価格、サービス、かかっている音楽、香り、室温、置いてある本まで、なかなかすべて合うところを見つけるのは難しい。

A子さんのサロンは、
私にとってはパーフェクトだった。

そして何より、長年通ったからか、私の髪質や好みを良くわかってくれている。
長い関係性の中で、どんな家族構成で、私や家族がなんの仕事をしていて、どんな性格かも知ってくれている。そして、普段人の話を聞くことの多い私の話を聞いてくれて、程よいリアクション。安心して「お客様」の立場になれる、そんな安堵は何物にも代えがたかった。

それでも。
それでも私はずっと敬語を崩せなかった。

そんな私が、今、A子さんにはタメ口になった。
なんと、A子ちゃん、と呼んでいる。
なんという、タメ口革命。

それは単に、やっぱり敬語は変だと気づいたからに他ならない。

同い年。
長年の付き合い。
お互いの家族構成も、仕事もよくわかっていて、年に数回しか会わないけど、家族の愚痴や、流行りのドラマや、趣味の話をする。10年以上マンツーマンの関係で、いよいよ敬語は合わなくなってきた。忘れちゃならんが、何せ同い年である。

気づいていた。
薄々気づいてはいたが、ここからが難しい。
問題は、敬語からタメ口への変化グラデーションを、いかに自然に行うか、である。

A子さんは、私をカナちゃんと呼ぶ。予約を取る時のLINEもタメ口で聞いてくれる。なのに私は敬語で返信する。

A子さんと呼ぶのがなんか申し訳無くなってきた。なので、5回に1回ぐらいの頻度で、A子ちゃん、を混ぜた。緊張した。

その頻度を上げていく。
3回に1回。
2回に1回。
ついに、A子ちゃん呼びが定着するまで、5年はかかったと思う。
A子さんと呼んでみたり、A子ちゃんと呼んでみたり。一貫性のない私に付き合ってくれてA子ちゃん、ありがとう。←タメ語。

予約のLINEも、ちょっとずつ敬語とタメ口を織り交ぜてみた。

「来週あたりでカットとカラー出来る時間ありますか(←敬語)?忙しい時期にごめんね!(←タメ口)」てな感じで。
LINEは送る前に、いつも不自然じゃないか何度も読み直した。

それをオールタメ口にするまで5年程。
長い時間をかけて、私はタメ口関係を手に入れた。

現在、私の人間関係において、A子さん以外では、敬語からタメ口のランクアップは、まだ見受けられない。

今後の目標としては、まずは友達の旦那さん達とは、これからは敬語半分タメ口半分で話していき、5年ほどかけて、オールタメ口にしていきたいと思っている。

義姉は、知り合って十数年、毎回頑張ってはいるが、敬語が取れる気がまだしない。

ただ、どうか、みなさん勘違いしないで欲しい。

気軽に送ったLINEに敬語しか返って来なくても、こんなに仲良くなったのにこの人いつまで敬語なんだろ、と思っても。

それは、決して心を開いてない訳でも、
仲良くなりたくない訳でもないんです。

多分、私はしばらく敬語ユーザーです。

愛想の良さと声のデカさとは裏腹に、
人見知りで臆病なだけなんです。

どうか、わかってくれると嬉しいです。
基本、人は大好きです。

みなさん、これからも、
どうか仲良くしてください。

そこんとこよろしく(←タメ口)。

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