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「見えないあたりまえ」を作る人を想うとき。

今回の台風21号は凄まじいものがあった。

私の人生において、こんなに風がひどい台風に出会ったことがなく、その威力の凄まじさに家の中にいながらも身の危険を感じたほど。
窓からの景色は終末さながらで、屋根は剥がされて飛んでゆき、隣のマンションの屋上に取り付けられていたアンテナや貯水タンクは、見ごと風にさらわれていった。

私の家は幸運なことに被害がなかったのだけれど、電線が切れてしまったのだろうか、住んでいる地域周辺は真っ暗。停電を起こしていた。

ニュースを見ても、関西の各地が停電し、断水しているところもあると聞く。ただの台風だと思っていたけれど、今年の夏の初めに起きた北摂地震の時よりも被害が広範囲で甚大だったように思う。

欠いて初めてあたりまえだったものの存在を知る

このツイートをしたら、共感してくださる人が多く現れた。
今回のことで、足りない存在を思い知った人たちのコメントだったと思う。

電気がなければ暗い、そしてエアコンも扇風機も使えないから今の時期は暑くて仕方がない。
電気で給湯する家だと温水も使えないから冷たいシャワーを浴びなければいけないし、一部は断水したというから、シャワーどころかトイレすらままならない。

「早く復旧して欲しい」

そういう声がツイッター上にも見られた。

もちろん早く復旧できるに越したことはない。一刻も早く復旧して欲しいと思う。そして、それと同時に1つのことに気づいて欲しいとも思った。

褒められない仕事

インフラの仕事は総じて「あたりまえ」を作り、その存在自体を気に止められないことこそが最良の仕事だ。
供給がうまくいかなくなると、途端に批判の対象となる。つまり、通常提供時には褒められないのに、欠いた途端に非難される仕事だ。

水、電気、ガスなどの生活インフラだけでなく、道路や鉄道などの交通、インターネット・電話などの通信、これらの世界は人々の生活を支え、社会に大きく貢献しているけれど、災害時やトラブル時にしかその存在に気づかれず、その営み自体を評価されることもない。

もちろん、彼らは感謝されたり評価されるために仕事をしているわけではないと思うけれど、認められることの少ない人生なんて寂しいもんだ。

実は私の前職は通信インフラの会社のサラリーマンだった。どんな会社で働いているの?と聞かれたら「インターネットの会社、みんながYouTubeを見られるように、Twitterを楽しめるように準備する会社だよ」と答えていた。(これはある意味本当にそうなので)
私はサービスの部署で、マーケティングとか営業やSE的な対お客さんの仕事をしていたからまだ良い方、運用保守で設備側の人間になるとさらに超地味な仕事だ。

当たり前を作る仕事は、評価されたり感謝されることって本当にない。その地味さと認められなさに嫌気がさしてた時期もあった。
華やかで一般の人にわかりやすく「これ凄いね、素敵だね」と評価がもらえる仕事をしてる人が羨ましかった。

時々設備の故障などでサービスを止めてしまうとお客様からものすごく怒られ、文句を言われるのが仕事でもある。とにかく感謝されることはない。

認めて欲しいというよりは、普段の頑張りはよそに非難されるのがなんとなく辛かった。普段頑張ってて褒められないのに非難だけするなんて、と思っていた。

褒められない仕事というのは、ことインフラだけの話ではなく、例えばコンシューマー向けの仕事でも、広報やマーケティングや営業みたいに表に見える仕事でないと、裏方仕事はあまり評価される機会に出くわさない。

どんな社会の営みにも見えない存在があるということ、それについて思いを馳せられない私たちになってしまうと途端にクレームばかりでギスギスしてしまう。今回の台風で停電や断水をしているニュースを見て、復旧に努めている人たちの存在にふと意識がいった。

存在に気づいたら「今、復旧頑張ってるのかな」と考えてみたらいいのかな、と思う。

欠いてしまうと、不便で思い通りにならないことでイライラしてしまう。これはもうしょうがないことだ。不便なのだ、しょうがない。
ただ、ちょっとだけ一呼吸置いて、復旧をしてくれている人のことを想像してみて欲しい。
彼らは自分のことはさておき、市民のために復旧作業をしてくれているのである。なるべく早く復旧しようと作業をしている最中かもしれない。

まずは彼らに「ありがとう」と思ってみると、イライラもちょっと減ると思うのだ。「いまも必死で復旧やってる人いるんだろうな〜」と気づくと、「がんばれ〜!まってる〜」という気持ちになる。
そうすれば、その欠いた状態を気持ちよく諦められると思うのだ。

自分がイライラすることで早く復旧できるのであれば、イライラすればいい。どっしり構え、いつも本当にありがたいな〜今頑張ってくれてるよな〜と思いながら諦めよう。

普段の素晴らしい仕事を褒められない人たちへ直接ありがとうを伝えることは難しいけれど、こういう機会をエア感謝タイムにしてしまってはどうだろう。

もちろん私だって早い復旧を願っている。
今回の台風の被害で停電や断水の地域が早く復旧しますように。
壊れてしまった街や家が修復されて元の生活に戻れますように。

でも、こんなときにありがとうの気持ちがあるともっといい。

\ありがとうございます!/ いただいたご厚意は、新しいチャレンジに役立てます!