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後悔先に立たず、過ぎたるは及ばざるが如し。愛しすぎると反動で嫌いになるよね、という話。

わたしは好奇心が旺盛な割には、気に入ったものができると狂ったようにリピートする。
音楽も同じ曲を一日中リピートする、という癖があり、数日ないし長くは一週間くらい同じ曲しか聞かないという気が狂うようなことを時々しでかす。

そんな癖は一番古い記憶で小学生低学年のとき。

わたしは母の夕飯の買い物について行くことが多かった。
そして買い物へいくたび、母はスーパーの2階にあった本屋へいき、両手に持ったレジ袋を足元に置いて雑誌の立ち読みをする。

これが長いのだ。数分ならいいんだけれど、長い時は平気で30分くらいは待たされる。

わたしはいつも、本屋さんの前のベンチでその日買ってもらったお菓子を食べながら、彼女が「帰ろ」というのを待っていた。

ある時、わたしはぼんやり考え事をしながら待っていたんだけれど、この日がいつもと違ったのは、その当時のわたしが愛してやまなかった「コロン」というお菓子を買ってもらっていたという点だ。

それも”2つ”もだ。

母にしてみれば、1週間くらいに2つあれば良いかなくらいの気持ちで買ってくれたのだと思う。しかし、一度気に入ったものに接点を持つと延々と繰り返す性質のわたしは、無意識のうちに母の予想を裏切ることとなる。

✒︎

この日の母の立ち読みはいつもよりうんと長かった。
長くて長くて、ついうっかり本屋の前のベンチで「コロン・イチゴ味」を開けて食べ始めた。

サクッ、サクッ、サクッ……

(うまい……)

と思って食べ始めたら、止まらない。

(やっぱこれ美味しいなぁ)

と考えてる間も、お菓子の箱と口を往復する手が止まらない。

気がついたときにはものの10分ほどで、コロンは底を尽きてしまった。と同時にほぼ反射的に2箱目を開封。
口は一口サイズでクリームが真ん中に詰まった円筒状の菓子を嚙み潰し続け、手は休むことなくそれをせっせと口へ運び続けた。

サクサクサクサク……サクサク…、……

「あ、もうないや……」と気づいたと同時に私は急に気分が悪くなる。

母の方に目をやるも、彼女は一向に動く気配もない。これは帰れそうにない。
そして気分はますます悪くなる一方で、ついに一人でトイレへと駆け込んだ。

この後どうなったかはご想像にお任せするけれど、食べた甲斐虚しく、気分がスッキリすると同時に私の胃からクリームとショートニングは消え去っていた。

そして、私はそれ以来コロンを食べていない。20年以上食べていない。というか食べられなくなったというのが正しい。

あのパッケージを見るたび吐き気を催す体質になってしまったのだ。

それ以来、同じように大好きで摂取し続けたがために体が受け付けなくなって食べれなくなったもの、聞けなくなった音楽が私の通った道に屍と化して累々と横たわっている。
(5年〜10年過ぎれば風化してまた接点を持てるようになっているものは多いので一生の決別はないが時間が必要らしい。)

今はもう平気だけれど、かつて豆乳が好きすぎて、毎日一リットル飲んでたら体が痒くなるようになってしまい、それ以来200ml以上は飲めなくなったり、白い食べ物が全く食べられなくなったり、小六の時にエンドレスで聞いてたカーペンターズのトップオブザワールドとか、入院してた時期に聞いていたスピッツのとある曲が聴けなくなったりしたけれど、今はもうその忌まわしい思い出は忘却の彼方で、すっかり摂取できるようになっている。

好きすぎるが故、嫌いになるような事態を引き起こすまで続ける悪い癖は今でも健在で、きょうもある一曲をエンドレスリピートしてしまった。

好きになりすぎるのも考えものです笑

ほどほどがいい、といった昔の人、やるなぁと思った深夜の帰り道でした。
おやすみなさい。

#毎日更新倶楽部 #エッセイ #思い出 #癖の話

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