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鳴子温泉への旅 下

 いつもお読みいただき、ありがたうございます。サウナー・鉄子・ミニマリストの玉川可奈子(歌人)です。

 今回は、前回の続きです。鳴子温泉からの帰りになります。最初にお断りいたしますが、温泉の話しは最初に少しだけして残りはほぼ鉄道です。どうかご了承ください。そして、最後までお付き合ひください。

鳴子温泉の朝湯

 楽しみは まれなる旅の 宿にある 白く濁れる 湯につかる時 可奈子

 私が泊まつてゐたのは、鳴子温泉の姥の湯。今朝は六時に起きました。
 それにしても、暖房設備がほぼ無い環境は寒いですね。起きてからすぐに温泉に入りました。温泉宿の強みは、起きてからすぐに温泉に入れることですね。
 今日は昨日と違ひ、よく晴れてをり、空気が清々しい。

 「良い一日になればイイナア」

 今朝は、硫黄泉と単純泉に入りました。

 鉄分のかをりがする単純泉は、ぬるくて気持ちが良い。自分で自分の首と肩を揉みながら、のんびり長く入りました。ジンワリと温泉の成分が身体に染み渡る感覚を味はへました。

 硫黄泉では、湯治してゐる方とお話しができました。
 コロナで客はだいぶ減つたとのことで、宿の経営も大変でせうと言つてゐました。年に一度はこちらに来て温泉に入るとか。
 ちなみに、姥の湯の硫黄泉はそこまで硫黄のにほひが強くないやうに感じます。滝の湯の方が、硫黄のにほひがしますね。

 一度、二、三週間、かうした宿で湯治をしたいものです。できれば、秋田県の玉川温泉や、群馬県の万座温泉あたりか、今回泊まつた姥の湯あたりで。

 それと、今治タオルつて優秀ですね。ホワホワでかつ吸収力がすごい。乾くのに時間がかかりますが、厚手ですごく良いです。今回のお風呂巡りでは大活躍でした。

陸羽東線から山形新幹線

鳴子温泉駅
駅前の足湯

 七時に宿を出て、歩いて鳴子温泉駅に帰りました。七時三十分発の新庄行きのキハ110系が、早くも3番線ホームにゐたので乗り込みました。
 乗客は私だけで、発車まで誰も乗つてきませんでした。

 「これ、収益、大丈夫?」

 JR東日本も、米坂線とかヤバい路線たくさんあるけど、陸羽東線もその例に漏れないのでは。東京に帰つたら『絶滅危惧鉄道2023』(イカロスMOOK)を読んで確認してみます。

陸羽東線 キハ110系

 列車は、陸羽東線を西に向かひます。トンネルを抜けて一瞬見える鳴子峡の絶景は、この路線の楽しみの一つです。車窓は間もなく四月といふのに雪景色。ひさかたの光に照らされて、いとあはれな景色、木々の中をうち眺むればふくろふの一羽も居さうな中を列車は走ります。

陸羽東線車窓

 分水嶺の近くであり、芭蕉が奥のほそ道の旅で泊まつた封人の家の最寄りで知られる堺田駅も、雪景色の中にありました。人が来ない証拠に、雪がそのままです。旅人の目には一種独特の風情を感じられるこの景色も、経営する側から見ればゆゆしきものと映りませう。

陸羽東線車窓

 赤倉温泉駅でやうやく三名の乗客がありました。その後、最上駅で高校生が二人乗りました。部活でせうか。人生の一番大切な時を学校の「部活」如きに費やすのは可哀想に思へます。
 私も高校生の時に部活動に熱中してゐました。そして、大学でもその部活を続けたいと願ひ、母校に進学しました。しかし、先輩と揉めたり、理不尽なことに我慢ならなかつたりで、すぐに辞めました。辞めたことに後悔はありませんし、正解でした。むしろ、辞めたから、好きなことがたくさんできました。今につながる経験をたくさんできました。青春18きつぷの旅然り、各地の温泉巡り然り。部活を頑張つてゐる人は将来、会社入つて役立つなどといふ人もゐますが、それつて奴隷になれと言つてゐるやうなものです。部活を頑張つたから、使へる人間になる、といふのは出鱈目です。以下のサイトは御参考までに。

 閑話休題、話しを元に戻しませう。瀬見温泉駅を出たあたりから、曇つてきました。なほ、瀬見温泉駅から外国人の女性が一人で乗つて来ました。瀬見温泉に行くとは、中々通ですね。景色を見ると、小雨、小雪、どちらでせう、パラパラと降つてゐます。東長沢駅では完全に雪が降つてゐました。

 「あゝ北国にゐるんだナア」

といふ実感を、春の終はりに実感しました。

陸羽東線車窓

 陸羽東線の旅を終へ、新庄駅に着きました。温泉の効果が持続してゐるのか、身体がじんわりポカポカしてゐます。流石、鳴子温泉。

 新庄駅から山形新幹線で赤湯駅まで行きます。駅のお蕎麦屋さんに行かうとしたのですが、休みでした。ニューデイズでささやかな山形の特産を買ひ朝食としました。ベタチョコ(たいようパン)は、パンにチョコが乗つかつてゐて、甘くて美味しいです。
 新庄は初めて尋ねた東北なので、思ひ入れがあります。機会がある時にゆつくり散歩したいものです。

ベタチョコは山形の名物

 新庄駅で、つばさ136号に乗ります。私の乗つた12号車は、発車の時点で一割程度の乗車でした。定刻の九時十六分に発車しました。車窓は、雪の中。白一色に木々と山の色、そして家々の色が織りなした見飽きないものでした。

つばさ136号
つばさの座席

 新幹線なのに、新幹線の感じがしないのは、ここと秋田新幹線ですが、両者ともに冬の景色は楽しいものです。

山形新幹線車窓

 最初の停車駅は大石田駅です。ここは、銀山温泉の最寄り駅で、駅前からバスが出てゐます。村山、さくらんぼ東根、天童と南に行くほど空は晴れて雪も減りました。山形駅で一気に混み、私の隣にも若い女性が乗つてきました。
 かみのやま温泉に停車し、次の赤湯駅には十時十六分に着きました。ここから、山形鉄道フラワー長井線に乗ります。山形鉄道に乗るのは七年振りくらゐになります。

山形鉄道フラワー長井線

フラワー長井線 YR-880形 赤湯駅
YR-880形 ボックス席

 赤湯駅十時四十七分発207Dは、ホームに待機してゐました。桃色の花々にラッピングされた車体が可愛いですね。車両は昭和六十三年に製造された、YR-880形。三十年以上、運用してゐます。ボックス席に座りました。発車五分前に運転手が現れ、運転席に座りました。隣のボックスには、鉄道ヲタクと思しき二人組がゐます。
 コーヒーを飲みながら、車窓を眺めてゐました。
 宮内駅は、うさぎのもっちぃ駅長で知られてゐますが、「ないしょ話」の看板があり、作詞した結城よしをはこの地の出身だとか。「ないしよ ないしよ ないしよの話は アノネのネ」の歌です。

 おりはた駅を発車して、間もなく、休耕田にキジのオスが一羽ゐました。
 遠くの千メートル級の山々には、雪を冠し、雄大です。
 今泉駅では、列車の交換を行ひました。JR側のホームにはキハ110系の米沢行き(米坂線)が停車してゐました。米坂線の復旧はいつになることやら。JRニュースでも、「当分の間」は今泉駅から米沢駅間は運休となつてゐます。只見線を復旧させるくらゐだから、米坂線も復旧させると思ふのですが如何でせう。
 長井駅で、数人の乗客が降りて行きました。赤湯駅で乗つた鉄ヲタも降りました。駅舎は大きな建物でした。駅舎と一体となつた市役所なのですね。かういふ取組は良いですね。
 のどかな田園風景といふべき車窓に癒されつつ、眠気も襲つてきます。ローカル線の旅は、のんびり過ぎて眠くなることがしばしばあります。

山形鉄道車窓
山形鉄道車窓

 白兎駅は、どんな駅か前から興味をもつてゐましたが、来てみると田舎の小駅です。民家と田んぼ、遠くに山があるのみですが、それが最大の魅力でせう。

白兎駅
最上川

 四季の郷駅を出て最上川を渡り、しばらく行けば終点の荒砥駅です。ホームには数人の人がカメラを構へて入線してくる車両の写真を撮つてゐました。

荒砥駅

 十一時四十七分。つかの間の滞在で、再びフラワー長井線の客になりました。
 帰りの車内は子供が多く、突然発する奇声に眉を顰め、「早く降りて」と願ひながら車窓を眺めてゐました。注意しない親も親ですね。Air Pods Proのノイキャンを突き破つてくるのは、本当勘弁(特定の音に敏感な私は、子供の奇声やサイレン音などでパニックになり、過呼吸を起こします。中々、人に理解されませんが)。

山形鉄道車窓

 子供と親は長井駅で降りて行きました。一安心。次の南長井駅では、長井高校の生徒が数名、乗車して来ました。これも部活帰りですね。

まさかの…

赤湯から719系

 赤湯駅には、十二時三十九分に戻つてきました。ここから、各駅停車に乗り換へます。そして、米沢駅、福島駅と乗り継ぎました。残念だつたのは、青春18きつぷで東北を旅行する者の天敵である701系に乗れなかつたことです。私は、701系を敵視してゐないので、何の問題もありません。なほ、乗車したのは719系でした。

 また、プロレス界のど真ん中といへば長州力のWJですが、駅弁界のど真ん中を行くのは、米沢駅の牛肉どまん中です。食べようと思つたのですが、米沢駅での乗り換へ時間があまりなく、だめでした。

 米沢駅を出発してから、雲もなく、太陽が照りに照り、車内も暑いくらゐでした。山形市内で見られなかつた積雪も見られます。山の中はその量に驚かされます。

奥羽本線車窓

 途中の峠駅は、「峠の力餅」で有名です。かつてのスイッチバック駅でしたが、今ではスノーシェードに覆はれて、その名残さへありません。
 立ち売りのおぢさんがゐたので、力餅を買ひました(千円)。糖質取り過ぎな感じですが、けふは仕方ありません。チートデーです。

峠駅
峠駅 立ち売りのおぢさん
峠の力餅

 また、かつて存在した赤岩駅は、いはゆる秘境駅で知られてゐます。令和三年三月十二日に廃止になりました。わづかですが車窓から、その跡を見ることができました。

 福島県に入ると、車窓から雪はなくなりました。
 十三時五十四分。福島駅に着きました。ここから新幹線に乗り、郡山駅に向かひます。乗るのは、やまびこ142号。少し時間があつたので、食事をしました。立ち食ひそばの肉そばをいただきました。

 さて、ここから磐越西線に乗り会津若松駅へ行き本日のメインである只見線に乗らうとしたところ…

 「只見線は気温の上昇による雪崩の危険があるため、只見駅から大白川駅間で運休します。なほ、代行バス等は運行しません。新潟方面に行く列車はございませんのでご了承ください」

との放送が流れました。

 「マジ!?」

 私はただちにみどりの窓口に並びました。そして、窓口の人に、事情を説明し、浦佐駅から上野駅までの指定席券を払ひ戻しました(この時、窓口の人は「今回限り」であること、前からアナウンスしてゐたことを述べてゐました。前者には感謝致しますが、後者は都人からすると少し腑に落ちませんでした)。

 最後の最後で…心が折れました。水郡線に乗る選択肢や仙台に戻る手もあつたのですが、東京に帰ることにしました。

 帰りは、つばさ144号。上野駅には十六時四十二分に着きました。
 悔しい気持ちを抑へつつ、カフェ・バッハに行きコーヒーを堪能し、近くの湯どんぶり栄湯のサウナに入りました。栄湯は、アルカリ性の天然温泉でお肌がツルツルになります。

 思へば、只見線は、初めて乗つた時も雪崩で運行せず、二度目に初めてまともに乗車できました。三度目の前回はバス代行。相性が悪いですね。

郡山駅から帰ります

 身体や服についた温泉のかをりが、家に着いても残つてゐました。この硫黄のかをりは、何ともいへず、良いです。
 なほ、峠の力餅ですが、帰宅後、美味しくいただきました。上品なお餅でした。

 その後、まさかWBC決勝を観るために、三月二十二日を有給休暇にしたとはとても言へません。何にしても、優勝してよかつた。

 最後までお読みいただき、ありがたうございました。

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