復活のムーンライトながらと三セクの旅
いつもお読みいただき、ありがたうございます。玉川可奈子です。
今年、最後のnote(予定)です。七千文字程度です。
思へば今年も色々ありました。かなつたこと、かなはないこと。国内の鉄道全線完乗や結婚など。
貴景勝の横綱昇進を願ひ毎日ヤクルト1000を飲んだこと。毎日のサウナ。
過ぎてみれば、短いやうな長いやうな。
それでも、私の旅はまだまだ続きさうです。
今回もどうか最後までお楽しみください。
ムーンライトながらに乗る旅です。
東海道本線
旅のはじまりは、E257系、特急踊り子3号です。いつもあずさやかいじで乗つてゐたので、東海道本線でこれに乗ると変な感じがします。
座席には、あずさ時代にはなかつた、コンセントも設置されてゐました(窓側のみ)。
車内は、意外に混雑してゐます。私の席はD席で、相模湾を見ることはできません。車内で読書をしてゐました。
ただし、品川駅を過ぎたあたりで、大森貝塚を一瞬ですが見ることができました。
大森貝塚といへば、エドワード・シルベスター・モースですね。彼の著書はとても面白いです。
川崎駅でお隣さんが乗車し、横浜駅で満席になりました。家を出たころは曇つてゐましたが、大船駅あたりではよく晴れてゐました。
途中、湯河原駅にある湯河原温泉は、『万葉集』東歌に詠まれた地。
あしがりの 土肥の河内に 出づる湯の 世にもたよらに 我が思はなくに (巻十四・三三六八)
歌の意味は「足柄の土肥の河内に湧く温泉のやうに、決して絶えるやうに、あの子は言はないのですが…」です。相聞歌ですね。
反対側の車窓に海が見えるころ、熱海駅に着きました。
熱海駅で、途中下車します。
駅前の温泉浴場は午後二時からなので行けません。熱めの塩化物泉で、よく汗が出て、かつ温まります。小さな湯船の可愛いお風呂です。
仕方がなく、駅前の足湯に入りました。しばらく足湯に入つたら、足が軽くなりました。足湯、好きです。
また、駅前のあをきのひもので、実家に干物を送りました。干物…といへば知人から、
「あんたは干物女」
とよくバカにされますが、それとは関係なく熱海の干物はとても美味しいのです。
かますといさき、豆あじを買ひました。決して安くはありませんが…。送料込みで五千円近くかかりました。
熱海駅から、かつて中央西線で運用してゐた、313系に乗ります。
車内はそこそこ混んでゐます。
熱海といへば、清水澄博士の身を投げし錦ヶ浦や、興亜観音が鎮座してゐますが、けふは目的を別にしてゐますので先を急ぎます。
三島駅のあたりで空が曇つてきました。
富士駅に着き外に出て景色を見ると、富士山には雲がかかつてゐます。
次の列車に乗るために、身延線ホームに行くと、立ち食ひそばがありました。
かき揚げそばを頼んでみたところ、これが絶妙な味はひ。美味しいです。
次の列車は特急ふじかわ6号です。
特急ふじかわは、私の好きな373系です。
座席はふかふかで、かつてのムーンライトながらを思ひ出します。
かつて、伊豆初日の出号に乗るために、東京駅から下りのムーンライトながらに乗り、富士駅で上りのながらに乗り換へたこともあります。
いつも熱海駅を出発したあたりで眠くなり、金山駅近くで目を醒ましてゐました。
静岡駅に着く手前で、ワイドビューチャイムが鳴りました。
素敵なチャイムに、相変はらず泣きさうになります。
静岡駅で、目の前に停車してゐる浜松駅行きに乗ります。座席は全て埋まつてゐます。
座席にミニーちやんのぬひぐるみを置いて場所を占拠するおつさんの前に立ちましたが、どける様子はありません。
日本武尊ゆかりの焼津駅でやうやく座れました。おつさんは寝てゐます。
掛川駅に着き、わづか四分の乗り換へ時間で天竜浜名湖鉄道に乗ります。
天竜浜名湖鉄道ふたたび
急ぎフリーきつぷを買ひ、列車へ。
無事、進行方向右手側のボックス席に座りました。
掛川市役所駅、西掛川駅と住宅街の中を走ります。駅間が短いです。
その次の桜木駅は木造の素敵な駅舎で、地域住民に大切にされてゐるやうな感じでした。
いこいの広場駅あたりから、徐々に景色が田園に変化してきました。細谷駅には、花リレー・プロジェクトといふ看板があり、ぬくぬくになりました。
車窓には住宅が多く、次の原谷駅も素敵な駅舎であり、景色には住宅が目立ちました。
原田駅のホームには、パンジーのプランターがあり、可愛いです。無味乾燥な駅ながら、あたたかみがあります。
戸綿駅も住宅地の中にあります。
ここで数人の客が降りて行きました。次の遠州森駅は有人駅です。素敵な駅舎で、列車交換をしました。
森町病院前駅、円田駅と停車していきます。円田駅の看板によれば、遠州森町は遠州の小京都だとか。
次の遠江一宮駅は、遠江一宮である小國神社の最寄り、とのことですが、歩いて一時間近くかかるといふ。
JRによくある〜〜温泉と同じ詐欺駅名(たとへば、芦原温泉)ですが、駅舎は素敵です。
車窓右手に茶畑が目立ち、しばらく行くと敷地駅です。
豊岡駅、上野部駅を経て、天竜二俣駅に着きました。
ここで、四分の乗り換へ時間で新所原駅行き乗れたのですが、玉川、わざと一本後の列車に乗ることを選びました。
駅前を散策すると、かつての車両やC58がありました。
しかし、間もなく雨が降り出し、駅舎内で待つことにしました。小田原駅で買つら駅弁をいただき、売店てんはまやを冷やかしました。
十五時半過ぎに、新所原駅行きがホームに入線してきました。
外見も内装も、私好みの車両です。なんかちいさくて可愛い。
進行方向左手側のボックス席に座りました。
雨が降る中、定刻十五時四十一分に列車は出発しました。二俣本町駅を経て、次の西鹿島駅は遠州鉄道への乗り換へ駅です。
遠州鉄道のことはこちらに書きました。
次の岩水寺駅もさうですが、車窓はしばらく住宅地と畑ばかりです。のどかで落ち着くのですが、少し眠い…。
宮口駅を出ると、自然がにはかに豊かになります。色付く木々、水辺が車窓に見え、トンネルを抜けると今度は木々に囲まれます。そしてフルーツパーク駅に到着。
続く都田駅は、駅舎がカフェになつてゐる素敵な駅。常葉大学前駅は駅の南に常葉大学がありました。附属高校が野球部の盛んなところといふ印象しかありません。
豊かな木々を縫ふやうに走り、目障りなソーラーパネルを尻目に金指駅に着きます。ここで列車交換をしました。ホームにはイルミネーションがほどこされてゐました。
岡地駅、気賀駅と停車して行き、西気賀駅からついに浜名湖が姿を見せてくれました。前回、満足に見ることのできなかつた、万葉に詠まれた「遠江 稲佐細江の みをつくし…」です。
次の寸座駅から、しばし雨の浜名湖を楽しみました。現代の瀟湘八景とは、まさにこれと思はせます。次の浜名湖佐久米駅では、かもめが空を舞つてゐました。
東都筑駅から都筑駅間で浜名湖から一旦離れ、都筑駅を出ると尾奈駅までは猪鼻湖が見えます。
知波田駅に着くころには、ひさかたの空もいよいよ暗くなりました。
二度目の天浜線を乗り終へ、新所原駅には十七時ちやうどに着きました。
美濃太田駅へ
新所原駅から、東海道線に乗ります。
十七時二十五分発の新快速で名古屋駅まで行くのですが、車内はカオスでした。乳母車を通路の真ん中に置く親、騒ぐ子供を注意しない親など、親になつてはいけないやうな人が好き放題にしてゐました。四人の騒ぐ子供は、優先席の転換式クロスシートを公園の遊具のやうにして遊んでゐます。その状況を何とも思はない親。学がないといふのは何と残酷なことなのでせう。子供らの傍若無人で楽しさうな姿を見てにはかに気分が暗くなりました(親になつてはいけない人が親になるとは、結婚してはいけない人が結婚する、といふことです。世の中には結婚したくても出会ひもなければ、運もなくてできない人もゐます。さう考へれば考へるほど、うら悲しくなります)。
Air pods proのノイキャンを突き破るほどの迷惑に耐へつつ、豊橋駅からこだまに乗れば良かつたと後悔もしつつ、少し遅れて名古屋駅に着きました。過去に何度も書いてゐますが、名駅は嫌ひな駅です。
目的地に行く前に食事にします。今回は味仙の台湾ラーメンに行かうと思ひ、お店に向かつたところ…ラーメン二郎よりも行列ができてゐました。
マア、台湾ラーメンの方が二郎より美味しいのですが…。仕方がないので、またまたチャオのあんかけスパゲティです。最近、こればかりです。
美味しくいただいた後は、少し時間があつたのでカフェで時間をつぶしました。
名駅から中央線で多治見駅へ行き、太多線に乗り換へて美濃太田駅に着きました。
ムーンライトながら
今夜は、長良川鉄道の車内で一夜を明かします。さう、ムーンライトながらに乗るのです。
なんだか意味不明なことを書いてゐますが、実はこれ、ツアーなのです。もちろん、『時刻表』には載つてません。
久し振り、といつても最近来たばかりの長良川鉄道。
ホーム及び車内では、長良川鉄道の係の方が、親切に色々と案内してくれました。
今宵の乗客は十九名、三十分前からホームには普段ではあり得ない謎の人だかりができてゐます。
二十二時四十五分頃、ホームに入線してきました。
車内は畳が敷いてあり、長机が三つばかり置かれてゐます。
どう見ても鉄道ヲタク風な人ばかりで、異様な車内です。
粗品もいただきました。可愛いトートバッグとタオルです。
二十三時にムーンライトながらは美濃太田駅を発車しました。
まはりの人たちがお酒を呑んでゐて楽しさうです。その人たちと、すぐに打ち解けて談笑しました。地元の人と思しきおぢさんが御代桜といふお酒を呑んでゐて美味しさうです。にほひがこちらまで漂つてきます。色々教へてくれてありがたいです。
係の方が、案内をしてくれて面白いです。案内によれば、長良川鉄道が夜行列車を走らせるのは初めてだとか。
車窓を見ると、案の定ぬばたまの夜の闇の中、山紫水明の国のまほろばを味はふべくもありません。
※富士takashiさまの以下の記事は、山紫水明の美を語ること、いたれり尽せりです。
おぢさん、なんと私に、
「安酒や、危険やで!ちゅーちゅー吸つてたら、危険や!ガハハ」
と言つて、鬼ころしをくれました。ありがたう、おぢさん。その後も「危険やで」を連呼してました。
やがて、私の周囲は宴会に…。寝てゐる人に申し訳ないです。
必然的とでも言ひませうか、かつてのムーンライトながらの話になりました。私は、373系はもちろん、189系、185系、さらには臨時大垣夜行の165系にも乗つたことがありますが、そのことをお話しすると、まはりの人たちは驚いてゐました。
停車ごとに列車を撮影するために、乗り降りしました。
郡上八幡駅では、若い青年と二人で駅近くのコンビニまでお酒を追加しに行きました。
終点の北濃駅は雨でした。
深夜二時過ぎころ。さすがに、眠くなり、たまのをの時を眠りました。
寒さで目を覚ますと、関駅でした。
車内はとても静かです。皆さん疲れきつてゐます。でも、なんか不思議な力といひますか、達成感のやうなものがありました。
そして、美濃太田駅に着きました。
ありがたう、長良川鉄道。
ありがたう、ムーンライトながら。
身体は冷えてますが、心はぬくぬくです。とても楽しい一夜でした。
今度来る時は、相見し人と二人で、観光列車「ながら」に乗りたいものです。
のと鉄道
美濃太田駅から、高山本線で岐阜駅に行き、さらに東海道線を下ります。大垣駅で乗り換へ、米原駅まで来ました。近江長岡駅あたりでは、薄明かりの中、はだれ雪が見られました。
米原駅で寒い中、一時間ほど待ち、ここから特急しらさぎ51号で金沢駅まで行きます。
車内では、疲れなどでグツスリ寝てしまひました。
金沢駅に到着。とても寒い上に、雪。さらにキャリーケースの人が邪魔です。何度でも主張します。キャリーケース、ほんたうに邪魔です。
すぐに、前に訪ねたアパホテルに行きました。立ち寄る入浴を行つてゐるので、ゆつくりとお風呂に入ります。身体が冷えてゐたので、じつくり入り、ぬくぬくになりました。
お風呂の後はお土産の購入と昼食です。立ち食ひそば屋で、にしんそばをいただきました。
十三時二十七分、今度は特急サンダーバード17号に乗り七尾駅へ向かひます。
車内メロディーが、「北陸ロマン」でした。
津幡駅から、能登半島へ向かひます。車窓左手には、一瞬ですが遠く日本海も見えました。のどかな休耕田が目の前に広がります。
敷波駅のあたり車窓は、里山を思はせてくれます。
羽咋駅のあたりで青空が見え、徐々に景色もひなびてきました。
七尾駅に着きました。ここから、のと鉄道に乗ります。
七尾駅前には、ドンキやニトリがあり前回来た時となんか違ひます。しかし、前回の記憶はほとんどありません。当時、第二回WBCの決勝でした。ネット(ガラケー)で逐一情報を得てゐたので、列車や車窓の印象が残つてゐないのです。
※この前の大会もすごかつたのですが、この時もすごいですよね。何度見ても痺れます。
雪が降つたりやんだりする中、二両編成の列車は七尾駅出発しました。
右手には民家、左手には小高い丘が見えます。
まづは和倉温泉駅に停まります。七尾駅を出発したときに降つてゐた雪はなく、青空が見えてゐます。七尾駅で降りたサンダーバード17号が、能登かがり火8号になりホームに停車してゐました。ここで、多くの人が降りて行きました。そして、私の目の前の席に妙な落ち着きのないおつさんが座りました。
次の田鶴浜駅に着く前あたりで、七尾湾の景色が見えるやうになりました。
穏やかな、まるで湖のやうな海に心が私は落ち着きます。
次の笠師保駅もホームから穏やかな海が見えます。桜の木が幾本かホームに立つてをり、春になれば美しい景色を見せることでせう。
しばらく海と離れ、木々と休耕田の合間を駆け抜けて能登中島駅に着きました。妙なおつさんはここで降りて行きました。ここで七尾駅行きの列車と交換しました。
のどかな風景を楽しみつつ、笹の葉が風にさやぐ姿を見ながら、列車は西岸駅に着きました。その名の通り、車窓には海がよく見えます。木造の素敵な駅舎も魅力的です。
西岸駅から車窓右手には海の景色が見事です。
次の能登鹿島駅は高台から海を望めます。
桜の木が立つてをり、春が楽しみな駅です。列車を交換して、次は終点の穴水駅です。
七尾北湾の景色を楽しみ、短いながらも素敵な車窓ののと鉄道を堪能しました。
穴水駅から先、かつては蛸島駅まで通じてゐましたがすでに廃線となつてゐます。
穴水駅前のさわやか交流館ブルートには、遠藤関展示室があり、覗いてきました。
帰りは、のと里山空港から飛行機で羽田空港まで帰りました。
最後までお読みいただき、ありがたうございました。
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